急性胃炎の症状と治療方法
急性胃炎の基礎知識
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定義
急性胃炎とは、胃粘膜に急激に炎症が生じる病態で、2〜7日程度の短期間の症状が特徴です。
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主な症状
みぞおちの痛み、吐き気・嘔吐、食欲不振、胃のむかつきなどが突然現れます。
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治療アプローチ
薬物療法、原因除去、食事制限の3つが基本的な治療アプローチです。
急性胃炎の主な症状と特徴
急性胃炎は、胃の粘膜に突然炎症が生じることで引き起こされる疾患です。この炎症により、胃粘膜には出血やびらん(粘膜表面の欠損)、むくみなどの病理学的変化が生じます。急性胃炎の特徴は、症状が突然現れ、比較的短期間(通常2~7日程度)で経過することにあります。
急性胃炎の主な症状には以下のようなものがあります。
- みぞおちの痛み(胃痛):急性胃炎の痛みは、部位が不明瞭で漠然としており、波がある特徴があります。
- 吐き気・嘔吐:胃の炎症により胃の運動機能が低下し、吐き気や嘔吐が生じることがあります。
- 食欲不振:炎症が強い場合、食べてもすぐに吐いてしまうことがあります。
- げっぷの多発:胃内のガスが増加することでげっぷが頻繁に出ることがあります。
- お腹の張り:胃の動きが悪くなることで腹部膨満感を感じることがあります。
- 発熱:感染性の原因による場合は特に発熱を伴うことがあります。
- 吐血・下血:高度な炎症では胃粘膜からの出血が生じ、吐血や黒色便(メレナ)として現れることがあります。
急性胃炎の症状の特徴として、痛みの性質が重要です。一般に急性胃炎による腹痛は、持続的というよりも間欠的であり、食事との関連が見られることがあります。また、症状の強さは原因によって大きく異なります。例えば、アルコールや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による急性胃炎は比較的強い症状を示すことがありますが、軽度のストレスや食生活の乱れによるものは軽度の不快感程度のこともあります。
急性胃炎の症状で緊急性が高いものには注意が必要です。以下のような症状がある場合は、急性腹症(緊急性の高い腹痛)の可能性があるため、早急に医療機関を受診するべきです。
- 激しい腹痛が持続する
- 大量の吐血や下血がある
- 高熱を伴う
- 意識障害や全身状態の悪化がある
これらの症状は、単なる急性胃炎を超えて、穿孔性胃潰瘍や急性胃粘膜病変(AGML)など、より重篤な疾患を示唆している可能性があります。
急性胃炎を引き起こす様々な原因
急性胃炎の原因は多岐にわたります。医療従事者として、患者の症状に対応する際には、これらの原因を念頭に置いて診断・治療にあたることが重要です。
薬剤による急性胃炎。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):アスピリン、イブプロフェンなどの鎮痛剤は胃粘膜の防御機構を低下させます。
- 向精神薬:一部の抗うつ薬や抗不安薬も胃粘膜に悪影響を及ぼすことがあります。
- ステロイド:長期使用により胃粘膜が脆弱化することがあります。
感染による急性胃炎。
- ヘリコバクター・ピロリ菌:成人のピロリ菌初感染は急性胃炎を引き起こすことがあります。
- ウイルス感染:ノロウイルスやロタウイルスなど。
- 細菌性食中毒:サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌など。
- アニサキス:生魚に寄生するアニサキスが胃壁に刺入することで、急性の激しい腹痛を引き起こします。
食生活・生活習慣による急性胃炎。
- アルコールの過剰摂取:アルコールは胃粘膜を直接刺激し、胃酸分泌を促進します。
- 食べ過ぎ・飲み過ぎ:胃に負担をかけ、胃酸の過剰分泌を招きます。
- 刺激物の摂取:香辛料の多い食品、カフェイン、炭酸飲料などが原因となりえます。
- 喫煙:タバコに含まれるニコチンは胃粘膜の血流を低下させます。
ストレスによる急性胃炎。
精神的ストレスは自律神経系を介して胃酸分泌を増加させ、胃粘膜の防御機能を低下させます。特に現代社会では、仕事や人間関係のストレスが急性胃炎の重要な誘因となっています。
異物摂取。
魚の骨などの異物が胃粘膜に刺入することで、局所的な急性炎症を引き起こすことがあります。除去するまで症状が持続する特徴があります。
その他の原因。
- 放射線治療:腹部への放射線照射が胃粘膜障害を引き起こすことがあります。
- 重度の熱傷:全身性炎症反応に伴い急性胃粘膜病変(AGML)を生じることがあります。
- アレルギー反応:特定の食物アレルギーが急性胃炎様の症状を引き起こすことがあります。
急性胃炎の原因を特定することは、適切な治療計画の立案と再発予防に不可欠です。例えば、NSAIDsによる急性胃炎であれば、可能な限り薬剤の中止や変更を検討し、胃粘膜保護剤の併用を考慮します。感染性胃炎であれば、原因微生物に応じた抗菌薬や対症療法が必要となります。生活習慣が原因の場合は、食生活の改善や禁酒・禁煙などの生活指導が重要です。
急性胃炎の効果的な治療方法と薬物療法
急性胃炎の治療は、症状の緩和と原因の除去を目的として行われます。治療方法は原因や症状の程度によって異なりますが、基本的なアプローチとしては以下の3つがあります。
1. 薬物療法
急性胃炎の主な薬物療法には以下のようなものがあります。
- 酸分泌抑制薬。
- プロトンポンプ阻害薬(PPI):オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールなど
- H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー):ファモチジン、ラニチジンなど
- カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB):ボノプラザンなど
これらの薬剤は胃酸分泌を抑制することで、胃粘膜の炎症を鎮め、自然治癒を促進します。特にPPIはH2ブロッカーよりも強力な酸分泌抑制作用を持ち、重症例に有効です。
- 胃粘膜保護剤(防御因子増強薬)。
- スクラルファート
- テプレノン
- レバミピド
- エカベト
- ソファルコン
これらの薬剤は胃粘膜のバリア機能