臓器移植において、ドナー提供に関わる医療従事者は非常に多岐にわたります。臓器を提供する人の入院している病院の関係者だけでも、主治医や看護師をはじめとして数十人にのぼることが報告されています。
医療従事者の主要な役割は以下の通りです。
臓器移植における医療従事者には、一般的な医療技術に加えて特別な専門知識と技術が求められます。
医学的専門性の要件:
コミュニケーション技術:
日本造血・免疫細胞療法学会では、患者さん、ドナー候補者はもちろん、それぞれのご家族の意思決定支援から移植に至るまでサポートを行い、移植後も他職種と共に継続した関わりを行うことが重要であると述べています。
コロナウイルス感染症パンデミックの経験により、ドナー提供における感染症対策の重要性が再認識されました。
感染症対策の実践項目:
日本造血細胞移植学会では、コロナウイルスのパンデミックを受けて、造血細胞移植に関連する海外の学会・ドナーバンクから、造血幹細胞移植の患者・ドナーの適格性判定に関するガイドラインを参考にした対応を推奨しています。
医療従事者は、これらのガイドラインに基づき、造血幹細胞移植患者およびドナーに対して適切に対応することが求められています。
ドナー提供に関わる医療従事者は、通常の医療業務とは異なる特別な心理的負担を抱えることが知られています。
医療従事者が直面する心理的課題:
杉本建郎氏の事例研究では、肉親の臓器提供は概して家族の悲嘆心理に対して良い効果を与えているという報告がありますが、医療従事者にとっても家族の心理的変化を理解し、適切にサポートすることが重要な課題となっています。
サポート体制の構築:
臓器移植医療の発展とともに、医療従事者の継続的な教育と技術向上が不可欠となっています。
教育プログラムの特徴:
質向上への具体的取り組み:
日本では、臓器提供を行う医療機関は大学病院や日本救急医学会の指導医指定病院、救命救急センター認定施設などの「5類型施設」で895施設に限られており、このうち体制が整っている施設はさらに限定されているため、質の高い医療従事者の育成が急務となっています。
また、内視鏡による腎臓摘出手術など、技術的に高度な手術手技についても、熟練した医師による執刀と継続的な技術向上が重要視されています。医療従事者は常に最新の技術と知識を習得し、ドナーの安全性を最優先に考えた医療を提供することが求められています。
医療従事者向けの医療品情報提供方法についても、院内LANを介した効率的な情報共有システムの構築や、企業との連携による最新情報の収集・提供体制の整備が進められており、質の高いドナー提供医療の実現に向けた取り組みが継続されています。