デヒドロエピアンドロステロン アンドロゲンの効果と医療従事者が知るべき重要情報

デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は副腎で産生される重要なアンドロゲン前駆体として、医療現場でどのような役割を果たしているのでしょうか?

デヒドロエピアンドロステロン アンドロゲンの基本メカニズム

デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の概要
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生体内での産生機序

副腎皮質で主に産生され、エストロゲンとアンドロゲンの前駆物質として機能

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代謝経路

コレステロールを原料として生合成され、テストステロンやエストラジオールに変換

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加齢による変化

35歳を過ぎると急激に減少し、90歳代まで直線的に漸減する傾向

デヒドロエピアンドロステロンの生理学的特性

デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は副腎皮質で産生される重要なステロイドホルモンです。このホルモンは「マザーホルモン」とも呼ばれ、体内でエストロゲンおよびアンドロゲンの前駆物質として機能します。DHEAは性ステロイドホルモンの一種として、コレステロールを原料として生体内で生合成されます。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/24-%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF/%E6%A0%84%E9%A4%8A%E8%A3%9C%E5%8A%A9%E9%A3%9F%E5%93%81/%E3%83%87%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%A8%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%83%B3-dhea

 

アンドロゲン活性としては、DHEAはテストステロンの約5%の活性を持ちます。成人女性においては、アンドロステンジオンとともに主要なアンドロゲンとして重要な役割を担っています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%A8%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%83%B3

 

医療従事者が知っておくべき重要な特徴として、DHEAの血中濃度は加齢とともに顕著に低下することが挙げられます。35歳を過ぎると急激に減少し始め、20歳代から90歳代まで直線的に漸減する傾向があります。
参考)https://kyoto.hosp.go.jp/html/guide/medicalinfo/urology/description02.html

 

アンドロゲン前駆体としての臨床意義

DHEAとその硫酸エステル(DHEA-S)は副腎皮質から主に分泌されるアンドロゲンです。女性では大部分が副腎で、男性では約50%が性腺で産生されると考えられています。
参考)https://www.jmwh.jp/news-pdf/15-2.pdf

 

臨床的には、DHEAはテストステロンと比較してアンドロゲン作用が弱いとされていましたが、最近では多くの可能性を有するホルモンとして注目を集めています。動物実験では、抗糖尿病、抗動脈硬化、抗肥満、抗骨粗鬆症、抗癌、抗自己免疫等の種々の有益な作用が証明されています。
DHEA-Sの血中半減期は7~20時間と比較的長いため、臨床マーカーとしてDHEA-Sが用いられることが多くなっています。これは医療現場での評価において実用的な指標となります。

デヒドロエピアンドロステロンの多様な生理作用

DHEAは体内で様々な生理学的作用を発揮します。筋力と運動能力を改善し、免疫系を刺激し、夜の睡眠を深くする効果があると報告されています。また、コレステロール値を下げ、体脂肪を減少させ、筋肉を増強させる作用も期待されています。
精神面での効果も注目されており、気分、活力、幸福感およびストレス下での機能を高める能力を向上させるとされています。特に抑うつ症状の軽減に関しては、一定のエビデンスが蓄積されつつあります。
骨密度への効果についても研究が進んでおり、55歳以上の女性では腰椎および転子の骨密度が有意に増加することが示されています。男性では体脂肪量の有意な減少が認められたという報告もあります。

アンドロゲン受容体との相互作用メカニズム

DHEAは皮膚の脂腺において、より強力なアンドロゲンであるジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることが知られています。この変換プロセスは、皮膚におけるアンドロゲン作用の発現に重要な役割を果たします。
参考)https://www.mitsuoka-clinic.or.jp/web_jp/guide/lucubrations/2023dhea/dhea.html

 

前立腺組織においては、男性ホルモンの約40%をDHEAが占めるとされており、これは以前考えられていた15%より大幅に高い値です。このことから、前立腺の健康状態を評価する際にDHEAの動態を理解することは重要です。
アンドロゲン受容体(AR)の発現が高い組織では、DHEAが代謝酵素によってテストステロンやDHTに変換され、増殖シグナルに影響を与える可能性があります。これは特に前立腺癌のリスク評価において考慮すべき要因となります。
参考)https://yamaguchi-endocrine.org/pdf/suzuki.pdf

 

デヒドロエピアンドロステロンの特殊な臨床応用

生殖補助医療の分野では、DHEAが注目を集めています。不妊治療を受ける女性において、DHEAの補充療法が妊娠成立率を改善する可能性があることが研究されています。ただし、テストステロンと比較すると、DHEAの効果は限定的であることも示されています。
参考)https://www.cochrane.org/ja/evidence/CD009749_androgens-dehydroepiandrosterone-or-testosterone-women-undergoing-assisted-reproduction-technology

 

更年期症状の緩和においても、DHEAの有効性が検討されています。1日25mgの摂取で、ほてり、心理的症状などが改善したという報告があります。特筆すべきは、各種ホルモン値が改善したにも関わらず、従来のホルモン補充療法の副作用である子宮内膜の肥厚が見られなかったという点です。
参考)https://yuencl.com/dhea.html

 

男性更年期障害(PADAM)の治療としても、DHEA補充療法の有用性が検討されています。高齢男女にDHEAを毎日50mg投与したところ、sense of well beingの改善、筋力の増強、体脂肪量の減少を認めたという報告があります。