ティースバンクの費用構造は複雑で、患者が支払う総額は単純な保存料だけではありません。主要な費用項目として、事前の血液検査費用、20年間の冷凍保存料、そして歯の輸送費が含まれます。
血液検査費用は感染症の有無を確認するため必須で、HIV、B型肝炎、C型肝炎などの検査が実施されます。この費用は医院によって30,000円から44,000円と幅があり、検査項目の詳細度により変動します。
参考)http://www.white-dc.jp/teethbank/
冷凍保存料は歯1本あたり50,000円(20年間)が標準的な料金設定です。広島大学のベンチャー企業である有限会社スリーブラケッツが運営する施設では、マイナス150度での長期保管が行われています。
参考)https://yobo-shika.info/media/s21
輸送費用は歯科医院から広島大学キャンパス内の保管施設までの特殊輸送にかかる費用で、28,500円から36,850円の範囲です。温度管理が重要な生体材料のため、専門業者による輸送が必要となります。
参考)https://www.zenshikai.com/price/
医院名 | 血液検査 | 冷凍保存料(20年) | 輸送費 | 合計(税込) |
---|---|---|---|---|
ホワイト歯科クリニック |
40,000円 |
50,000円 | 28,500円 | 118,500円 |
中川駅前歯科 | 含む | 含む | 含む | |
ふたば歯科クリニック | 44,000円 | 含む | 36,850円 | 要問合せ |
一般的相場 | 30,000円 | 50,000円 | 含む |
約150,000円 |
※料金は税込表示、年度により変動の可能性があります
ティースバンクサービスは健康保険適用外の自費診療であり、費用は全額患者負担となります。通常の自家歯牙移植は一部保険適用されますが、凍結保存を伴う場合は保険適用外となる明確な区分があります。
参考)https://www.asahi-dental.com/clinic/
保険適用外となる理由として、以下の点が挙げられます。
医療費控除の対象となる場合もありますが、税務署への相談が推奨されます。年間医療費が10万円を超える場合、確定申告により所得控除を受けられる可能性があります。
参考)https://www.lamza-dental.com/price/
20年間の基本保存期間を超える場合、追加料金として4万円で最大40年まで延長可能です。この延長料金は保存開始から20年経過時に支払いが必要となります。
追加で発生する可能性のある費用項目。
1年未満での再移植の場合、血液検査が不要となり費用は49,350円に軽減されます。これは緊急的な移植に配慮した料金体系です。
移植時の成功率は従来の自家歯牙移植と比較して、冷凍保存による細胞ダメージの影響で若干低下する可能性が指摘されています。そのため、移植費用を含めた総費用は20万円を超える場合も珍しくありません。
ティースバンクの費用対効果を他の歯科治療と比較すると、複雑な側面が見えてきます。年間コストは7,500円程度(20年間で15万円として計算)で、インプラント治療(30〜50万円)と比較すると経済的メリットがあります。
しかし、実際の利用状況を見ると課題も存在します。
参考)https://www.kyousei-shika.net/consult/reply/18004/
ティースバンク vs インプラント治療の比較表
項目 | ティースバンク | インプラント |
---|---|---|
初期費用 | 12〜15万円 | 30〜50万円 |
移植費用 | 7万円程度 | - |
総費用 | 20〜22万円 | 30〜50万円 |
成功率 | 要確認 | 95%以上 |
自然感 | 高い | 中程度 |
医療従事者がティースバンクを患者に説明する際、費用面での重要な注意点があります。総費用の透明性を保つため、初期費用だけでなく将来の移植費用まで含めた説明が必要です。
患者への説明で重要なポイント。
費用請求時の注意事項として、自費診療であることを契約書面で明確にし、クーリングオフ期間の設定も検討すべきです。また、移植時期が不明確なため、費用の分割払いオプションの提供が患者満足度向上につながります。
年間約1,700本の歯が保管されている広島大学の施設ですが、実際の移植件数との乖離が指摘されています。医療従事者は、この現実的な成功事例数も踏まえて、患者への適切な期待値設定を行うことが重要です。