座位でアキレス腱反射を行うとき、「脱力さえ確認すれば大丈夫」と思っていませんか?脱力確認を省略したことが原因で、糖尿病性ニューロパチーの見落としが起きた事例が報告されています。

アキレス腱反射(Achilles tendon reflex、ATR)は、アキレス腱を打腱器で叩打することで足関節が底屈する深部腱反射です。 反射弓はL5〜S1(一部S2)神経根レベルを介しており、これが臨床的な局在診断の根拠になります。
関連)https://therabby.com/achilles-tendon-reflex/
つまり、「反射がある・ない」だけでなく、どの神経レベルの問題を示しているかを意識することが大切です。
反射が消失または減弱している場合は末梢神経障害・椎間板ヘルニアなどによる神経根障害を疑い、逆に亢進している場合は上位運動ニューロン(錘体路)の障害、すなわち脳卒中・脊髄損傷・多発性硬化症などを念頭に置きます。 アキレス腱反射の異常には大きく次の4パターンがあります。
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>⚠️ 消失(−):末梢神経損傷、脊髄S1圧迫、重度の糖尿病性ニューロパチーなど
>⚠️ 減弱(±):糖尿病性ニューロパチー初期、神経根の軽度絞扼、加齢変化
>✅ 正常(+):若干の底屈を伴う軽度の筋収縮
>🔴 亢進(++/+++):錘体路障害(脳卒中後、脊髄損傷など)、クローヌス出現の可能性
糖尿病患者では、HbA1cが適切に管理されていても末梢神経障害が進行しているケースがあり、アキレス腱反射の消失が最初の客観的な手がかりとなることが少なくありません。定期的な腱反射評価は見落としを防ぐ上で重要です。
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参考リンク(アキレス腱反射の目的・異常が示す疾患の詳細)。
アキレス腱反射 - 定義・目的・検査方法などについて - THERABBY
座位で行う場合は、端座位で下腿をベッドや椅子の端からしっかり垂らし、振り子運動が可能なほど脱力されていることを確認してから検査を始めます。 これが基本です。
関連)https://rehabilikunblog.com/jendrassik-technique-pt/
足関節は検者の手で軽度背屈位に誘導し、アキレス腱をほどよく伸長させた状態を作ります。 この背屈維持が反射誘発の鍵になります。脱力が不十分なまま叩打しても偽陰性になりやすく、臨床判断を誤る原因になります。
関連)https://lts-seminar.jp/2024/10/21/rihakoya-309/
体位設定の手順をまとめると以下の通りです。
>🪑 端座位:下腿を治療台の端から自由に垂らす(振り子状に揺れる程度の脱力を確認)
>🙌 足関節の誘導:検者の手で足底を軽く押し上げ、足関節を軽度背屈位にキープ
>📐 打鍵角度:アキレス腱に対してほぼ45°を目安に打腱器を振り下ろす
>🔍 打鍵部位:アキレス腱の中央部(踵骨付着部と下腿三頭筋筋腹の中間点付近)を狙う
なお、「足関節を90°にしてから叩く」と教わった方もいると思います。ただし、90°厳守よりも「適度な背屈で腱が伸長されている感覚」を優先するほうが臨床的には安定して反射を引き出せます。 数度の誤差より、腱の緊張感の確認を優先しましょう。
関連)https://www.youtube.com/watch?v=0c7Tj-7M6aY
打腱器の使い方にも注意が必要です。 コツは「適度な強さの衝撃を急速に与えること」であり、手首のスナップだけで振り下ろすのが正解です。腕全体を使って力任せに叩くのは誤った方法で、適切な速度が得られず反射が引き出せません。
関連)https://physioapproach.com/blog-entry-571.html
参考リンク(深部腱反射の検査手順・打腱器の使い方まとめ)。
「深部腱反射の検査」や「打腱器の使い方」まで完全網羅 - physioapproach.com
アキレス腱反射は「座位で必ず行う」という固定観念を持っている方もいますが、姿勢ごとに反射の出やすさが異なります。意外ですね。
| 体位 | 特徴 | 主な使用場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 座位(端座位) | 下腿が重力で垂れ下がり脱力しやすい | 外来・リハビリ場面での標準的検査 | 座位保持困難な患者では誤差が生じやすい |
| 背臥位 | 全身リラックスしやすい反面、反射が出にくいことがある | 入院患者、座位保持困難例 | 健常者でも反射が出ないことがある。偽陰性に注意 |
| 膝立位 | 臥位より反射が出やすい | 座位・臥位で反射が確認できない場合 | 患者の負担が大きい。バランス保持の補助が必要 |
背臥位では「健常者でも反射が出現しないことがある」という事実は非常に重要です。 臥位で反射が得られなかったからといって即座に異常と判定するのは早計です。座位または膝立位へ変更してから再評価するプロセスを組み込むべきです。
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膝立位は具体的には、ベッド上で患者を膝立ちさせ両足を宙に浮かせた状態で行います。 患者が壁に手をつくなどして安定を確保させてから、足底を軽く押しながら腱を叩打します。これが最も反射を引き出しやすい体位とされています。
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通常の検査で反射が得られない場合は、必ず増強法(Jendrassik法:ジェンドラシック法)を試みることが推奨されています。 これは原則です。
