検査会社の基準値内でも患者は鉄欠乏症です。

フェリチンは肝臓や脾臓に貯蔵される鉄と結合した蛋白で、体内の貯蔵鉄量を反映する重要な指標です。血清フェリチン1ng/mLは貯蔵鉄8~10mgに相当し、体内の鉄の状態を把握する上で欠かせない検査項目となっています。体内には3000~5000mgの鉄が存在し、その約2/3は赤血球内のヘモグロビンと結合して酸素運搬に使われ、残り1/3がフェリチンとして貯蔵されています。
検査会社が示す基準値は、男性20~250ng/ml、女性10~80ng/mlとされることが多いですが、これは統計的に算出された範囲であり、臨床的な正常値ではありません。統計値である基準値と、実際に代謝が滞りなく行われるために必要な理想値には大きな乖離があります。検査会社によって基準範囲は異なり、ある検査会社では男性13~277ng/ml、女性5~152ng/mlと設定されています。
関連)https://fukuoka.nakamurahiroshiseikei.com/pickup/trophotherapy/p003/
臨床的には、30~40歳台の女性では50~100ng/dl程度、男性では少なくとも150ng/dl以上のフェリチン値が必要とされています。一般的に推奨される貯蔵鉄の目安はフェリチン100ng/mL以上で、女性ではせめて50ng/mL以上が必要です。30ng/mL以下の低フェリチン血症では著明な貧血症状を認め、フェリチン12ng/mL未満では鉄欠乏性貧血と診断されます。
関連)https://www.fukuoka-cl.jp/anemia/
検査会社の基準値範囲内であっても、実際には鉄欠乏状態にある患者が多数存在するということですね。
フェリチン測定は早期の鉄欠乏状態を発見するために非常に有用です。体内で鉄が減少していく過程では、まず貯蔵鉄が早い段階から利用されて減少しますが、血清鉄は貯蔵鉄からの補給により比較的末期まで低下しません。血清フェリチン値は早期に低下する一方、血清鉄値は末期まで低下しないため、鉄欠乏状態を早期に診断するには血清フェリチン測定が不可欠です。
関連)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/116.html
血清鉄には日内変動があるため、血清鉄単独では鉄の過不足の指標とはなりません。したがって、血清フェリチンとの組み合わせ測定が推奨されます。鉄欠乏性貧血の診断には、血算(ヘモグロビン、MCVなど)、血清鉄(Fe)、フェリチン、TIBC・UIBC(鉄結合能の評価)などの検査が行われますが、この中でもフェリチンが特に重要な位置を占めています。
関連)https://www.motoyagoto-familyclinic.com/blog/iron-deficiency-anemia/
フェリチンが低い場合は、症状がなくても鉄不足と考えられます。健診で測定されるのは多くの場合「ヘモグロビン値」だけなので、ヘモグロビンが正常でもフェリチンが不足している「隠れ鉄欠乏」が見逃されやすい問題があります。つまり貯蔵鉄の評価が基本です。
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フェリチンは急性期反応物質でもあるため、炎症反応が高い状態では貯蔵鉄量とは無関係に上昇します。血清フェリチン値は悪性腫瘍、肝障害、心筋梗塞、感染症、炎症などで貯蔵鉄量とは無関係に上昇するため、鉄欠乏状態の患者でもこれらの疾患がある場合は血清フェリチンの低下を認めないことがあります。
関連)https://hokuto.app/post/LrUEUAYEo56bkCPZcQ01
慢性炎症性疾患を合併した場合、鉄欠乏性貧血のフェリチン値のカットオフ値は50~100ng/mLまで上昇します。慢性炎症がある場合、血清フェリチン値が100ng/mL(慢性腎臓病では200ng/mL)を下回る場合には、慢性炎症性疾患に伴う貧血に鉄欠乏症が合併している可能性が示唆されます。
関連)https://miyake-naika.com/01sindan/ferritin.html
炎症診断精度の高いフェリチン値の解釈は、炎症反応がない場合に限られます。悪性腫瘍、肝障害、心筋梗塞、感染症などでは組織破壊に伴い血中への逸脱があるので、貯蔵鉄量とは無関係に上昇することがあります。血球貪食症候群や成人スチル病では血清フェリチンの著しい高値(1,000ng/ml以上)がみられることから、診断や病態把握に役立ちます。
関連)https://diagnostic-wako.fujifilm.com/product/seikagaku/fer.html
炎症マーカーと併せて評価することが条件です。
フェリチン精密測定は保険適用されており、主な測定対象は鉄欠乏貧血が疑われる患者と、悪性腫瘍の経過観察のためフェリチン測定を要する患者です。保険点数は血液化学検査のフェリチン定量として102点(実施料)が設定されており、生化学的検査(Ⅰ)として判断料を月1回算定できます。
関連)https://www.yakuji.co.jp/entry1221.html
測定方法としては金コロイド凝集法などが用いられ、血清または血漿中のフェリチンを測定します。測定項目自体は以前から存在しましたが、測定方法の進歩により精度が向上し、E2区分(新方法)として保険適用が拡大されてきました。
関連)https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2006/11978/20060922siryou1.pdf
フェリチン測定は鉄欠乏の早期発見、治療効果判定、鉄過剰状態の評価など、多岐にわたる臨床的意義を持つため、適切な保険適用のもとで積極的に活用すべき検査です。検査実施の判断基準を理解しておくことで、必要な患者に適切なタイミングで測定を行うことができます。検査は月1回が原則です。
経口鉄剤による鉄欠乏性貧血の治療効果判定には、末梢血一般検査でヘモグロビン値の推移を観察しますが、ヘモグロビン値が正常化した後も継続投与が必要です。ヘモグロビン値が正常化した後、さらに3~4ヵ月の継続投与で貯蔵鉄量が正常化することから、内服中止の目安として血清フェリチン値の正常化が重要な指標となります。
関連)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/116.html
フェリチンが上がらない場合、単なる鉄不足ではなく、背景に原因疾患が隠れている可能性があります。月経過多、子宮筋腫、消化管出血、炎症性疾患などが原因として考えられます。治療中のフェリチン値のモニタリングは、単に鉄剤の効果を確認するだけでなく、隠れた原因疾患の存在を示唆する重要な手がかりとなります。
鉄剤投与中はフェリチンが上昇しますが、投与を中止した後も値が維持されているかを確認する必要があります。貯蔵鉄が十分に回復していない状態で鉄剤を中止すると、再び鉄欠乏状態に陥るリスクがあるため、フェリチン値を指標とした慎重な治療終了判定が求められます。
関連)https://diagnostic-wako.fujifilm.com/product/seikagaku/fer.html
CRCグループの血清フェリチン臨床的意義に関する詳細解説(フェリチンと血清鉄の病態別変動表を含む)
三宅内科のフェリチン上昇から考える診断アプローチ(慢性炎症性疾患を合併した鉄欠乏のカットオフ値情報)
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