クラミジア 症状と検査について
クラミジア 症状と検査の基本情報
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感染経路
性的接触によって感染し、性器だけでなく咽頭や直腸にも感染。無症状感染が30-70%と多い。
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検査の種類
抗原検査、核酸増幅法(PCR等)、抗体検査があり、検体は尿、分泌物、うがい液など。
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検査タイミング
感染機会から24時間以上経過後に抗原検査が可能。確実な診断には1-2週間後が理想的。
クラミジアの主な症状と特徴
クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマティスという細菌の感染によって引き起こされる性感染症です。この感染症の最大の特徴は、無症状のケースが非常に多いことです。特に女性では70%以上、男性でも30~50%が無症状と言われており、そのため「サイレントディジーズ(静かな病気)」とも呼ばれています。症状が出ない場合でも感染力があるため、感染拡大の原因となっています。
男性と女性では症状の現れ方が異なります。
【男性の症状】
- 尿道のかゆみや不快感
- 排尿時の軽い痛み
- 尿道から透明~乳白色の膿(うみ)の分泌
- 朝起きた時に下着に分泌物が付着していることがある
- 精巣上体(副睾丸)の腫れや痛み
- 軽い発熱
男性の場合は
淋病と症状が似ていますが、クラミジアの方が症状が軽いことが特徴です。淋病では排尿痛が激しく、黄色っぽい粘り気のある膿が出ますが、クラミジアではさらさらとした透明または乳白色の分泌物が少量出ることが多いです。
【女性の症状】
- おりものの増加
- 生理以外の不正出血
- 下腹部の痛み
- 性交時の痛み
- 膣のかゆみや痛み
- 排尿時の痛み
- 黄色い粘液や膿の分泌
女性の場合は子宮頸管に感染することが多く、症状がほとんど現れないことが特徴です。症状があっても軽微なため気づかないケースが多いのですが、放置すると上行性に感染が広がり、骨盤内感染症や不妊症の原因になることもあります。
【咽頭・直腸のクラミジア感染】
オーラルセックスやアナルセックスによって、性器以外の部位にも感染することがあります。
- 咽頭クラミジア:のどの痛み、リンパ節の腫れ、耳閉感、難聴、鼻づまりなどの症状が現れることがありますが、多くは無症状です。
- 直腸クラミジア:肛門の痛み、便に血が混ざるなどの症状が現れることがありますが、こちらも無症状のことが多いです。
クラミジアは放置すると合併症を引き起こすことがあります。男性では精巣上体炎や前立腺炎、女性では子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患(PID)、卵管炎、不妊症などのリスクが高まります。また、妊娠中の感染は、流産や早産、新生児への感染を引き起こす可能性があります。
クラミジアの検査方法と種類
クラミジア感染症の検査には主に3つの方法があります。それぞれの特性を理解し、適切な検査方法を選択することが重要です。
【1. 核酸増幅法による検査(PCR/TMA法等)】
最も感度が高く、現在の主流となっている検査方法です。
- 検出対象:クラミジア菌のDNAやRNA
- 検体:尿、膣や子宮頸管からの分泌物、うがい液、肛門分泌物など
- 特徴。
- 非常に高い感度と特異度を持つ
- 少量の病原体でも検出可能
- 感染初期でも検出可能
- 死菌も検出するため、治療後すぐの検査では偽陽性の可能性がある
- 検査可能時期:感染機会から24時間以上経過後
- 結果判定時間:種類によって即日~数日
核酸増幅法には、PCR法、SDA法、TMA法などがあり、これらは性器クラミジア感染症の診断に対する感度が優れています。特にFirst-void urine(初尿)を用いたPCR検査は、男性の尿道からのサンプル採取よりも患者の負担が少なく、感度も同等以上であるため推奨されています。
【2. 抗原検査(
イムノクロマト法等)】
クラミジア菌の抗原を直接検出する方法です。
- 検出対象:クラミジア菌体の抗原
- 検体:尿、膣や子宮頸管からの分泌物など
