急性胃炎は、胃の粘膜に突然炎症が生じることで引き起こされる疾患です。この炎症により、胃粘膜には出血やびらん(粘膜表面の欠損)、むくみなどの病理学的変化が生じます。急性胃炎の特徴は、症状が突然現れ、比較的短期間(通常2~7日程度)で経過することにあります。
急性胃炎の主な症状には以下のようなものがあります。
急性胃炎の症状の特徴として、痛みの性質が重要です。一般に急性胃炎による腹痛は、持続的というよりも間欠的であり、食事との関連が見られることがあります。また、症状の強さは原因によって大きく異なります。例えば、アルコールや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による急性胃炎は比較的強い症状を示すことがありますが、軽度のストレスや食生活の乱れによるものは軽度の不快感程度のこともあります。
急性胃炎の症状で緊急性が高いものには注意が必要です。以下のような症状がある場合は、急性腹症(緊急性の高い腹痛)の可能性があるため、早急に医療機関を受診するべきです。
これらの症状は、単なる急性胃炎を超えて、穿孔性胃潰瘍や急性胃粘膜病変(AGML)など、より重篤な疾患を示唆している可能性があります。
急性胃炎の原因は多岐にわたります。医療従事者として、患者の症状に対応する際には、これらの原因を念頭に置いて診断・治療にあたることが重要です。
薬剤による急性胃炎。
感染による急性胃炎。
食生活・生活習慣による急性胃炎。
ストレスによる急性胃炎。
精神的ストレスは自律神経系を介して胃酸分泌を増加させ、胃粘膜の防御機能を低下させます。特に現代社会では、仕事や人間関係のストレスが急性胃炎の重要な誘因となっています。
異物摂取。
魚の骨などの異物が胃粘膜に刺入することで、局所的な急性炎症を引き起こすことがあります。除去するまで症状が持続する特徴があります。
その他の原因。
急性胃炎の原因を特定することは、適切な治療計画の立案と再発予防に不可欠です。例えば、NSAIDsによる急性胃炎であれば、可能な限り薬剤の中止や変更を検討し、胃粘膜保護剤の併用を考慮します。感染性胃炎であれば、原因微生物に応じた抗菌薬や対症療法が必要となります。生活習慣が原因の場合は、食生活の改善や禁酒・禁煙などの生活指導が重要です。
急性胃炎の治療は、症状の緩和と原因の除去を目的として行われます。治療方法は原因や症状の程度によって異なりますが、基本的なアプローチとしては以下の3つがあります。
1. 薬物療法
急性胃炎の主な薬物療法には以下のようなものがあります。
これらの薬剤は胃酸分泌を抑制することで、胃粘膜の炎症を鎮め、自然治癒を促進します。特にPPIはH2ブロッカーよりも強力な酸分泌抑制作用を持ち、重症例に有効です。
これらの薬剤は胃粘膜のバリア機能