アノレキシア診断基準とDSM-5の最新変更点を解説

アノレキシア(神経性やせ症)の診断基準はDSM-5でどう変わったのか?肥満恐怖や無月経の扱い、BMI基準の変化など、医療従事者が現場で直面する重要ポイントを詳しく解説します。

アノレキシア診断基準と臨床現場での正しい理解

BMI18.5以上でも、アノレキシアと診断されることがあります。


🩺 アノレキシア診断基準の3つのポイント
⚖️
有意な低体重

年齢・性別・成長曲線に対して有意に低い体重。DSM-5では「85%以下」などの具体的数値が削除され、BMI 18.5以上でも対象になりうる。

😨
体重増加への恐怖または回避行動

患者が「怖い」と言わなくても、体重増加を妨げる行動が持続していれば基準を満たす。

🪞
ボディイメージの歪みまたは重篤さの否認

自己評価に体重・体型が過剰に影響しているか、現在の低体重の深刻さを認識できていない状態。


アノレキシアの診断基準:DSM-5の3つの主要項目



アノレキシア(神経性やせ症、Anorexia Nervosa: AN)の診断には、DSM-5において3つの基準が求められます。第1基準は「必要量と比べてカロリー摂取を制限し、年齢・性別・成長曲線・身体的健康状態に対して有意に低い体重に至ること」です。第2基準は「有意な低体重であるにもかかわらず、体重増加や肥満になることへの強い恐怖、または体重増加を妨げる持続的な行動があること」。そして第3基準が「自分の体重または体型の体験の仕方における障害、自己評価への体重・体型の不相応な影響、または現在の低体重の深刻さへの認識の持続的欠如」です 。


参考)摂食障害


これら3つの基準がすべて揃って初めて、診断が成立します。第2基準と第3基準は患者の主観的な体験に関わるため、客観的指標だけでは評価しにくい点に注意が必要です 。


参考)神経性やせ症 - 08. 精神疾患 - MSDマニュアル プ…


慶応義塾大学病院KOMPASなどの権威ある医療情報源では、これらの基準を簡潔に整理しています。


慶應義塾大学病院KOMPAS「摂食障害」:DSM-5診断基準の一覧表と治療の解説


アノレキシア診断基準:DSM-IV-TRからの主要な変更点

DSM-5への改訂で最も重要な変更は2点あります。1点目は「無月経」が診断基準から完全に削除されたことです 。DSM-IV-TRでは女性における無月経(3周期以上の欠如)が必須項目でしたが、DSM-5ではその記載が消えました。これにより、男性患者や月経周期が不規則な女性患者、閉経後の女性、ホルモン補充療法中の患者など、以前は「特定不能の摂食障害」としか診断できなかった症例にもANの診断を付けられるようになりました 。


参考)https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626vol=116href="https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626">https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626year=2014href="https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626">https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626mag=0href="https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626">https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626number=7href="https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626">https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626start=626" target="_blank" rel="noopener">精神神経学雑誌オンラインジャーナル


厳しいところですね。2点目は「体重の85%以下」という具体的な数値基準の削除です。DSM-IV-TRでは「期待される体重の85%以下」が目安でしたが、DSM-5では「有意に低い体重」という表現に置き換えられ、BMI 18.5未満が参考値とされつつも、18.5以上でも体重減少の経過次第では診断対象となり得ることが明記されています 。


参考)https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626vol=116href="https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626">https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626year=2014href="https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626">https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626mag=0href="https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626">https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626number=7href="https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626">https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=116&year=2014&mag=0&number=7&start=626start=626" target="_blank" rel="noopener">精神神経学雑誌オンラインジャーナル


精神神経学雑誌に掲載されたDSM-5の詳細な変更点の解説です。


精神神経学雑誌「神経性やせ症/神経性無食欲症」:DSM-5改訂の詳細と臨床的意義


アノレキシア診断基準におけるBMIによる重症度分類の実際

DSM-5では、BMI値を用いた重症度の特定子が新たに設けられました。重症度は以下の4段階に分類されます。


重症度 成人BMI(kg/m²) 目安(イメージ)
軽症(Mild) ≥ 17 身長160cmなら43.5kg以上
中等症(Moderate) 16〜16.99 身長160cmで41〜43.4kg
重症(Severe) 15〜15.99 身長160cmで38.4〜41kg
最重症(Extreme) < 15 身長160cmで38.3kg未満


これが基本です。ただし、症状の重篤性や機能障害の程度によって、BMI単独よりも高い重症度が設定されることもあります 。小児・青年では成人用BMI基準は使えません。その場合は年齢別BMIパーセンタイル値を用い、通常は5パーセンタイルをカットオフとします 。


参考)摂食障害


MSDマニュアルプロフェッショナル版ではBMIのカットオフを含む臨床診断の詳細が確認できます。


MSDマニュアルプロフェッショナル版「神経性やせ症」:診断・病因・予後の網羅的解説


アノレキシア診断基準:制限型と過食排出型の病型分類

DSM-5では、アノレキシアの病型を過去3か月の行動パターンに基づき2つに分類します。


  • 制限型(Restricting type):過食や排出行動(自己誘発性嘔吐・下剤・利尿薬・浣腸の乱用)を繰り返していないタイプ。体重減少はもっぱらダイエット、絶食、または過剰な運動によって達成される。


  • 過食排出型(Binge-eating/purging type):過去3か月間に、反復的な過食エピソードや排出行動(嘔吐・下剤乱用など)が繰り返されているタイプ。


つまり病型は「現在の状態」ではなく「過去3か月の行動パターン」で決まります 。これは臨床家が注意すべき点で、初診時に病型を確定するために、過去3か月の詳細な行動歴を取ることが不可欠です。過食排出型は、低体重という外見からは神経性過食症と混同されやすい場合もあり、体重基準との組み合わせで鑑別が重要です 。


参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/08-%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E6%91%82%E9%A3%9F%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E7%BE%A4/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%80%A7%E3%82%84%E3%81%9B%E7%97%87


アノレキシア診断基準と厚生労働省の特定疾患基準との違い:見落とされがちな実務上のギャップ

医療従事者が見落としやすいのが、DSM-5基準と厚生労働省の特定疾患(指定難病)診断基準のギャップです。厚生労働省の旧基準では、「標準体重の−20%以上のやせ」「発症年齢30歳以下」「女性ならば無月経」の6項目すべてを満たすことが求められていました 。意外ですね。この基準は行政上の医療費助成に関わるため、DSM-5とは独立して存在します。


参考)https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/pdf2/072_l.pdf


これが条件です。DSM-5でアノレキシアと診断されても、厚生労働省の特定疾患基準は満たさないケースが生じます。特に、30歳以上で発症した患者や、男性患者、体重が−20%未満でも機能障害が重篤なケースがこれに当たります 。このため、患者や家族への治療費助成の説明に際しては、どの基準での診断かを明示することが実務上不可欠です。


参考)https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/pdf2/072_l.pdf


国立精神・神経医療研究センターの摂食障害ポータルサイトでは、ICD-11との対応を含む最新の診断情報が整理されています。


国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト:摂食障害の概説と疫学(専門家向け)

【指定第2類医薬品】ブテナロックVαクリーム 18g