関連)https://rehabilikunblog.com/jendrassik-technique-pt/
Jendrassik法の手順は次の通りです。
>座位(端座位)で下腿を自然に垂らした状態を確認する
>「合図で両手の指をフック状に組み合わせ、素早く水平に引っ張り合ってください」と伝える(約2秒間維持)
>患者が引っ張り合うと同時に打腱器でアキレス腱を叩打する
>通常条件の結果 → Jendrassik法後の結果 の順で記録する
記録例:AJ 0/4 → 1+/4(JM+)のように「通常条件 / 増強後」の順に書くと比較がしやすく、後日の評価との対比にも役立ちます。
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増強法で反射が出た場合は「減弱」、増強法でも全く出なかった場合は「消失」と判定します。 この使い分けが条件です。この区別が診断・経過観察において大きな違いを生みます。糖尿病性ニューロパチーの早期では増強法でわずかに反射が確認できる段階があり、消失と減弱を混同すると病期の誤判断につながるため注意が必要です。
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参考リンク(Jendrassik法の手順・記録シートの使い方)。
Jendrassik法の手順と記録【腱反射・PDF】 - リハビリくん
アキレス腱反射の判定は、主に5段階スケールを使用します。 以下が基本となります。
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| スコア | 記号 | 所見 |
|---|---|---|
| 消失 | − | 反射が全く得られない |
| 減弱 | ± | 関節運動を伴わないわずかな筋収縮のみ |
| 正常 | + | 若干の底屈を伴う軽度の筋収縮 |
| 亢進 | ++ | 底屈が明確に認められる |
| 顕著な亢進 | +++ | 著明な底屈運動、クローヌス出現も |
重要なのは「左右差の確認」です。 正常者でも亢進・消失は珍しくないため、片側だけの異常かどうかで解釈が大きく変わります。これだけ覚えておけばOKです。
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左右ともに亢進している場合は錘体路の両側性障害(脳幹・脊髄障害)を疑い、さらにバビンスキー反射などの病的反射評価へと進みます。 一方、左右ともに消失している場合は末梢神経障害(特に糖尿病性ニューロパチー)や薬物性神経障害を考慮します。
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脳卒中片麻痺患者ではブルンストロームステージと腱反射の関係も重要で、筋緊張が弛緩していても腱反射が亢進している状態は「今後随意運動が回復する可能性を示す」とされています。 これは使えそうです。リハビリの方針を立てる際の重要な指標になります。
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参考リンク(深部腱反射の判定スケール・整形外科疾患との関連)。
「深部腱反射の検査」や「打腱器の使い方」まで完全網羅 - physioapproach.com
座位検査は「やりやすい」と感じる分、手順が雑になりがちです。厳しいところですね。ここでは実際によくある失敗パターンを整理します。
❌ 脱力確認を省略する
座位だからといって脱力を確認しないまま叩打すると、筋緊張が残った状態での検査になり偽陰性・偽陽性どちらにもなり得ます。 検査前に下腿を軽く揺らして、振り子状に動くことを必ず確認してください。
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❌ 腱の伸長が不十分なまま叩く
足関節が底屈位のままでは腱のテンションが低く、反射が得られにくくなります。 背屈誘導は検者の手で積極的に行うのが基本です。
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❌ 片側だけ評価して終わる
左右差の評価が深部腱反射検査の最重要ポイントです。 片側で終わらせることは、神経局在診断の機会を失うことになります。必ず両側を評価します。
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❌ 一度で出なかったら「消失」と判定してしまう
増強法(Jendrassik法)を試みる前に「消失」と記録するのは不適切です。 特に高齢者や肥満患者では、通常条件では出にくいことが少なくありません。増強法が条件です。
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座位でのアキレス腱反射検査は手技のシンプルさゆえに「できている」と過信されやすい検査です。しかし、正確な体位・脱力確認・両側評価・増強法の適用という4つのステップをすべて踏んでこそ、診断的価値のある情報が得られます。
参考リンク(神経診察・主要な腱反射の実際の手技動画)。
24 神経診察 主要な腱反射 - YouTube(臨床実習動画)
参考リンク(医師・理学療法士向け反射評価の総合解説)。
臨床実習開始前の共用試験 第14版 - 腱反射の手順(CATO)
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