水痘ワクチン いつから 定期接種と対象年齢や効果

水痘ワクチンはいつから定期接種となり、どのような効果があるのでしょうか。接種対象年齢や標準的な接種スケジュールについて医療従事者向けに詳しく解説します。あなたの患者さんへの説明に役立つ最新情報とは?

水痘ワクチン いつから 定期接種になったか

水痘ワクチンの基本情報
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定期接種開始

2014年10月1日から定期接種化

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対象年齢

1歳から3歳未満(生後12か月〜36か月)

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接種回数

3か月以上の間隔をおいて2回接種

水痘(水ぼうそう)は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染によって引き起こされる疾患です。全身に水疱性発疹が出現し、発熱を伴うことが特徴的で、主に小児期に発症します。一般的に自然治癒する疾患とされていますが、皮膚の細菌感染症や肺炎、小脳失調、脳梗塞などの合併症を引き起こすことがあります。このような合併症のリスクを低減するために、水痘ワクチンによる予防が重要とされています。

 

水痘ワクチン いつから 日本で使用されている歴史

日本における水痘ワクチンの歴史は、世界的に見ても先駆的なものです。水痘ワクチンは、実は日本の研究者によって世界で初めて開発されました。開発の経緯には、研究者の個人的な体験が深く関わっています。

 

開発者の高橋理明博士(1928~2013年)は、1964年に米国留学中、当時3歳だった自分の息子が水痘を発症し、全身に水疱が広がって苦しむ様子を目の当たりにしました。当時は対処療法しかなく、高熱が3日間続いた息子を昼夜見守ることしかできなかったという苦い経験から、何とか予防できないかという強い思いが生まれました。

 

この思いが原動力となり、1971年に水痘患者(岡という姓の方)の水疱液からウイルスの分離に成功し、この株は「岡株」と名付けられました。その後、様々な臨床試験を経て、水痘ワクチンの有効性と安全性が確認されました。

 

日本国内での認可に先立ち、1984年に欧州8か国でハイリスク児に対する岡株水痘ワクチンの使用が世界で初めて承認されました。そして1986年に日本でも水痘ワクチンが承認され、翌1987年から販売が開始されました。

 

しかし、当初は任意接種のワクチンとして位置付けられていたため、接種率は高くありませんでした。その後、水痘による健康被害の実態や、ワクチンの有効性と安全性に関する研究データの蓄積などを背景に、2012年には日本小児科学会から1〜2歳での2回接種が推奨されるようになりました。

 

そして、2014年10月1日から、水痘ワクチンは定期接種(A類疾病)に位置づけられ、公費負担で接種できるようになりました。これにより、水痘ワクチンの接種率は大幅に向上し、水痘の発生率の減少につながっています。

 

水痘ワクチン いつから 何歳まで接種できる定期接種対象年齢

水痘ワクチンの定期接種対象年齢は、生後12か月から生後36か月に至るまでの間にある方、つまり1歳の誕生日の前日から3歳の誕生日の前日までの子どもです。この年齢設定には、水痘の疫学的特徴と免疫獲得の観点からの科学的根拠があります。

 

1歳未満の乳児は、母親から受け継いだ抗体(移行抗体)が体内に残っている可能性があり、ワクチンの効果が十分に得られない場合があります。また、免疫系の発達がまだ完全ではないため、接種時期は生後12か月以降が適切とされています。

 

一方、水痘は幼児期に感染することが多く、合併症のリスクも考慮すると、できるだけ早期にワクチン接種を完了させることが望ましいとされています。そのため、3歳の誕生日の前日までに2回の接種を完了させることを目標としています。

 

2014年の定期接種化導入時には、経過措置として特別な対応も実施されました。2014年10月1日から2015年3月31日までの期間限定で、生後36か月に至った日の翌日から生後60か月に至るまでの間にある方(3歳の誕生日当日から5歳の誕生日の前日までの子ども)も定期接種の対象とされ、1回の接種が公費で受けられるようになりました。