- 特徴。
- 操作が簡便でコストが低い
- 結果が短時間(15~30分)で得られる
- 核酸増幅法より感度がやや低い
- 検査可能時期:感染機会から24時間以上経過後
- 結果判定時間:20~30分程度(即日)
イムノクロマト法による迅速診断キットは、外来診療で即日結果を得たい場合に有用ですが、感度が核酸増幅法より低いため、陰性の場合でも感染を完全に否定できないことがあります。そのため、症状がある場合や高リスク群では、核酸増幅法による確認検査を併用することが望ましいでしょう。
【3. 抗体検査(血液検査)】
血液中のクラミジアに対する抗体を検出する方法です。
- 検出対象:クラミジアに対するIgA抗体、IgG抗体
- 検体:血液
- 特徴。
- 過去の感染歴も含めて検出する
- 現在感染しているかどうかの判断には向かない
- 感染部位を特定できない
- 補助診断として利用される
- 検査可能時期:感染機会から4週間後(抗体産生に時間がかかる)
- 結果判定。
- IgA(-)/IgG(-):感染していないか、初期感染
- IgA(+)/IgG(-):初期感染の疑い
- IgA(-)/IgG(+):過去感染の可能性
- IgA(+)/IgG(+):現在も感染状態の疑い
抗体検査は現在ではあまり主流ではなく、主に補助診断として使用されています。クラミジア感染が疑われる場合は、核酸増幅法や抗原検査が第一選択となります。
クラミジア感染の潜伏期間と検査タイミング
クラミジア感染症の適切な検査時期を理解することは、正確な診断を行う上で非常に重要です。検査のタイミングによって結果の信頼性が大きく変わるため、潜伏期間を踏まえた検査計画が必要です。
【クラミジアの潜伏期間】
クラミジア感染症の潜伏期間(感染から症状が現れるまでの期間)は一般的に1~3週間と言われています。ただし、30%程度の方が淋病と合併感染していることもあり、症状が早く出る場合もあります。また、無症状のケースも多いため、症状の有無だけで判断するのは危険です。
【検査のベストタイミング】
- 抗原検査・核酸増幅検査(PCR等):感染機会から24時間以上経過後に検査可能ですが、1~2週間後に検査するのが理想的です。
- 抗体検査:感染機会から4週間以上経過後に検査するのが望ましいです。抗体産生には時間がかかるため、早すぎると偽陰性の可能性があります。
女性の場合は生理中の検査は避けるべきです。生理血が混じることで検査精度が下がる可能性があるため、生理が終わってから検査するように患者さんに指導しましょう。
【検査の判断基準】
- 症状がある場合。
- 症状出現から検査までに十分な時間(24時間以上)が経過していれば、すぐに検査を行うべきです。
- 症状が強い場合は、検査結果を待たずに経験的治療を開始することもあります。
- 症状がない場合。
- パートナーがクラミジア陽性と診断された場合:感染機会から1~2週間後に検査を推奨します。
- 定期検査として:性行為の頻度や相手の数に応じて3~6ヶ月ごとの定期検査が望ましいです。
- 高リスク行為後:感染リスクの高い性行為後は、2週間以上経過してから検査することを推奨します。
【治療後の再検査】
クラミジア感染症の治療効果を確認するための再検査は、治療終了から約3ヶ月後に行うことが推奨されています。これは治療後すぐの検査では、死菌のDNAが残っている可能性があり、核酸増幅法で偽陽性となる可能性があるためです。
【複数部位の検査】
性行為の内容によっては、性器だけでなく咽頭や直腸など複数の部位での感染の可能性があります。性行為の詳細を聴取し、必要に応じて複数部位での検査を検討することが重要です。
咽頭クラミジアと直腸クラミジアの症状と検査
クラミジア感染症というと性器感染に注目が集まりがちですが、近年、咽頭や直腸などの性器以外の部位における感染の重要性が認識されるようになってきました。これらの部位の感染は見逃されやすく、感染源として重要な役割を果たしていることが分かっています。
【咽頭クラミジア感染症】
咽頭クラミジアは、クラミジアに感染した性器との口腔性交渉(オーラルセックス)を介して感染します。感染者の多くは無症状であり、そのため診断・治療されないままになっていることが多いです。
- 主な症状(ある場合)。
- のどの痛み・違和感
- 喉元のリンパ節の腫れ
- 耳閉感(耳にものが詰まった感じ)
- 難聴