ノベルジン製剤による銅欠乏症発症防止の医療従事者向け管理指針

ノベルジン処方時の血清亜鉛濃度モニタリングから副作用管理まで、医療従事者が知っておくべき適正使用のポイントとは?

ノベルジンの適正使用と副作用管理

ノベルジン適正使用のポイント
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血清亜鉛濃度測定

投与開始時・用量変更時は必須、定期的な測定で適正な治療濃度を維持

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銅欠乏症リスク

亜鉛による銅吸収阻害により貧血・神経障害等の重篤な副作用が発生

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服薬指導のポイント

効能により服用タイミングが異なるため、患者への適切な指導が重要

ノベルジンの血清亜鉛濃度測定とモニタリング頻度

ノベルジン投与開始時及び用量変更時には、必ず血清亜鉛濃度の確認が必要である。血清亜鉛濃度の測定は、本剤を服薬する前に行うことが推奨されており、早朝空腹時の採血が最も適している。これは血清亜鉛値に日内変動があり、一般的に午前中は高く、午後は低い傾向があるためである。
参考)https://www.hosp.tohoku.ac.jp/pc/img/tyuuou/nst_nobelzin.pdf

 

定期的な測定頻度については、目安として当初は1ヶ月に1度、3ヶ月以降は3ヶ月に1度程度の血液検査を実施し、血清亜鉛値を把握しながら必要に応じて投与量を調整する。低亜鉛血症の治療では、目標血清亜鉛濃度を80μg/dL以上200μg/dL未満に設定し、この範囲を維持することが重要である。
参考)https://qa.nobelpark.jp/nobelfaq2/hcp/web/knowledge20425.html

 

患者には次回来院時にノベルジンを服用せずに通院するよう指導し、午前中の採血で正確な亜鉛値測定を可能にする配慮が必要である。血清亜鉛値の基準値は80〜130μg/dLとされているが、医療機関による測定方法の違いも考慮すべきである。
参考)https://fukuyakusidou.amebaownd.com/posts/33970861/

 

ノベルジン投与による銅欠乏症の発症メカニズムと対策

ノベルジンの最も重要な副作用として銅欠乏症がある。亜鉛と銅は小腸での吸収過程において競合するため、亜鉛の摂取により銅の吸収が阻害される。特に亜鉛は、ジンクフィンガータンパクである転写調節因子(MTF-1)と結合してメタルチオネイン産生を誘導し、このメタルチオネインが銅と結合することで銅の体外排泄が促進される。
参考)https://www.min-iren.gr.jp/news-press/shinbun/20220621_45678.html

 

銅欠乏症の臨床症状には、汎血球減少、貧血、神経障害などがあり、特に栄養状態不良の患者では重篤化しやすい。医療従事者は、患者に立ちくらみ、歩きにくさ、転びやすさなどの症状が認められた場合、銅欠乏症を疑って血清銅濃度の測定を行う必要がある。
参考)https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=43673

 

ノベルジン錠はポラプレジンクと比較して1錠当たりの亜鉛含有量が多く(ノベルジン錠25mg・50mg vs ポラプレジンク16.9mg)、最大用量も150mgまで使用できるため、血中亜鉛濃度が高くなる傾向があり、銅欠乏症のリスクも高い。そのため、本剤投与中は血清銅濃度を定期的に確認することが推奨される。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00069238

 

ノベルジンの効能別服薬指導と用法の違い

ノベルジンは使用する効能により用法が異なるため、処方時の確認と適切な服薬指導が重要である。ウィルソン病では「食前1時間以上又は食後2時間以上」の食間投与、低亜鉛血症では「食後」投与となっている。
参考)https://yakuzaisi.pipi01.com/archives/745

 

この用法の違いは、ウィルソン病では疾患の重篤性から薬剤の効果を最大化するため亜鉛吸収における食物の影響を避ける必要があり、一方で低亜鉛血症では消化器系副作用(悪心・嘔吐等)を可能な限り回避することを優先しているためである。
服薬指導では、効能の確認から始まり、処方箋上の用法と効能が一致しない場合は疑義照会対象となる。患者には、空腹時投与では胃痛・胸焼けなどの消化器症状をきたすおそれがあることを説明し、低亜鉛血症患者では必ず食後投与を遵守するよう指導する。また、ノベルジンの服用により胃部不快感や悪心・腹痛などの胃腸障害の報告があるため、症状の発現に注意を払う必要がある。

ノベルジンの消化器副作用と対処法

ノベルジンによる消化器副作用は比較的頻度が高く、胃部不快感、悪心、腹痛などの胃腸障害が報告されている。2017年に低亜鉛血症の適応追加となってからの報告では、胃腸障害の割合が高くなっており、特に高齢者や栄養状態の不良な患者で症状が顕著に現れる傾向がある。
消化器症状を軽減するため、低亜鉛血症治療では食後投与が推奨されており、患者に服用タイミングをしっかり指導する必要がある。70代女性の症例では、ノベルジン錠50mg 2錠を1日2回朝夕食後で服用開始し、投与開始2ヶ月後に胃のむかつきを訴え、中止後4〜5日で症状が改善した例が報告されている。
医療従事者は、患者から胃腸症状の訴えがあった場合、用量調整や一時的な休薬を検討し、症状の程度に応じて適切な処置を行う必要がある。また、食事等による亜鉛摂取で十分な効果が期待できない患者に限定して使用することが重要である。

ノベルジン治療における独自の患者教育アプローチ

従来の薬物療法と異なり、ノベルジン治療では患者の生活習慣や食事内容が治療効果に大きく影響するため、総合的な患者教育が必要である。特に退院後の在宅管理では、電話による食事やサプリメントの摂取状況確認、外来受診に合わせた採血によるフォローアップが有効である。
参考)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.32118/cn145050656

 

微量元素チーム(TEST)による取り組みでは、患者への微量元素欠乏の病態説明と商品の購入・摂取方法の具体的指導を行い、サプリメントとの併用調整も含めた包括的なアプローチが実施されている。このような症例では、ノベルジン中止後もサプリメント摂取による継続的なモニタリングにより、血清銅値の回復と創傷治癒を確認できている。
医療従事者は、患者の理解度に応じて亜鉛と銅の相互作用、症状の変化に対する注意点、定期的な血液検査の重要性について段階的に教育を行い、患者が自己管理できるよう支援することが重要である。また、味覚障害や皮膚症状などの改善を患者自身が実感できるよう、症状の経過観察方法についても具体的に指導する必要がある。
参考)http://www.heisei.or.jp/minami-blog/?p=5033