エパデールTを中性脂肪が高めの患者さんにすすめれば、それだけで改善できると思っていませんか?実は服用中にLDLコレステロール値が上昇した症例が複数確認されています。
イコサペント酸エチル(EPA)製剤は、もともと医療用医薬品として高脂血症や閉塞性動脈硬化症の治療に使われていた成分です。 一般用医薬品(OTC)としての製品「エパデールT」(持田製薬製造、大正製薬販売)は2012年12月28日に承認を受け、2013年4月15日より要指導医薬品として販売を開始しました。japal+1
要指導医薬品として6年以上の製造販売後調査が実施され、3,277症例で副作用発現率が1.92%にとどまり、重篤な副作用がゼロであったことが確認されました。 これを受けて2019年4月15日、厚生労働省告示第231号により要指導医薬品から第1類医薬品へ移行しました。pref.okayama+1
第1類医薬品への移行後も、引き続きセルフチェックシートを用いた販売管理が必要とされています。これが原則です。
OTCの同成分製剤は実質エパデールTのみという状況が続いており、薬局で取り扱いの機会は限られているものの、医療従事者として制度的背景を正確に把握しておくことが重要です。
参考:厚生労働省による一般用医薬品移行通知の全文
厚生労働省「イコサペント酸エチルのリスク区分について」(安全対策部会資料)
一般用イコサペント酸エチル製剤の効能は、健康診断等で指摘された境界領域の中性脂肪値の改善、この1点に限定されます。 境界領域とは、中性脂肪値が150mg/dL以上300mg/dL未満の範囲を指します。
参考)一般用医薬品のイコサペント酸エチル製剤の適正販売について(医…
300mg/dLを超えている場合は販売対象外です。脂質異常症として医師による治療が必要なレベルであり、OTCでの対応は適切ではありません。また次の条件に該当する場合は販売してはいけません。
意外ですね。中性脂肪が少し高い方を広く対象にできると思いがちですが、実際には除外条件が多く、販売できる層はかなり絞られます。
セルフチェックシートには血液検査の結果・検査年月・病院名を記入する欄が設けられており、これを確認・回収・2年間保管することが薬局に求められています。 確認が取れない場合は販売できないが原則です。
参考:岡山県が公開している適正販売通知の概要
岡山県「一般用医薬品のイコサペント酸エチル製剤の適正販売について」
製造販売後調査3,277症例における副作用発現率は1.92%(63例・84件)でした。 重篤な副作用報告はゼロでしたが、注意が必要なケースは実際に存在します。
最も頻度が高い副作用は消化器系(下痢11件、腹部不快感6件、腹部膨満感3件など)です。次いで皮膚症状(そう痒症5件、発疹2件)が続きます。消化器症状が多めですね。
医療従事者として見逃せないのが出血関連の副作用です。EPA製剤は抗血小板作用を持ち、軽く打撲しただけで「10cm四方に内出血が広がった(はがきの横幅ほどの範囲)」という事例や、「怪我後の出血が1時間以上止まらない」という事例が実際に報告されています。
| 出血関連副作用 | 件数 | 対応のポイント |
|---|---|---|
| 皮下出血 | 1件 | 増量直後に発現、休薬で回復 |
| 出血時間延長 | 1件 | 83日目に1時間以上止血不能 |
| 歯肉出血 | 1件 | 服用中止後4日で軽快 |
| 鼻出血 | 1件 | 20代女性・服用中に継続発現 |
| 血便排泄 | 1件 | 服用8日目に発現 |
購入者に対し、「ぶつけていないのに青あざが広範囲にできた」「歯みがき時に出血しやすくなった」といった症状があれば服用を中止し薬剤師へ相談するよう、販売時に必ず伝えることが望ましいです。
一方で、予測できない副作用としてLDLコレステロール(低比重リポ蛋白)の増加も3件確認されました。 中性脂肪値を下げる目的で服用したにもかかわらず、LDL値が140mg/dLを超えたケースが複数あります。服用開始3か月後の血液検査で中性脂肪値だけでなく、総合的な脂質プロファイルも確認するよう伝えることが大切です。
用法・用量は「1回1包(600mg)、1日3回、食後すぐ」です。 20歳未満は服用禁忌。1日総量1,800mgとなります。
食後すぐの服用に意味があります。EPA製剤は脂溶性成分であるため、食事由来の脂質と一緒に小腸で吸収されます。空腹時に服用すると吸収率が著しく低下するためです。これが基本です。
また、軟カプセル製剤であるため「噛まずに服用すること」も重要な指導ポイントです。かんでしまうと油状の成分が口腔内に広がり、不快感と同時に吸収が不均一になる恐れがあります。
「3〜6か月服用して改善が見られなければ中止し医師・薬剤師に相談」という点も、購入者への説明が義務となっています。 これは痛いところですが、OTCでの長期継続には限界があるということですね。
服用開始3か月後の血液検査実施は、薬剤師側も積極的に声かけ・フォローアップを行うことが推奨されています。特別調査では服用完了後の血液検査実施率が77.0%(324/421例)であり、すべての人が検査を受けているわけではありません。
一般的には「エパデールを飲めば中性脂肪が下がる」というイメージが強いですが、実際には服用中に中性脂肪値が悪化した事例が報告されています。 これは医療従事者でも見落としがちな盲点です。
特別調査の中で、服用前200mg/dL台後半だった中性脂肪が服用15日目に300mg/dLを超えた症例(42日で服用中止)や、服用開始から約2年後に中性脂肪が119mg/dLから222mg/dLへと約2倍に上昇した症例が確認されています。 これは使用上の注意に記載のない予測外副作用として報告されました。
つまり、OTCのイコサペント酸エチル製剤はすべての人に有効というわけではありません。なぜこのような逆効果が起きるのか、明確なメカニズムは解明されていませんが、食生活の乱れとの相互作用や、投与量が不十分な場合のリバウンド的な変動が関与している可能性があります。
このリスクを見逃さないためには、販売後の定期フォローが重要です。中性脂肪値の改善が見られない場合には「服用を中止して受診するよう指導し、受診勧奨を行うこと」が薬局に義務として課されています。 血液検査結果の確認を次回来店時に促すという実践が、医療従事者の役割として求められます。
生活習慣の改善(食事・運動・禁煙)と併用しなければ効果が出ないケースも多く、単に薬を渡すだけで終わらないことが条件です。 薬だけに頼らない指導ができる薬剤師の関与が、OTC医薬品の価値を高めます。
参考:日本薬剤師会の適正販売通知資料
日本薬剤師会「一般用医薬品のイコサペント酸エチル製剤の適正販売について」(2019年4月15日通知)