急性糸球体腎炎は、主にA群β溶連菌感染後に発症し、約10日間の潜伏期間を経て発症します。代表的な症状は顔面や眼瞼、下腿の浮腫、肉眼的血尿、乏尿、一過性の高血圧です。これらは急性腎炎症候群の典型的な臨床像であり、小児から若年者に多く見られますが成人にも発症します。浮腫は血管透過性の変化と腎機能障害による体液貯留が原因です。肉眼的血尿は糸球体の炎症による血尿で、尿の色が赤褐色になることが多いです。高血圧は腎機能障害による体液貯留とレニン-アンジオテンシン系の活性化が関与しています[9][11]。
尿検査では強い血尿と蛋白尿が認められ、時に急性腎不全の程度の腎機能障害が出現します。血液検査では補体(CH50、C3、C4)の低下が特徴的であり、溶連菌感染の指標としてAnti-Streptolysin O(ASO)やAnti-streptokinase(ASK)抗体価の上昇が確認されます。診断は臨床症状とこれら検査結果に基づき行われ、必要に応じて腎生検が施行されます。腎生検では管内増殖性糸球体腎炎の所見が得られ、免疫染色で補体成分C3の沈着、電子顕微鏡で上皮下沈着物(hump)が確認されることが診断の確定に寄与します[9][11]。
急性糸球体腎炎は感染後に発症するため、まず原因となる感染症の治療が重要です。溶連菌感染が明らかな場合は抗生物質を使用します。症状に応じて安静、塩分・水分制限、利尿薬や降圧薬の投与を行い、特に浮腫や高血圧、乏尿がある場合は入院管理が推奨されます。治療は基本的に対症療法であり、特別な治療薬はありませんが、適切な管理により多くは自然に回復します。治療期間は通常数週間で、尿所見の改善を見ながら経過観察を行います[9][10][11]。
急性糸球体腎炎は感染後に発症するため、IgA腎症など他の急性腎炎との鑑別が必要です。特に急性発症のIgA腎症とは症状が類似するため、臨床経過や検査所見を詳細に比較します。また、膜性増殖性糸球体腎炎やループス腎炎などでも同様の腎生検所見を示すことがあるため、全身症状や免疫検査結果を総合して診断します。鑑別を誤ると治療方針が変わるため慎重な判断が求められます[9]。
多くの急性糸球体腎炎は感染の軽快とともに尿所見や腎機能が回復し予後は良好ですが、一部の患者では尿所見異常が遷延し慢性腎障害に移行する場合があります。特に成人発症例や重症例では注意が必要です。長期的には腎機能の定期的なモニタリングが重要であり、生活習慣の改善や高血圧管理を徹底することで慢性化を防ぐ対策が求められます。最新の研究では、免疫調節療法の可能性や早期診断による介入効果についても検討が進んでいます。
参考リンク:急性糸球体腎炎の診断と治療について詳述(東京女子医科大学)
東京女子医科大学 急性糸球体腎炎
参考リンク:小児急性糸球体腎炎の検査と治療の流れ(PlusC)
PlusC 小児急性糸球体腎炎