
血中乳酸値の正常範囲は、測定方法や検体の種類によって数値が異なります。静脈全血では0.56〜1.39 mmol/L(5〜12 mg/dL)、静脈血では0.5〜2.2 mmol/L、動脈血では0.5〜1.6 mmol/L が一般的な基準とされています。 SRL総合検査案内では全血で3.0〜17.0 mg/dLを基準値として掲載しており、施設によって参考範囲が異なる点に注意が必要です。
参考)https://www.apollohospitals.com/ja/diagnostics-investigations/plasma-lactate-test
これが基本です。
mg/dLとmmol/Lの換算は「mmol/L = mg/dL ÷ 9(約8〜9倍)」で計算できます。 たとえばSRLの基準値上限17 mg/dLは約1.9 mmol/Lに相当し、2 mmol/L以下という臨床基準とほぼ一致します。BMLの基準値(4.2〜17.0 mg/dL)も同様の換算で0.47〜1.9 mmol/Lとなります。 単位の違いに慣れておくことで、異なる施設や機器の結果を見ても混乱せずに対応できます。
参考)乳酸 Lactic acid/Lactate│医學事始 いが…
乳酸はグルコースの嫌気的代謝(解糖)の副産物として、骨格筋・赤血球・脳・腸管など全身の組織で日常的に産生されています。 肝臓や腎臓で代謝・再利用されるため、安静時には低値で保たれています。この代謝サイクルを理解しておくことが、異常値の解釈に直結します。
参考)乳酸
| 検体の種類 | 基準値(mmol/L) | 基準値(mg/dL) |
|---|---|---|
| 静脈全血 | 0.56〜1.39 | 5〜12 |
| 静脈血(一般) | 0.5〜2.2 | 約4.5〜20 |
| 動脈血 | 0.5〜1.6 | 約4.5〜14 |
| 安静時(ストレスなし) | 1.0〜1.5 | 約9〜14 |
乳酸値の異常は段階で評価します。
参考)乳酸アシドーシスとは?原因・症状・治療をわかりやすく解説
乳酸アシドーシスの診断基準は「動脈血ガス分析でpH 7.35未満、血中乳酸濃度4 mmol/L以上(36 mg/dL以上)、重炭酸イオン(HCO₃⁻)濃度20 mmol/L以下」の3点です。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=1378
メトホルミン(糖尿病治療薬)は常用量でも腎機能低下時に乳酸アシドーシスを誘発することがあります。 MALA(メトホルミン関連乳酸アシドーシス)では乳酸濃度5 mmol/L以上かつpH 7.35未満が診断基準とされ、腎代替療法(緊急透析)の主な適応は乳酸値20 mmol/L以上または pH 7.0未満の代謝性アシドーシスです。 これは意外ですね。
参考)https://general.tane.or.jp/wp-content/themes/general/assets/images/hospital/journal/07/11.pdf
乳酸アシドーシスの診断・治療方針(ClinicalSup)
乳酸アシドーシスの診断基準、分類(A型・B型)、治療の詳細が網羅されています。
敗血症の臨床現場では、乳酸値2 mmol/Lが一つの重要な分岐点になります。 Surviving Sepsis Campaign(SSC)ガイドラインは、乳酸値2 mmol/L超を「組織低灌流の証拠」として扱い、より積極的な蘇生戦略を推奨します。重症敗血症では通常2 mmol/L未満が許容範囲とされています。
参考)ラクテートLactate(乳酸)|血液ガス用語集|ラジオメー…
乳酸値は「治療効果のモニタリング指標」としても有用です。 初期蘇生から2時間後に乳酸値が10%以上低下すれば、治療が奏効しているサインとみなされます。これは数値の一点評価ではなく、「乳酸クリアランス」を追うことが重要だということですね。
敗血症の診断・管理補助としてのラクテート(Radiometer Japan)
敗血症におけるラクテートとPCTの補完的な役割、測定タイミングの実践指針が解説されています。
