80kgの患者に80万IU製剤を1本使っても、実は用量不足になるケースがあります。

クリアクター(一般名:モンテプラーゼ〔遺伝子組換え〕)はエーザイが製造販売する血栓溶解薬です。規格は「静注用40万」「静注用80万」の2種類が現行品として流通しており、かつて存在した「静注用160万」はすでに販売終了・名称変更扱いとなっています。
2026年4月1日の薬価改定(令和8年度薬価改定)により、全体で薬剤費ベース約4.02%の引き下げが行われました。クリアクターについても改定の対象となっています。
| 規格 | 改定前薬価(〜2026年3月31日) | 改定後薬価(2026年4月1日〜) |
|---|---|---|
| 静注用40万(40万国際単位/瓶) | 36,301円 | 35,200円 |
| 静注用80万(80万国際単位/瓶) | 60,414円 | 58,147円 |
注意したいのは、80万IU製剤が40万IU製剤の単純2倍価格ではないという点です。40万IU×2=72,400円(改定後70,400円)に対し、80万IUは58,147円(改定後)ですから、単位量あたりで見ると80万IU規格の方がコストパフォーマンスは高くなります。薬剤コストを意識した規格選択という視点も、特にICUや救急部門では意識してよい情報です。
参考リンクの情報は最新薬価の確認に活用できます。
薬価サーチ:クリアクター静注用80万の薬価一覧(2026年4月改定後の新薬価を掲載)
クリアクターは大きく2つの効能・効果を持ちます。いずれも緊急対応が求められる疾患です。
それぞれでタイムリミットが異なります。心筋梗塞では発症後6時間以内、肺塞栓症では発症後4.5時間以内に投与を開始することが求められます。この2つを混同しないことが基本です。
他の血栓溶解薬との適応の違いも把握しておく必要があります。グルトパ(アルテプラーゼ)が虚血性脳血管障害(発症後4.5時間以内)にも適応を持つのに対し、クリアクターには脳梗塞への適応はありません。「急性期の血栓溶解薬だから脳梗塞にも使える」という思い込みは誤りです。用途を疾患ごとにきちんと整理しておけば、緊急時の処方ミスを避けられます。
つまり適応疾患の確認が最初の一歩です。
なお、急性心筋梗塞への適応があるため、「クリアクターは肺の薬」と誤認しているケースも散見されます。心臓・肺の両方がカバーされていることを覚えておきましょう。
KEGG MEDICUS:医療用医薬品 クリアクター(禁忌・用法用量・薬価の詳細情報)
クリアクターは体重kgあたりの用量設定になっています。これが薬剤費の計算を複雑にします。
【急性心筋梗塞の場合】体重kgあたり27,500IUを静脈内投与(最大27,500IU/kg)
【急性肺塞栓症の場合】体重kgあたり13,750〜27,500IUを静脈内投与
体重60kgの成人患者に最大用量27,500IU/kgを投与すると、必要量は60×27,500=1,650,000IU(165万IU)となります。80万IU製剤であれば最低2瓶必要です。つまり薬剤費は58,147円×2=116,294円(2026年4月以降)となります。体重80kgなら計算上は2,200,000IU(220万IU)に相当し、3瓶が必要になる場合もあります。
これは計算が肝心です。
規格選択の実務的なポイントとして、80万IU製剤を複数使用する場合と40万IU製剤を複数使用する場合を薬剤費で比較しておくと、経営的な観点から病院薬事委員会での採用規格の見直しにつながることがあります。体重が60kgを超える患者が多い病棟では特に重要な視点です。
また、投与方法に注意が必要な点があります。クリアクターは必ず静脈内投与(1瓶を10mLの生理食塩水で溶解し80,000IU/mLとして、1分あたり10mLの速度で注入)が正しい方法です。点滴静注での投与は認められておらず、多剤との配合も避けることが望ましいとされています。実臨床での調製ミスを防ぐためにも、薬剤師への情報共有が欠かせません。
エーザイ医療関係者向けFAQ:クリアクターの用法・用量(投与量の詳細)
クリアクターは「後発品なし」の先発品です。生物由来製品に分類される遺伝子組換えタンパク製剤であるため、通常の化学合成医薬品と異なり、同一成分であっても構造的・品質的な同等性を証明する難易度が非常に高くなります。
こうしたバイオ医薬品には「バイオ後続品(バイオシミラー)」という概念が存在しますが、クリアクターについては2026年3月時点でバイオ後続品の収載はありません。つまり「ジェネリックに切り替えてコストを下げる」という選択肢はそもそも存在しないわけです。
コストを削減できる、と思い込むのは禁物ですね。
では実際に薬剤費を管理するうえで何ができるか、という視点が重要になります。選択できる対策として現実的なのは、①適応を厳密に守り不必要な投与を避ける、②体重に応じた必要最小限の用量を正確に計算する、③同じ血栓溶解薬であるアルテプラーゼ(グルトパ)との適応の棲み分けを明確にする、という3点です。
アルテプラーゼも先発品のみの品目ですが、適応疾患の違いを踏まえたうえで、どちらの薬剤をどの疾患に用いるかを院内で標準化することが、最も現実的なコスト管理につながります。
霧島市立医師会医療センター薬剤部DIニュース:クリアクターとグルトパ・ウロナーゼの特性比較(作用機序・適応疾患の違いを解説)
クリアクターは強力な血栓溶解作用を持つ一方、出血リスクが最大の懸念です。処方前に確認すべき禁忌は複数あります。
実務上、見落とされやすいポイントがあります。抗凝固薬・抗血小板薬を服用中の患者は「禁忌」ではなく「慎重投与」扱いです。禁忌だと早合点して投与を見送るのも問題ですが、出血リスクの増強を過小評価して無条件に投与するのも危険です。この点は確認が必要です。
投与後6時間以内のヘパリン使用は重篤な出血リスクがあるため、できる限り控えることが添付文書で明記されています。クリアクター投与後の抗凝固療法の開始タイミングは特に慎重に設定する必要があります。
また、近年追加された相互作用として「レカネマブ〔遺伝子組換え〕」との組み合わせへの注意喚起があります。レカネマブ(アルツハイマー病治療薬)を投与中の患者が脳出血を発現した場合、クリアクター投与がさらに出血を助長するリスクが指摘されています。認知症専門病棟や神経内科病棟での投与時には、既往・現在使用薬の確認が欠かせません。
出血が起きてからでは遅いです。
相互作用のある薬剤は多岐にわたります(ヘパリン、ワルファリン、DOACs、アスピリン、クロピドグレル、他の血栓溶解薬など)。院内電子カルテに相互作用アラートを設定しておくことで、投与前チェックの漏れを防ぐことができます。投与前の薬剤師確認フローを整備しておくのが現実的な対策です。
日本循環器学会:クリアクター適正使用のお願い(用法・用量および禁忌の詳細を掲載)

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