パロノセトロンの便秘は「軽症」と思い込むと、患者の苦痛を見逃して重篤化するリスクがあります。
パロノセトロン(商品名:アロキシ)は、第2世代の5-HT3受容体拮抗型制吐剤で、がん化学療法に伴う悪心・嘔吐(CINV)を抑制するために広く使用されています。 臨床試験(557例)における副作用発現率は30.5%(170例)と報告されており、これはすべての副作用を含む数値です。kegg+1
主な副作用の頻度を整理すると以下のとおりです。
参考)パロノセトロン静注0.75mg/5mL「タイホウ」の効能・副…
| 副作用 | 発現率 | 分類 |
|---|---|---|
| 便秘 | 17.4%(97/557例) | 10%以上 |
| ALT増加 | 4.3%(24/557例) | 1〜10%未満 |
| 頭痛 | 3.2%(18/557例) | 1〜10%未満 |
| AST増加 | 2.9%(16/557例) | 1〜10%未満 |
| QT補正間隔延長 | 2.7%(15/557例) | 1〜10%未満 |
| 血管障害 | 2.3%(13/557例) | 1〜10%未満 |
便秘が突出して多い副作用です。 制吐剤として使われるだけに、消化器系への影響は特に注視が必要といえます。
参考)医療用医薬品 : パロノセトロン (パロノセトロン静注0.7…
重大な副作用としては、ショック・アナフィラキシーが頻度不明ながら報告されており、そう痒感・発赤・呼吸困難・血圧低下などの症状が出た場合は投与を即時中止する必要があります。 見逃しが許されない副作用です。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00070130.pdf
パロノセトロンの最大の特徴の一つが、血漿中消失半減期が約40時間と非常に長いことです。 これは従来の第1世代5-HT3受容体拮抗薬(グラニセトロン:約9時間、オンダンセトロン:約3〜5時間)と比べて、数倍から十倍以上長い値です。
参考)https://www.miyabyo.jp/di_topics/docs/topics_201005.pdf
半減期が長いことは、遅発性CINVへの有効性という大きなメリットをもたらします。 しかし一方で、副作用が投与後2〜3日にわたり遷延するリスクも生じます。これは使えそうな知識です。
参考)https://jpps.umin.jp/old/issue/magazine/pdf/0702_03.pdf
たとえば、便秘が「投与翌日だけ起きる」と思い込んでいると、2日目・3日目に悪化した際に対応が遅れる可能性があります。 半減期に基づいた観察期間の延長が、臨床現場での副作用管理の質を高めます。また、5-HT3受容体に対する結合親和性は他の薬剤より少なくとも10倍以上高いとされており、この強い受容体結合性も持続的な副作用発現と関係していると考えられています。jstage.jst+1
QT延長は発現頻度2.7%と数字だけ見ると少なく感じますが、これが重篤化すると心室頻拍(トルサード・ド・ポアント)を引き起こす危険があります。 厳しいところですね。
参考)https://dsu-system.jp/dsu/323/12770/notice/notice_12770_20231124164405.pdf
QT延長を引き起こしやすいとされる患者や、QT延長誘発薬を投与中の患者には慎重投与が必要です。 具体的に併用注意として挙げられる薬剤のカテゴリは以下のとおりです。image.packageinsert+1
投与開始前に心血管系の状態を確認することが添付文書でも明記されており、既往歴のある患者では心電図モニタリングも検討すべきです。 QT延長リスクのある患者への投与は、モニタリングが条件です。
参考)https://www.info.pmda.go.jp/kaitei/kaitei20120605.html
また、先天性QT延長症候群の患者は禁忌とされている点も忘れてはなりません。 投与前のスクリーニングが不可欠です。
参考)http://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=1179022C1034
便秘(19.0%)をはじめとした消化器系副作用は、がん患者にとって生活の質(QOL)を著しく低下させる要因です。 化学療法中の患者はただでさえ食欲低下や口腔乾燥が多く、便秘が重なると経口摂取がさらに困難になります。
参考)https://hokuto.app/medicine/2tVdYFvHEWMaYHe4GfjB
消化器系副作用の一覧を整理します。
便秘は「消化器がんの症状」と混同されやすいリスクがあります。パロノセトロン投与後の便秘は薬剤性であることを念頭に置き、投与前からの排便状況の確認と、必要に応じた緩下剤の予防的使用が推奨されます。
umin.ac.jpやJSPHOの制吐薬適正使用ガイドラインでも、5-HT3受容体拮抗薬使用時の便秘管理について記載があります。特に高齢患者や腸管蠕動が低下しやすい患者では、投与後72時間以上の排便観察を怠らないことが重要です。 これが基本です。
なお、腎臓・泌尿器系の副作用として尿閉(頻度不明)も報告されています。 前立腺肥大症などのリスク因子を持つ患者への投与時には、この点も注意が必要です。
参考:パロノセトロン(アロキシ)の製品情報・副作用詳細(大鵬薬品工業 医療関係者向け)
https://www.taiho.co.jp/medical/product/aloxi/characteristic/
医療現場では、グラニセトロンやオンダンセトロンなど第1世代5-HT3受容体拮抗薬との使い分けが問われる場面も多くあります。 副作用プロファイルの違いを知ることが、患者ごとの選択に直結します。
参考)https://hokuto.app/post/txyrFZ7bZYGfGgiu4wg5
各薬剤の特徴を比較します。jpps.umin+1
| 特徴 | パロノセトロン(第2世代) | グラニセトロン(第1世代) |
|---|---|---|
| 消失半減期 | 約40時間 | 約9時間 |
| 5-HT3受容体親和性 | 10倍以上高い | 基準値 |
| 遅発性CINV抑制 | 有意に優れる(p<0.0001) | 劣る |
| 主な副作用 | 便秘・頭痛・QT延長 | 便秘・頭痛・QT延長(同系統) |
| 費用対効果 | 良好(63,237円) | 66,881円(やや高い) |
パロノセトロンはグラニセトロンと比較して、遅発性CINVにおいて統計的に有意な優越性が示されています。 これは、急性期(0〜24時間)だけでなく遅発期(24〜120時間)のCR率でも明確な差があります。
一方で、副作用の種類そのものは類似しており、QT延長リスクは同系統として共通して持っています。 それだけ注意が必要ということですね。第1世代から切り替える際も、QT延長リスクの引き継ぎと、便秘管理の継続が必要です。
参考)https://www.takanohara-ch.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/01/di201701.pdf
なお、薬剤経済学的な観点からも、パロノセトロンは遅発性CINVへの効果によって追加制吐薬の使用を減らし、トータルの医療費を抑制できるという報告があります。 これは使えそうです。
参考:5-HT3受容体拮抗薬のエビデンスと使い分けの解説(HOKUTO)
https://hokuto.app/post/txyrFZ7bZYGfGgiu4wg5
参考:新規5-HT3受容体拮抗型制吐薬パロノセトロンに関する薬学論文(J-STAGE)