ICUでのリハビリ・離床を考えるとき、乳酸値は必ずチェックすべき指標の一つです。 離床前に乳酸値が基準値(3〜15 mg/dL程度)の範囲にあることを確認することが重要とされています。
参考)Q&A Vol.130 乳酸値からみる離床のリスク管理
数字で整理します。
参考)リハビリ職が教える『血液ガス分析』で安全にリハビリを進める5…
参考)リハビリ職が教える『血液ガス分析』で安全にリハビリを進める5…
日本集中治療医学会(JSICM)のICU早期離床ガイダンスにおいても、乳酸値などの代謝指標を評価してから介入することが推奨されています。 担当医と連携しながら、血液ガスデータとあわせて総合的に判断することが原則です。
参考)https://www.jsicm.org/provider/pdf/pics07.pdf
血中乳酸値だけでリハビリ適否を判断するのは危険です。P/F比(PaO₂/FiO₂比 ≥200)、RASS(-2以上1以下)、循環動態の安定も組み合わせた多角的な安全評価が求められます。 これが条件です。
参考)https://www.jsicm.org/provider/pdf/pics07.pdf
乳酸値からみる離床のリスク管理(理想の離床研究会)
ICU離床における乳酸値の解釈方法と実践的なリスク管理の考え方が説明されています。
乳酸は疲労物質であり、値が低いほど良い——そう思っている医療従事者は実はまだ多いです。
参考)https://biz.arkray.co.jp/lact/hatta/index.html
これは半分正解で、半分誤解です。
東京大学大学院の八田秀雄教授らの研究によると、乳酸は嫌気的解糖の「廃棄物」ではなく、有用なエネルギー基質として再利用されます。 骨格筋や心筋で産生された乳酸は、肝臓でのコリ回路(糖新生)を通じてグルコースに再変換されるか、そのままTCAサイクルの燃料として利用されます。
参考)https://biz.arkray.co.jp/lact/hatta/index.html
| 従来の誤解 | 現在の科学的理解 |
|---|---|
| 乳酸=疲労物質 | 乳酸は再利用されるエネルギー基質 |
| 乳酸が筋肉痛を起こす | 遅発性筋肉痛は炎症反応が原因 |
| 乳酸値は低いほど良い | 病態に応じた文脈で評価が必要 |
| 正常値以下は安全 | 1.4 mmol/L未満でも予後的意味が異なる |
運動後30分もすれば乳酸値は運動前のレベルに戻ります。 もし乳酸だけが疲労の原因なら、30分後に疲労感はゼロになるはずです——でも実際はそうなりませんね。意外ですね。
参考)https://biz.arkray.co.jp/lact/hatta/index.html
このような理解の更新は、運動療法の設計や、患者への説明においても重要な意味を持ちます。乳酸閾値(LT:Lactate Threshold)は、有酸素運動と無酸素運動の境界を表す重要な生理学的指標であり、安静時血中乳酸濃度は4〜16 mg/dL(0.5〜2.0 mmol/L)程度で、運動強度の上昇とともに急激に増加し始める時点がLTです。
乳酸の基本 -乳酸は悪者なのか?-(アークレイ・八田秀雄教授)
乳酸の生理的役割について最新の運動生理学的な知見から解説された必読資料です。
ラクテート(乳酸)血液ガス用語集(acute-care.jp)
血液ガス分析における乳酸の測定方法・基準範囲・臨床的意義を簡潔にまとめた医療従事者向け解説ページです。
| 比較項目 | 尿細管分泌 | 尿細管再吸収 |
|---|---|---|
| 方向 | 血液 → 尿細管腔 | 尿細管腔 → 血液 |
| 代表物質 | H⁺・K⁺・PAH・アンモニア・尿素 | HCO₃⁻・Cl⁻・Na⁺・アミノ酸・グルコース |
| 主要部位 | 近位尿細管(全長) | 近位尿細管〜集合管 |
| エネルギー | 能動輸送(ATP消費) | 能動または受動(物質による) |
| 関連ゴロ | 「すい・か・に・ぱ・あん」 | 「十円な編みぐるみ」 |