アクラシノン(一般名:アクラルビシン塩酸塩)はアントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤で、DNAへのインターカレーションによりRNA合成を強力に阻害します[1][2][3]。特に、トポイソメラーゼII阻害作用を通じてがん細胞の増殖を抑制し、胃癌・肺癌・乳癌・卵巣癌・悪性リンパ腫・急性白血病への効果が確認されています[5][3]。従来のアントラサイクリン系薬剤と比べ、代謝速度が速く体内蓄積が少ないため、心毒性リスクが軽減されている点が特徴です[4][3]。
固形癌・悪性リンパ腫には「40-50mg/日を週2回」または「20mg/日を7日間連日投与後7日休薬」のレジメンが、急性白血病には「20mg/日を10-15日間連日投与」が標準です[6][5]。溶解時は生理食塩液または5%ブドウ糖液10mLを使用し、pH7未満に調整することが必須[6][5]。腎機能障害患者では副作用増強リスクがあるため、投与量の調整と慎重なモニタリングが必要です[6][7]。
頻度 | 臓器 | 副作用事象 |
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5%以上 | 消化器 | 食欲不振(44.4%)・悪心(43.6%)・嘔吐(35.8%) |
5%以上 | 全身 | 倦怠感(18.2%)・発熱 |
0.1-5% | 心臓 | 心電図異常・頻脈 |
頻度不明 | 骨髄 | 白血球減少(25.1%)・血小板減少(18.7%) |
重大な副作用としては心筋障害・心不全、骨髄抑制(汎血球減少)、ショックが報告されており[5][7]、初期症状(動悸・胸痛・出血傾向)が認められた場合は直ちに中断が必要です[8]。肝機能(AST/ALT上昇)と尿検査(蛋白尿・血尿)の定期的モニタリングが推奨されます[1][7]。
アクラシノンの心毒性は「蓄積性」が特徴で、既往の心疾患・胸部放射線照射歴・他剤併用で増強されます[1][5][4]。予防には「総投与量の厳密な管理」「定期的な心電図/心エコー検査」「ドキソルビシンとの併用回避」が有効です[4][7]。意外な点として、開発目的が「ドキソルビシンの心毒性軽減」であったことから、同一患者での治療歴確認が特に重要です[4][3]。
禁忌対象は「心機能異常の既往歴患者」「本剤成分への過敏症歴患者」です[5][3]。血管外漏出による化学性腹膜炎のリスクがあるため、投与技術の習熟が必須[6][7]。独自の対策として「投与前の口腔ケア」で口内炎発生率を低下させるデータがあり、事前の歯科受診を推奨します[1][7]。また、投与後48時間以内の尿赤色化は代謝物による正常反応のため、患者への事前説明で不要な不安を軽減できます[7][8]。