覚醒させたはずの患者が、投与後30〜60分で再び鎮静状態になることがあります。
フルマゼニル静注0.5mgシリンジ「テルモ」は、2021年6月に発売開始されたベンゾジアゼピン(BZD)受容体拮抗薬の後発医薬品です 。先発品のアネキセート注射液0.5mgと同一成分で、薬価は1シリンジあたり1,138円となっています 。kegg+1
従来のアンプル製剤では、アンプルからの吸い出し・シリンジへの移し替え・ネーム貼りという3ステップが必要でした。プレフィルドシリンジ(PFS)化によって、これらの調製作業が省略されます 。つまり即時投与が可能です。
参考)https://medical.terumo.co.jp/sites/default/files/assets/medicine/ha/pdf/21T215.pdf
PFS製剤ならではのメリットは以下のとおりです。
参考)https://hokuto.app/medicine/XSRSiXXgu3sTyVPJnyqG
容量は1シリンジあたり5mLで、フルマゼニル0.5mgが充填されています 。室温保存可能で、有効期間は24ヶ月です 。
効能・効果はベンゾジアゼピン系薬剤による鎮静の解除および呼吸抑制の改善の2点です 。投与対象となる患者は以下の場合に限られます。
用法・用量は厳密に管理が必要です。
| 投与ステップ | 用量・間隔 |
|---|---|
| 初回 | 0.2mgを緩徐に静脈内投与 |
| 初回後4分以内に覚醒不十分 | 0.1mgを追加 |
| 以後(1分間隔で) | 0.1mgずつ繰り返し |
| 総投与量の上限(通常) | 1mg |
| ICU領域での上限 |
「緩徐に」という投与速度の指示は重要です。長期高用量BZD投与患者に急速静注すると、離脱症状(興奮・痙攣など)が出現するリスクがあるため、ゆっくり投与するのが原則です 。
投与前の禁忌確認は、重大な有害事象を防ぐうえで不可欠です。本剤には2つの禁忌があります 。
てんかん患者への禁忌は、見落とされやすいポイントです。「覚醒させたいだけ」という場面では確認が省略されがちですが、痙攣を誘発するリスクがあるため厳守が必要です 。禁忌確認が前提です。
慎重投与が必要な患者群も整理しておきましょう。
三環系抗うつ薬との組み合わせは特に注意が必要です。フルマゼニルがBZD系薬の作用を拮抗することで、これまで抑えられていた三環系抗うつ薬の中毒症状(自律神経系症状など)が一気に顕在化する可能性があります 。
本剤を使う医療従事者が最も意識すべきリスクが、再鎮静の問題です。フルマゼニルの臨床的な作用持続時間は30〜60分で、半減期は約50分です 。これは重大な注意事項です。
一方、ジアゼパムなど半減期の長いBZD系薬を高用量投与していた場合、フルマゼニルで一時的に覚醒させても、フルマゼニルの効果が切れた後にBZDの作用が再出現します。覚醒後も患者の監視を続けることが必須の対応です 。
参考)医療用医薬品 : フルマゼニル (フルマゼニル静注0.5mg…
副作用には以下のものが報告されています。
| 分類 | 頻度 | 症状 |
|---|---|---|
| 重大な副作用 | 頻度不明 | ショック、アナフィラキシー |
| 精神神経系 | 1〜5%未満 | 頭痛、興奮 |
| 精神神経系 | 1%未満 | 不穏、幻覚、体動 |
| 精神神経系 | 頻度不明 | 不安感、痙攣 |
| 循環器 | 1〜5%未満 | 血圧上昇 |
| 循環器 | 1%未満 | 頻脈、徐脈 |
| 消化器 | 1%未満 | 嘔気、嘔吐 |
さらに、本剤投与後24時間は自動車の運転や危険な機械の操作を患者に行わせないよう指導することも、添付文書で求められています 。これは患者への退院指導・帰宅前説明でも必ず伝えるべき内容です。
また、麻酔科領域で術後に使用する場合は、筋弛緩剤の作用が消失してから本剤を投与することが原則とされています 。意識が戻っても筋弛緩が残存していると、患者に不快感や窒息リスクをもたらします。順序が逆にならないよう注意が必要です。
テルモ社はPFS製剤の発売に際し、主要な輸液製剤との配合変化試験を実施しています。生理食塩液・5%ブドウ糖・ソルデム3など複数の輸液との配合直後〜6時間後の残存率はいずれも99〜102%の範囲内で、外観変化(混濁・着色)も認められませんでした 。配合変化は問題ありません。
ただし、ジアゼパム(ホリゾン注)と配合した場合は、配合直後に微黄色懸濁が確認されています 。同一ラインでの使用には注意が必要です。
保管・取り扱いについて、以下のルールを厳守してください。
繰り返し投与しても「意識・呼吸機能に有意な改善がみられない場合」は、BZD系薬以外の原因(他の鎮静薬・頭蓋内病変など)を積極的に疑う必要があります 。これが見落とされると診断の遅れにつながります。
以下のリンクには、テルモ社公式のインタビューフォーム(第2版)が収載されており、配合変化試験データや製剤の安定性情報の詳細を確認できます。
フルマゼニル静注0.5mgシリンジ「テルモ」インタビューフォーム(テルモ株式会社・公式)
フルマゼニルの薬価・効能・副作用一覧・禁忌は、HOKUTOの医薬品情報ページでも一元的に確認できます。
フルマゼニル静注0.5mgシリンジ「テルモ」 薬剤情報 | HOKUTO