LAMAを「COPDの薬」だと思い込んでいると、重症喘息患者への追加療法で選択肢を見逃して発作リスクを高めます。
LAMA は Long-Acting Muscarinic Antagonist の頭文字をとった略語で、日本語では「長時間作用型抗コリン薬」と呼ばれます。 同じ呼吸器領域でよく登場する略語と混同しやすいため、まず整理しておくことが重要です。 healthokandlife(https://healthokandlife.com/medicine/respiratory/inhale01/)
以下の表で関連略語を比較しておくと、現場での会話がスムーズになります。
| 略語 | 正式名称(英語) | 日本語名 | 主な作用 |
|---|---|---|---|
| LAMA | Long-Acting Muscarinic Antagonist | 長時間作用型抗コリン薬 | ムスカリン受容体遮断→気管支拡張(12〜24h) |
| LABA | Long-Acting Beta2 Agonist | 長時間作用型β2刺激薬 | β2受容体刺激→気管支拡張(12h〜) |
| ICS | Inhaled Corticosteroid | 吸入ステロイド薬 | 気道炎症抑制 |
| SABA | Short-Acting Beta2 Agonist | 短時間作用型β2刺激薬 | 即効性の気管支拡張(発作時) |
| SAMA | Short-Acting Muscarinic Antagonist | 短時間作用型抗コリン薬 | 急性期の補助的気管支拡張 |
LAMAの作用機序はシンプルです。気管支平滑筋に存在するムスカリンM3受容体をアセチルコリンから遮断することで、副交感神経による気管支収縮を抑えます。 LABAが交感神経系(β2受容体)に作用するのとは対照的に、LAMAは副交感神経系に作用します。 つまり2つの異なる経路から気道を開かせるわけです。 kobe-kishida-clinic(https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/pulmonology/asthma-inhaler-types-ics-laba-lama-difference/)
これが基本です。
薬効時間が12〜24時間持続する点が「Long-Acting」と呼ばれる理由であり、COPD治療では第1選択薬として長年使われてきた経緯があります。 喘息においては後発的に認められた適応であり、略語だけ知っていてCOPD専用と誤認している医療従事者も少なくありません。意外ですね。 yamaguchi.med.or(http://www.yamaguchi.med.or.jp/wp-content/uploads/2021/07/202107_1931.pdf)
LAMAが喘息治療の選択肢として正式に位置づけられたのは、2015年版の喘息予防・管理ガイドライン改訂がきっかけです。 それまでLAMAはCOPDの治療薬という認識が主流でしたが、ICS/LABAで症状をコントロールできない重症喘息例への有用性が複数の臨床試験で示され、治療ステップ3以降への追加が認められました。 ubie(https://ubie.app/byoki_qa/medicine-clinical-questions/gzryjzp1b)
その後の研究では、LAMAが気管支拡張作用にとどまらず、気道上皮のリモデリング(構造変化)に直接作用することも判明しました。 横浜市立大学の研究では、LAMAが他の吸入薬と比べて線毛細胞の分化を促進し、線毛の長さ・密度・動きを回復させる効果が確認されています。これは使えそうです。 yokohama-cu.ac(https://www.yokohama-cu.ac.jp/res-portal/news/20251126oagawafumihiro_lama.html)
重症度から吸入ステロイド剤等との併用による治療が適切と判断された患者には、はじめからLAMAを含む治療を行う場合もあります。 「症状が悪化してから追加する薬」というだけでなく、患者の重症度や表現型によっては最初から組み込む選択肢として検討する時代になっています。 ubie(https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/0kq6m5i0bc)
LAMAを喘息に使う前提として、ICS単独またはICS/LABA併用でもコントロール不良な状態であることが条件です。 軽症〜中等症の段階でLAMAを追加することは推奨されておらず、まずICSの吸入手技や用量が適切かを確認するステップが先になります。 ubie(https://ubie.app/byoki_qa/medicine-clinical-questions/gzryjzp1b)
コントロール良否の判断に迷う場面では、以下を確認すると整理しやすくなります。
- 🔍 週2回以上の喘息症状があるか
- 🌙 夜間症状・睡眠障害が月1回以上あるか
- 💨 発作による日常生活・運動制限があるか
- 🏥 直近12ヶ月以内に急性増悪(発作)が1回以上あるか