 

なお、定期接種の対象年齢を過ぎた場合でも、任意接種として水痘ワクチンを受けることは可能です。特に、水痘に罹患したことがない場合は、年齢にかかわらず接種を検討する価値があります。ただし、任意接種の場合は費用が自己負担となります。

 

また、過去に水痘にかかったことがある方は、すでに免疫を獲得しているため、原則として接種の必要はありません。しかし、水痘の診断が不確かな場合や、免疫不全状態にある場合などは、医師と相談の上で接種を検討することもあります。

 

水痘ワクチン いつから 何回接種するスケジュール

水痘ワクチンの定期接種は、計2回の接種を行うこととなっています。具体的な接種スケジュールは以下の通りです。

 

  1. 1回目の接種(初回接種)
    • 標準的な接種時期:生後12か月から生後15か月までの間
    • これは、1歳の誕生日から1歳3か月までの間に接種することが望ましいという意味です
  2. 2回目の接種(追加接種)
    • 1回目の接種から3か月以上経過してから接種
    • 標準的には1回目接種後6か月から12か月まで経過した時期に接種
    • つまり、1歳6か月〜2歳3か月頃が2回目接種の標準的な時期となります

このスケジュールは、水痘ワクチンの免疫効果を最大限に高めるために設定されています。1回目の接種で基礎的な免疫を獲得し、2回目の接種でその免疫を強化・持続させる狙いがあります。

 

接種間隔については、最低でも3か月以上空ける必要がありますが、標準的には6〜12か月の間隔を空けることが推奨されています。この間隔は、免疫学的な観点から適切な期間が検討されて設定されたものです。

 

なお、過去に任意接種として水痘ワクチンを1回接種している場合は、2回目の接種のみを定期接種として受けることができます。この場合も、1回目から3か月以上の間隔を空ける必要があります。

 

また、水痘ワクチンは生ワクチンのため、他の生ワクチン(例:麻疹風疹混合(MR)ワクチン、おたふくかぜワクチンなど)との接種間隔にも注意が必要です。異なる生ワクチン同士の接種は、27日以上(4週間以上)の間隔を空ける必要があります。ただし、同日に複数の生ワクチンを接種することは可能です。

 

インフルエンザワクチン接種シーズン(10〜11月頃)と水痘ワクチンの接種時期が重なる場合は、接種スケジュールの調整が必要になることがあります。水痘ワクチン接種後は他の全てのワクチン接種に4週間の間隔が必要なため、インフルエンザワクチンとの同時接種を検討することもあります。

 

水痘ワクチン いつから 効果が現れる予防効果

水痘ワクチンの予防効果は、接種後比較的早期から現れ始めます。一般的には接種後10〜14日程度で免疫が獲得されると考えられています。この効果は個人差がありますが、多くの場合、1回目の接種でも一定の予防効果が期待できます。

 

水痘ワクチンの効果については、以下のように整理することができます。

  1. 発症予防効果
    • 1回接種:約80〜85%の発症予防効果
    • 2回接種:約94%の発症予防効果
  2. 重症化予防効果
    • 1回接種でも重症の水痘をほぼ100%予防できるとされています
    • 2回接種することで、軽症の水痘も含めた発症予防効果が高まります
  3. 集団免疫効果
    • 高い接種率が維持されると、ワクチン未接種者や免疫不全者も含めた集団全体の感染リスクが低下します
    • 定期接種化により接種率が向上し、水痘の発生率は大幅に減少しています

実際に、水痘ワクチンの定期接種化後の効果については、国立感染症研究所の調査でも明らかになっています。2014年10月の定期接種化以降、水痘の報告数は大幅に減少しており、特に定期接種の対象年齢である1〜3歳の子どもでの発症が激減しています。

 

また、重要な点として、水痘ワクチンはブレークスルー感染(ワクチン接種後でも感染する現象)が生じた場合にも、症状を軽減する効果があります。つまり、万が一ワクチン接種後に水痘に感染したとしても、ワクチン未接種の場合と比べて症状が軽く済むことが多いという利点があります。

