ナフタル(ナフタレン)系化合物は、医療現場で様々な形で活用されている重要な化学物質群です。主要なものとして、ナフタレン、ナフタレン酢酸、ポリエチレンナフタレート(PEN)、**ポリ塩化ナフタレン(PCN)**などがあります 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/02/dl/s0203-9u.pdf
これらの化合物は分子構造にナフタレン環を含むため、高い耐熱性と化学的安定性を示します。特にPENは、ガラス転移温度約120℃、融点約265℃という優れた耐熱性能を持ち、医療機器の材料として注目されています 。
参考)https://injection-fuchu.com/result/material/pen/
医療現場において重要な特徴は、透明性、耐薬品性、寸法安定性の3点です。これらの特性により、精密医療機器から薬品容器まで幅広い用途で活用されています 。
ポリエチレンナフタレート(PEN)は、2001年頃から学校給食や病院給食の食器として使用されており、現在では1,000以上の学校給食センターで採用されています 。医療分野では、サンプルチューブ、液体クロマトグラフィー用部品、薬品保存容器などに利用されています 。
参考)https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20120713ky1amp;fileId=140
PENの優れたガスバリア性と耐薬品性により、薬液流路部品や薬品容器として高い適合性を示します。従来のPC(ポリカーボネート)やCOC(環状オレフィン共重合体)と比較して、酸・アルカリ・有機溶剤に対する耐性が格段に優れています 。
特に加熱滅菌が必要な薬品の保存容器や、成分の蒸発を防ぐための密閉容器において、その性能が発揮されます。高温・高湿条件下でも長期的な寸法安定性と外観保持が可能です 。
1-ナフタレン酢酸ナトリウムは、植物成長調整剤として医療関連分野で重要な役割を果たしています。オーキシン様活性を示し、植物の成長を制御する機能があります 。
参考)https://www.agrokanesho.co.jp/product/view/56
この化合物は、細胞培養培地で一般的に使用される植物ホルモン(合成オーキシン)として、MS培地やChu(N6)培地などの植物培地への添加物となっています 。医療用植物由来製品の研究開発において、品質管理と効率的な生産に寄与しています。
参考)https://www.bmsci.com/products/?id=1556949047-363681amp;pca=4
分子式C₁₂H₉O₂Na、分子量208.2の化学物質で、水溶解度は295.5g/L(20℃)と高い水溶性を示します。この特性により、医療現場での取り扱いが比較的容易です 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000887053.pdf
厚生労働省による1-ナフタレン酢酸の食品健康影響評価書では、動物実験における安全性データが詳細に記載されています
医療従事者が最も注意すべき点は、ナフタレンの健康障害です。厚生労働省は「ナフタレンの健康障害防止対策」を策定し、作業環境測定の重要性を強調しています 。屋内作業場では6か月以内ごとに1回の定期的な作業環境測定が必要です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000101695.pdf
ポリ塩化ナフタレン(PCN)は特に注意が必要な物質で、難分解性、高蓄積性であり、人や高次捕食動物への長期毒性を有します 。75種類の異性体を含み、5~7塩素異性体の一部はダイオキシンやコプラナPCBと同等の毒性を持つことが報告されています 。
参考)https://www.shimadzu-techno.co.jp/annai/env/k01_18.html
急性毒性試験では、ラットに対する投与により脂質過酸化反応の増加、体重の顕著な減少が観察されており、医療現場での取り扱いには十分な注意が必要です 。
参考)https://www.meti.go.jp/shingikai/kagakubusshitsu/anzen_taisaku/pdf/h27_02_s03_00.pdf
医療施設では、ナフタレンを主成分とする防虫剤の使用が一般的です。しかし、これらの製品は適切な管理が不可欠です 。古くはしょう脳が使われていましたが、化学合成の発達とともにナフタレン(ナフタリン)が登場し、現在ではパラジクロロベンゼン製剤も併用されています 。
参考)https://www.monotaro.com/k/store/%E3%83%8A%E3%83%95%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%B3%E9%98%B2%E8%99%AB%E5%89%A4/
医療従事者は、防虫剤の取り扱い注意事項を理解し、患者や職員の安全確保に努める必要があります。特に、金糸、銀糸、和服、ラメ加工製品、ボタン類、毛皮や革製品に使用する場合は、直接触れないよう配慮が重要です 。
モグラ・コウモリ忌避剤として使用される粗製ナフタリンも、医療施設の外周管理において有効ですが、効果持続期間(モグラには約3か月、コウモリには約1か月)を考慮した定期的な交換が必要です 。
参考)https://www.monotaro.com/s/q-%E9%98%B2%E8%99%AB%E5%89%A4%20%E3%83%8A%E3%83%95%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%B3/