アビガン SFTS 効果 ウイルス感染症治療薬の有効性

マダニが媒介する重症感染症SFTSに対するアビガンの治療効果について、臨床研究データを基に詳細に解説。従来の致死率27%から17%台まで低下させた画期的な成果とは?

アビガン SFTS 効果

アビガンのSFTSに対する治療効果
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RNAポリメラーゼ阻害作用

ウイルスの増殖に必要な酵素を選択的に阻害し、感染拡大を防ぐ

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致死率改善効果

従来の致死率27%から17.4%まで低下させることに成功

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臨床研究実績

愛媛大学主導の多施設共同研究で有効性と安全性を確認

アビガン SFTS 治療の臨床研究結果

愛媛大学が主導した画期的な臨床研究により、ファビピラビル(商品名アビガン)のSFTS(重症熱性血小板減少症候群)に対する治療効果が実証されました。この研究は国立感染症研究所などと共同で実施され、治療法が確立されていないSFTSに対する新たな治療選択肢として期待されています。
参考)https://www.ehime-u.ac.jp/wp-content/uploads/2021/02/20210224_hospital.pdf

 

2021年2月に米国感染症専門誌『PLoS Neglected Tropical Diseases』に発表された研究成果では、23例のSFTS患者を対象とした単群の医師主導臨床研究が実施されました。従来のSFTSの致死率は27%~31%と非常に高く、有効な治療法が存在しない状況でした。
参考)https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/IASR/Vol46/546/546r04.html

 

この臨床研究において、アビガンを投与された患者の致命率は17.4%(4例中23例)という結果が得られ、従来の致死率と比較して約10%の改善効果が確認されました。この結果は、SFTSという致命的な感染症に対する初めての有効な治療選択肢として、医療現場に大きな希望をもたらしています。
参考)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/d94f7fa7fd741665a5b41c7e006add907a8bcab9

 

アビガン SFTS ウイルス増殖阻害メカニズム

アビガンのSFTSウイルスに対する作用メカニズムは、RNA依存性RNAポリメラーゼの選択的阻害にあります。このメカニズムにより、SFTSウイルスのゲノム(RNA)の複製プロセスが停止し、ヒト細胞内でのウイルス増殖が効果的に抑制されます。
参考)https://nagase-group.com/2024/10/01/%E8%96%AC%E3%81%AE%E6%96%B0%E3%81%9F%E3%81%AA%E5%8F%AF%E8%83%BD%E6%80%A7%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%82%8B%EF%BD%9E%E3%82%A2%E3%83%93%E3%82%AC%E3%83%B3%E7%B7%A8%EF%BD%9E/

 

SFTSウイルスは、インフルエンザウイルスと同様にRNAウイルスであり、増殖過程で自身のRNAポリメラーゼを使用します。アビガンはこの酵素の働きを阻害することで、ウイルスの自己複製を防ぎ、感染拡大を阻止する効果を発揮します。このような特異的な作用機序により、宿主細胞への影響を最小限に抑えながら、選択的にウイルスの増殖を制御することが可能となっています。
参考)https://www.fujifilm.com/fftc/ja/news/332

 

マウス実験では、アビガンがSFTSウイルスの増殖を効果的に抑制することが確認されており、これらの前臨床データが臨床研究実施の根拠となりました。
参考)https://nobuokakai.ecnet.jp/info/topic/2066/

 

アビガン SFTS 承認に至る経緯と現状

2024年5月24日、厚生労働省はファビピラビル(アビガン)をSFTSウイルス感染症の治療薬として正式に承認しました。この承認は、富士フイルム富山化学が実施した国内臨床第III相試験の結果に基づいています。
参考)https://asset.fujifilm.com/www/fftc/files/2025-05/a8ae9b397db9610491d48648780ba709/news_332.pdf

 

承認に至る経緯として、2016年6月から愛媛大学、長崎大学、国立感染症研究所が中心となって実施された医師主導臨床研究が重要な役割を果たしました。この研究で有効性が示唆されたことから、2018年4月より富士フイルム富山化学による国内臨床第III相試験が開始されました。
参考)https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/news/news2132.html

 

厚生労働省は2023年6月にアビガンをSFTSウイルス感染症を効能とする希少疾病用医薬品に指定し、2023年8月の承認申請を経て、2024年5月の承認に至りました。これにより、SFTSウイルス感染症に対する初の抗ウイルス薬として、日本の医療現場で使用可能となりました。
参考)https://passmed.co.jp/di/archives/111

 

アビガン SFTS 治療の安全性プロファイル

アビガンのSFTS治療における安全性プロファイルは、既存のインフルエンザ治療での使用経験と概ね一致しています。主要な副作用として、血中尿酸増加(約20%)、下痢(約5%)、好中球数減少、肝機能障害(AST・ALT増加)などが報告されています。
参考)https://www.38-8931.com/pharma-labo/column/avigan_favipiravir.php

 

国内第III相試験における副作用発現頻度は70.0%(21/30例)で、主な副作用は高尿酸血症23.3%(7/30例)、血中尿酸増加20.0%(6/30例)、高トリグリセリド血症10.0%(3/30例)でした。これらの副作用の多くは軽度から中等度であり、投薬終了後に自然に改善することが多いとされています。
参考)https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/favipiravir/

 

最も重要な注意点として、アビガンは動物実験において催奇形性が確認されているため、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与は禁忌とされています。男性患者においても、投与終了後7日間、女性患者では10日間の確実な避妊が必要です。

アビガン SFTS 治療における今後の展望と課題

アビガンのSFTS治療における今後の展望として、継続的な有効性評価と適正使用の推進が重要な課題となっています。現在の承認は主に単群試験や小規模な臨床研究に基づいているため、ランダム化比較試験による更なるエビデンス蓄積が求められています。
治療効果の最大化を図るためには、早期診断と迅速な治療開始が不可欠です。SFTSの診断から治療開始までの時間短縮が、患者予後の改善に直結すると考えられています。診断時間は2013年の11.5日から2017年には3.0日まで短縮されていますが、更なる迅速化が期待されています。
参考)https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/4/pdfs/19-1011.pdf

 

また、アビガンの薬物動態や最適な投与方法に関する研究も重要です。SFTS患者における薬物の吸収、分布、代謝、排泄過程を詳細に解析し、個々の患者に応じた投与設計の確立が求められています。さらに、他の支持療法との併用効果や、重症度別の治療戦略の構築も今後の研究課題として注目されています。