 

水痘ワクチンの効果持続期間については、少なくとも10年以上は効果が続くとされています。しかし、免疫の減衰(低下)は個人差があり、長期的な免疫の持続については現在も研究が進められています。

 

なお、ワクチン接種によって獲得した免疫は、自然感染で獲得した免疫よりも若干弱い可能性がありますが、適切な接種スケジュール(2回接種)を守ることで、十分な予防効果が期待できます。

 

水痘ワクチン いつから 帯状疱疹予防にも適用拡大

水痘ワクチンの適用範囲は、小児期の水痘予防だけにとどまらず、近年では帯状疱疹予防にも拡大されています。この適用拡大は水痘と帯状疱疹の病態の関連性に基づいています。

 

帯状疱疹は、過去に水痘に感染した際に体内に潜伏していた水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が、免疫力の低下などをきっかけに再活性化することで発症します。特に50歳以上の高齢者や免疫不全状態にある方は発症リスクが高くなります。

 

2004年に「乾燥弱毒生水痘ワクチン『ビケン』」に帯状疱疹の予防効果が追加され、2016年3月からは「50歳以上の者に対する帯状疱疹予防」を目的とした使用が正式に認められました。これにより、水痘ワクチンは小児期の感染予防だけでなく、成人期・高齢期の帯状疱疹予防にも活用されるようになりました。

 

帯状疱疹予防目的での水痘ワクチンの効果は、以下のような特徴があります。

  • 50〜59歳での帯状疱疹発症予防効果:約70%
  • 60歳以上での帯状疱疹発症予防効果:約50〜60%
  • 帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防効果:約67%

特に注目すべき点として、帯状疱疹発症時の痛みの軽減や、帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防効果があることが挙げられます。PHNは帯状疱疹の主要な合併症であり、長期にわたり患者のQOLを著しく低下させる可能性がある症状です。

 

ただし、水痘ワクチンによる帯状疱疹予防効果の持続期間は限定的で、接種後約5年程度と考えられています。また、年齢が高くなるほど効果が減弱する傾向があります。

 

2018年3月には、より高い予防効果を持つ新しいタイプの帯状疱疹ワクチンである「シングリックス」(乾燥組換え帯状疱疹サブユニットワクチン)が日本でも承認され、2020年1月から使用可能となりました。このサブユニットワクチンは不活化ワクチンで、従来の水痘ワクチン(生ワクチン)よりも優れた予防効果を示しています。

 

このような新世代の帯状疱疹ワクチンの登場により、高齢者の帯状疱疹予防のための選択肢が広がりました。臨床現場では、患者の年齢や基礎疾患、免疫状態などを考慮して、最適なワクチン選択が求められています。

 

水痘ワクチンの適用拡大は、ライフサイクル全体を通じた予防接種戦略の重要性を示しています。小児期の水痘予防から始まり、高齢期の帯状疱疹予防まで、同じウイルスに起因する疾患に対する包括的なアプローチが可能となりました。

 

最近の研究では、小児期に水痘ワクチンを接種した世代が高齢になった場合の帯状疱疹発症リスクについても調査が進められています。理論的には、自然感染よりもワクチン株の方が再活性化リスクが低い可能性が示唆されていますが、長期的な追跡調査が必要とされています。

 

厚生労働省の水痘ワクチン公式情報ページ - 接種スケジュールや効果についての詳細情報
国立成育医療研究センターによる水痘ワクチン定期接種化の効果分析 - 子どもの水痘発生率と医療コストの推移について
定期接種化から約11年が経過した現在、水痘ワクチンは日本の予防接種スケジュールにしっかりと組み込まれ、水痘の発生率を大幅に減少させることに成功しています。今後も継続的な接種率の維持と、長期的な効果の評価が重要となります。特に、水痘ワクチンの効果持続期間や帯状疱疹発症への影響については、さらなる研究成果が期待されます。