あなたの黒色便判断、9.8%は見逃せます。

胃腸出血の症状としてまず押さえるべきなのは、吐血、黒色便、鮮血便の3つですが、見た目だけで出血部位を断定しないことです。非静脈瘤性上部消化管出血のガイドラインでは、一般には吐血と黒色便が上部、鮮血便が下部を示唆するとしつつ、上部消化管出血でも鮮血便を呈することがあると整理されています。
参考)大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン - Mindsガ…
ここが落とし穴です。上部消化管出血727例の前向き観察では、104例、つまり14%が鮮血便を示していました。 「赤い便だから下部出血」と即断すると、内視鏡の優先順位や搬送先の判断がずれる可能性があります。つまり色だけでは不十分です。
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黒色便は重要です。2022年の日本人データでは、黒色便のみの患者に対するModified N scoreで、1点以下なら内視鏡処置予測率は9.8%まで低下し、失神2点、BUN/Cr>30が2点、BUN>22.4が1点、抗凝固薬内服はマイナス1点という構成でした。 黒色便を見た瞬間に全例を同じ危険度で扱うより、症状と検査値を束ねたほうが実務的です。
参考)大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン - Mindsガ…
参考になるのは日本消化器内視鏡学会ガイドラインの初期評価です。
胃腸出血の症状は、便や吐物の所見より先に循環不全として見つかることがあります。めまい、失神、頻脈、血圧低下、顔面蒼白、息切れは、出血量が一定量を超えたサインとして扱うべきです。
重症度評価ではGlasgow-Blatchford scoreが有用です。BUN 18.2mg/dL以上、収縮期血圧109mmHg以下、脈拍100/分以上、黒色便、失神、肝疾患、心不全などで加点され、低リスク症例の絞り込みに役立ちます。 結論はスコア化です。
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ガイドラインでは、GBS 0あるいは2点、Rockall score 2点をカットオフとすると、内視鏡的止血や輸血の必要性を感度95%以上で予測でき、死亡例もみられず、外来管理が可能な群を選別できるとされています。 逆に言えば、症状だけで「まだ歩けているから軽い」と判断すると、処置の遅れで時間を失います。
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輸血戦略も重要です。心血管疾患のない上部消化管出血では、Hb 8g/dLを目標とする制限的輸血のほうが、Hb 10g/dLを目標とするより全死亡と再出血のリスクが低かったとまとめられています。 過剰輸血が基本ではありません。
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医療従事者が見逃しやすいのは、胃腸出血の症状が「典型的な腹痛」を伴わないケースです。日本消化器内視鏡学会のガイドラインでは、ピロリ関連潰瘍は減少する一方で、超高齢社会に伴いアスピリンなど薬剤起因の出血が増えていると記載されています。
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数字で見ると変化ははっきりしています。本邦研究では、出血性潰瘍患者の60歳以上の割合が63.9%から76.7%へ増加し、NSAIDs使用は39.9%から48.6%へ増加、H. pylori感染率は71.6%から57.9%へ低下しました。 高齢者の薬歴確認が基本です。
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低用量アスピリンの影響も軽く見られません。消化性潰瘍ガイドラインでは、出血性潰瘍症例における低用量アスピリン服用者の比率が9.9%から18.8%へ有意に増えた報告が紹介されています。 ここを押さえると、黒色便やふらつきだけの患者でも、薬歴から危険度を引き上げられます。
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対策の順番も大事です。薬剤性リスクを見落として再出血判断が遅れる場面では、狙いは服薬背景の即時把握なので、電子カルテの定期薬一覧を1画面で確認する運用に寄せると動きやすいです。これは使えそうです。
薬剤性潰瘍の背景整理には日本消化器病学会ガイドラインが役立ちます。
消化性潰瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版)
症状から内視鏡へ切り替える基準は、見た目の派手さより「高リスクかどうか」です。非静脈瘤性上部消化管出血を疑う高リスク患者には、血行動態を安定させたうえで24時間以内に上部内視鏡を行うことが強く推奨されています。
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6時間以内なら常に有利、とは限りません。ESGE 2021と国内ガイドラインの整理では、6時間以内や12時間以内の超早期内視鏡が一律に予後改善を示すわけではなく、まず輸液や全身管理で安定化する考え方が重視されています。 つまり先に蘇生です。
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止血適応の内視鏡所見も押さえておくと、現場の会話が速くなります。活動性出血のForrest Ia、Ibと、非出血性露出血管のForrest IIaは止血治療の適応で、初回止血率は多くの方法で90%前後、再出血率はエピネフリン単独を除けば2~10%とされています。 所見共有が条件です。
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経鼻胃管はどうでしょうか。ガイドラインでは、UGIBを疑う患者のルーチン検査として経鼻胃管挿入を行わないことを弱く推奨しており、ESGE 2021でもスクリーニング目的では使用しないよう強く推奨しています。 「とりあえず胃管」は原則ではありません。
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検索上位の記事は、黒色便や吐血の説明で終わりがちです。ですが医療従事者向けなら、申し送りで抜ける項目を先に固定したほうが、実際の見逃し防止につながります。意外ですね。
1つ目は「失神の有無」です。Modified N scoreでは失神が2点で、黒色便だけの患者でも危険度を一気に押し上げる要素であり、問診1つで緊急度の景色が変わります。 失神歴だけ覚えておけばOKです。
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2つ目は「BUN/Cr比」と「Hb」です。BUN/Cr>30は黒色便患者の高リスク判定に組み込まれ、Hb 8g/dL未満は再出血やセカンドルック内視鏡を検討する因子としても扱われています。 数字で共有するのが原則です。
参考)大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン - Mindsガ…
3つ目は「抗血栓薬・NSAIDs・低用量アスピリン」の3薬歴です。症状が軽く見えても、薬歴次第で出血源の推定も再出血予防も大きく変わるため、申し送りの冒頭で固定しておくと、救急外来から病棟、内視鏡室まで認識のずれが減ります。 ここに注意すれば大丈夫です。