テクリスタマブは通常の抗がん剤と異なり、最初の3回は必ず投与量を増やす必要があります。

テクリスタマブは再発または難治性の多発性骨髄腫のうち、標準的な治療が困難な場合に限って使用できます。具体的には、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、抗CD38抗体を含む少なくとも3つの治療が無効または再発した患者、いわゆるtriple-class exposed(TCE)の患者が対象です。
関連)1&pageNo=1&rut=74ebe3a73ac19d7074918a5615c7b428991b47987d8262164f74533fc536ceaf">https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc8871&dataType=1&pageNo=1&rut=74ebe3a73ac19d7074918a5615c7b428991b47987d8262164f74533fc536ceaf
本剤はB細胞成熟抗原(BCMA)とCD3を標的とする二重特異性抗体であり、T細胞を活性化させることでBCMAを発現する骨髄腫細胞を傷害するメカニズムを持ちます。海外第I/II相MajesTEC-1試験と国内第I/II相MMY1002試験の結果に基づいて承認されました。
関連)https://www.carenet.com/news/general/carenet/60446
4ライン以上の治療歴がある患者に対して2022年に米国で迅速承認されており、日本では2024年12月27日に承認され、2025年3月19日に薬価収載されています。つまり比較的新しい薬剤です。
関連)https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/ketueki-syuyou/kotuzuisyu/post-35280.html
薬価は30mg3mL1瓶が21万6930円、153mg1.7mL1瓶が108万1023円で、1日薬価は約13万6746円と高額です。これは最新の二重特異性抗体製剤の特徴ですね。
関連)https://hokuto.app/regimen/nlg9d9X4mpDoWvSBIEli
テクリスタマブの投与は漸増期と継続投与期の2段階に分かれており、これは添付文書で最も重要な項目の一つです。漸増期では1日目に0.06mg/kg、その後2~4日の間隔をあけて0.3mg/kg、さらに2~4日の間隔をあけて1.5mg/kgの順に皮下投与します。
関連)https://passmed.co.jp/di/archives/19378
この漸増スケジュールを守る必要があります。
継続投与期では1.5mg/kgを1週間間隔(最低5日以上の間隔)で皮下投与しますが、部分奏効以上の奏効が24週間以上持続している場合には投与間隔を2週間間隔に延長することができます。この延長オプションは患者の負担軽減につながる重要なポイントです。
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各投与の投与間隔は2~4日間と定められており、この期間を適切に管理することが副作用リスクの低減に寄与します。投与は皮下注射で行われ、希釈せずに使用可能な製剤であることも臨床現場での利便性を高めています。
関連)https://www.jnj.com/innovativemedicine/japan/press-release/20240522
体重に応じた投与量の計算が必要なため、投与前には必ず患者の正確な体重測定を行う必要があります。これは日本で初めてかつ唯一の体重に応じた投与が可能なBCMA及びCD3を標的とするT細胞リダイレクト二重特異性抗体です。
関連)https://www.jnj.com/innovativemedicine/japan/press-release/20240522
テクリスタマブ投与により、サイトカイン放出症候群(CRS)が高頻度で発現することが添付文書に明記されています。2025年4月16日の販売開始後、2025年8月15日時点で国内副作用症例としてCRSが268例集積しており、推定使用患者数848例のうち8例は重篤な症例でした。
発現率は約32%ということですね。
CRSの随伴徴候として、発熱、低血圧、低酸素症、疲労、頻脈、頭痛、悪寒、悪心、嘔吐などがあらわれることがあります。特に投与後1週間以内に頚部・顔面浮腫が報告されており、CRSとの関連が推測されています。
関連)https://www.jstct.or.jp/modules/cart_t/index.php?content_id=30
この浮腫はトシリズマブの効果が乏しく、進行すると挿管や人工呼吸管理が必要になることもあるため、早期発見と適切な対応が求められます。投与前後の患者観察を徹底し、発熱や血圧変動などのバイタルサインを継続的にモニタリングすることが重要です。
関連)https://www.jstct.or.jp/modules/cart_t/index.php?content_id=30
CRS発現時には速やかに対症療法を開始し、必要に応じてトシリズマブ投与やステロイド治療を検討する必要があります。ただし顔面浮腫への対応は通常のCRS治療と異なる可能性があるため注意が必要です。
医薬品リスク管理計画(RMP)を策定し、適切に実施することが厚生労働省からの通知でも求められています。つまり施設側の体制整備が必須です。
関連)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc8871&dataType=1&pageNo=1
テクリスタマブの添付文書には、治療域の狭いCYP基質、ワルファリン、シクロスポリン、タクロリムスなどが併用注意薬剤として記載されています。これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるため、併用時には慎重な観察が必要です。
関連)https://www.carenet.com/drugs/category/antineoplastics/4291475A2020
特に免疫抑制剤を使用している患者では、相互作用によって血中濃度が変動する可能性があります。
一方で、ダラツムマブ(抗CD38抗体)との併用療法も検討されており、テクリスタマブとダラツムマブの併用は有望な選択肢とされています。ダラツムマブはCD38を発現する骨髄腫細胞を直接傷害する作用があり、作用機序が異なるため相乗効果が期待できます。
関連)https://www.m3.com/clinical/news/1321119
ただし併用時は感染予防が特に重要です。
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テクリスタマブ投与中は免疫機能が変化するため、感染症リスクが上昇します。予防的抗菌薬や抗ウイルス薬の使用を検討するとともに、患者への感染予防指導を徹底する必要があります。
併用薬剤の確認は投与開始前だけでなく、治療期間中も継続的に行うべきです。他科受診時に処方された薬剤が相互作用を起こす可能性もあるため、患者に対して服薬中の薬剤を必ず医療者に伝えるよう指導することが大切ですね。
テクリスタマブ投与開始前の9カ月以内にBCMA標的治療を受けていた患者では、非常に良好な部分奏効の割合が低く、無増悪生存期間が短いことが実臨床データで明らかになっています。これは添付文書には直接記載されていない情報ですが、臨床上極めて重要な知見です。
関連)https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/ketueki-syuyou/kotuzuisyu/post-35280.html
BCMA標的治療後のテクリスタマブ使用では効果が限定的になるということですね。
この傾向は、同じ標的分子に対する治療を短期間に繰り返すことで、腫瘍細胞が耐性を獲得する可能性を示唆しています。したがって、BCMA標的CAR-T細胞療法や他のBCMA標的薬を使用した患者にテクリスタマブを投与する場合には、前治療からの期間を慎重に確認する必要があります。
一方で、MajesTEC-1試験で対象とならなかったであろう高リスクで治療歴の多い多発性骨髄腫患者(BCMA治療歴のある患者を含む)においても、テクリスタマブは臨床的に意義のある奏効をもたらしたとの報告もあります。つまり完全に無効というわけではありません。
関連)https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/ketueki-syuyou/kotuzuisyu/post-35280.html
投与を検討する際は、前治療の種類と期間、患者の全身状態、他の治療選択肢の有無などを総合的に評価し、患者ごとに最適な治療戦略を立てることが求められます。BCMA治療歴のある患者では、より厳重な効果判定と早期の治療変更の検討が必要です。
前治療歴の詳細な聴取と記録は、テクリスタマブの適正使用において欠かせないプロセスといえます。
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