アザクタム(一般名:アズトレオナム)はモノバクタム系抗生物質で、主にグラム陰性菌による感染症に効果があります。特に緑膿菌や大腸菌、クレブシエラ属、プロテウス属、エンテロバクター属などに対して優れた抗菌力を示します[1][2]。
適応症例は幅広く、敗血症、肺炎、尿路感染症、腹膜炎、胆道感染症、婦人科感染症、髄膜炎、中耳炎、副鼻腔炎などが含まれます。臨床試験では、例えば敗血症での有効率は61.5%、肺炎で72.8%、尿道炎では92.2%と高い治療成績が報告されています[1][3]。
アザクタムはβ-ラクタマーゼ産生菌にも効果的であり、他のβ-ラクタム系抗生物質に耐性を示す菌にも使用可能です[3][4]。
アザクタムの副作用は多岐にわたり、過敏症(発疹、発熱、蕁麻疹、そう痒感)や腎障害(血清カリウム上昇、血尿、蛋白尿)、血液障害(好酸球増多、血小板減少、貧血、顆粒球減少)、肝障害(AST、ALT、γ-GTPなどの上昇、黄疸)、消化器症状(嘔吐、食欲不振)などが報告されています[1][3][4]。
重大な副作用としては、ショック、急性腎障害、偽膜性大腸炎、中毒性表皮壊死融解症、溶血性貧血などがあり、頻度は不明ですが投与中は十分な観察が必要です[3][4]。また、菌交代症(口内炎、カンジダ症)やビタミンK欠乏症状(低プロトロンビン血症、出血傾向)も注意が必要です[3][4]。
アザクタムは本剤の成分によるショック既往歴がある患者には禁忌です[3][2]。また、腎機能障害患者では腎外クリアランスが低下し、重篤な腎障害のリスクが高まるため、投与量や投与間隔の調整が必要です[4]。
利尿剤(フロセミド等)との併用で腎障害が悪化した報告もあるため、併用時は特に注意が求められます[1]。
他のβ-ラクタム系抗生物質にアレルギーがある場合でもアザクタムでのアレルギー発現率は低いとされていますが、過敏症状には十分注意が必要です[5]。
アザクタムは静脈注射または筋肉内注射で投与され、吸収率は高く、腎臓から主に排泄されます[4][5]。健康成人での半減期は約1.7時間、腎不全患者では延長するため、腎機能に応じた用量調整が必須です[1][4]。
代謝はごくわずかで、代謝物は活性を持ちません。腎髄質より皮質で代謝されると考えられています[4]。
投与量や投与間隔は感染症の重症度、患者の年齢や体重、腎機能に応じて調整されます。
アザクタムはβ-ラクタマーゼ産生誘導能がほとんど認められないため、他の抗生物質で耐性化が問題となる菌に対しても治療選択肢となります[3]。
また、妊娠中の投与も比較的安全とされており、他のβ-ラクタム系抗生物質に比べてアレルギー発現率が低い点も特徴です[5]。
一方で、ビタミンK欠乏症状や菌交代症など、長期投与や高齢者、栄養状態不良の患者では意外な副作用が現れることがあるため、ビタミン補給や口腔ケアなどの予防策も重要です。
さらに、アザクタムは好気性グラム陰性菌にのみ抗菌力を持ち、グラム陽性菌や嫌気性菌には無効であるため、菌種同定と感受性試験に基づいた適正使用が求められます[4]。
【参考リンク】
添付文書の詳細な副作用・禁忌・薬物動態情報は以下で確認できます。
アザクタム添付文書(副作用・禁忌・薬物動態の詳細)
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00003050.pdf
【参考リンク】
臨床現場での適応症例や薬剤評価の掲示板情報はこちら。
アザクタムの適応症例・医師の薬剤評価
https://medpeer.jp/drug/d1997