上記が複数該当する場合は治療ステップのアップを検討し、ステップ3〜4以降でLAMAの追加が選択肢に入ります。 一方で、ICSなしのLAMA単独処方は禁止です。これは絶対に守る原則であり、単独使用では抗炎症効果が補えず発作リスクが高まります。 gekainohonne(https://gekainohonne.com/8110-2/)
ICS/LABAとLAMAの役割の違いも明確に覚えておく必要があります。
- ICS:気道の慢性炎症を根本から抑える→コントローラーの中心
- LABA:交感神経(β2)経由で長時間気道拡張→ICSとの相乗効果が大きい
- LAMA:副交感神経(ムスカリン)経由で長時間気道拡張→LABAとは作用経路が異なる
異なる経路を使うため、ICS/LABAに加えてLAMAを追加すると気管支拡張の効果が増強されます。 特に痰が多いタイプや高齢者の喘息には有効なケースが多く、冷気・蒸気への過敏性が強い患者にも追加効果が見られています。 kobe-kishida-clinic(https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/pulmonology/asthma-inhaler-types-ics-laba-lama-difference/)
現在、喘息に対して使用可能なLAMAの代表薬は以下のとおりです。
| 薬剤名(一般名) | 商品名 | デバイス | 喘息適応 |
|---|---|---|---|
| チオトロピウム | スピリーバ®レスピマット | ソフトミストインヘラー | ✅ あり(重症喘息追加) |
| グリコピロニウム | シーブリ®(単剤) | DPI | COPD適応(喘息単独は適応外注意) |
| ウメクリジニウム | インクルーズ®エリプタ | DPI | COPD適応 |
ICS/LABA/LAMAの3成分配合剤(トリプル配合剤)もCOPD領域では増えていますが、喘息でのエビデンスはまだ構築中の部分があります。 現場では、チオトロピウム(レスピマット®)をICS/LABAに追加するシンプルな組み合わせが最もエビデンスに基づいた選択です。 pharmacist.m3(https://pharmacist.m3.com/column/kurumi/5547)
デバイスの選択も重要ですね。レスピマット®はソフトミスト(霧状)で吸入速度が遅く、DPIに比べて吸入努力が少ない高齢者や呼吸機能が低下した患者にも使いやすいデバイスです。吸入指導時にこの特性を伝えることが、アドヒアランス維持につながります。
参考:喘息でのLAMA使用に関するガイドライン情報(亀田医療センター・呼吸器内科)
喘息予防・管理ガイドライン2015にLAMAが追加された背景と解説|亀田医療センター呼吸器内科
この視点は検索上位記事ではほとんど言及されていませんが、臨床的に非常に重要です。喘息の慢性炎症が続くと、気道壁が肥厚し、粘液過剰産生や線毛機能の障害が生じる「気道リモデリング」が起こります。 リモデリングが進むと不可逆的な気流制限が残存し、ICSや気管支拡張薬で対応しきれなくなるケースが出てきます。 yokohama-cu.ac(https://www.yokohama-cu.ac.jp/res-portal/news/20251126oagawafumihiro_lama.html)
横浜市立大学の研究(2025年発表)では、LAMAが気管支拡張・抗炎症作用とは独立したメカニズムで、気道上皮のリモデリングに直接作用することが示されました。 具体的には、粘液細胞の過剰な増殖を抑制するとともに、線毛細胞の分化を促進し線毛の長さ・密度・動きを回復させるという効果です。 yokohama-cu.ac(https://www.yokohama-cu.ac.jp/res-portal/news/20251126oagawafumihiro_lama.html)
これは意外ですね。
単なる「気管支拡張薬の追加」という位置づけを超え、LAMAが喘息の根本病態に作用する可能性を示す知見です。LABAとICSでは得られないこのメカニズムが、ICS/LABA不応例でLAMAが有効な一因と考えられています。
ただし、現時点ではこのリモデリング抑制効果はin vitro(細胞実験)レベルの知見であり、臨床での意義はさらなる検証が必要です。 医療従事者として患者への説明に使う際は、「気道を広げるだけでなく、気道の構造変化を抑える可能性が研究で示されている」という表現にとどめるのが適切です。 yokohama-cu.ac(https://www.yokohama-cu.ac.jp/res-portal/news/20251126oagawafumihiro_lama.html)
参考:LAMAの気道上皮リモデリングへの新たな作用を示した最新研究(横浜市立大学)
気管支喘息吸入治療薬の気道上皮に対する新たな可能性|横浜市立大学
参考:喘息とCOPDの吸入薬略語・使い分けをわかりやすくまとめたページ
吸入薬の一覧と使い分け・ICS/LABA/LAMA/SABAの略語と違いなど
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