ヘリコバクターピロリ感染症の除菌治療は、すべての患者に対して保険適用されるわけではありません。診療報酬明細書への適切な記載を行うためには、まず保険診療の対象となる患者を正確に把握することが重要です 。
参考)ヘリコバクター・ピロリ感染症の診断及び治療に関する取り扱い
保険診療で算定可能な対象患者は以下の通りです。
これらの対象患者においては、ヘリコバクターピロリ感染が疑われる場合に限り、関連検査の算定が認められています 。
参考)ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に関する取扱いについ…
診療報酬明細書の摘要欄への記載は、ヘリコバクターピロリ関連の診療において最も重要なポイントの一つです。記載漏れは査定の原因となるため、以下の事項を確実に記載する必要があります 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken15/dl/tuuchi-h24-0221-31.pdf
内視鏡検査等の結果記載について、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎等と診断された対象患者については、確定診断した際の内視鏡所見及び結果を摘要欄に記載することが義務付けられています。健康診断として内視鏡検査を行った場合には、その旨も明記する必要があります 。
参考)ヘリコバクター・ピロリ抗体定性・半定量
除菌判定時の記載では、除菌後の感染診断を算定する場合、診療報酬明細書の摘要欄に除菌終了年月日を記載することが求められています 。
参考)https://www.falco.co.jp/rinsyo/contents/pdf/26013.pdf
静菌作用薬剤の記載として、プロトンポンプ阻害剤等の静菌作用を有する薬剤を投与していた患者に対し、除菌前の感染診断を行う場合は、当該薬剤の投与中止または終了年月日を摘要欄に記載する必要があります 。
参考)301 Moved Permanently
除菌前の感染診断においては、厳格な算定ルールが設定されており、適切な理解が査定を回避する上で重要です 。
参考)https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_147.pdf
感染診断検査は7つの検査法から選択可能で、通常は1項目のみの算定となります。
ただし、検査結果が陰性となった場合に限り、異なる検査法による再検査が1回追加で算定可能です 。
参考)https://uwb01.bml.co.jp/kensa/pdf/BML2013-09.pdf
同時実施の特例として、迅速ウレアーゼ試験と鏡検法の同時実施、または抗体測定・尿素呼気試験・糞便中抗原測定のうち2つの組み合わせで同時実施した場合、初回に限りそれぞれの所定点数を算定できます 。
除菌療法の実施においては、3剤併用・7日間投与が標準的な治療法として確立されており、使用薬剤の組み合わせも規定されています 。
参考)ピロリ菌検査を保険適用で受けるための条件は?
1次除菌療法では、プロトンポンプ阻害剤(PPI)またはボノプラザンと、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用が基本となります。代表的なパック製剤として、ランサップ、ラベキュア、ボノサップなどが使用されます 。
2次除菌療法は、1次除菌が不成功の場合に1回に限り保険適用され、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更した組み合わせで実施します。ラベファインやボノピオンが代表的なパック製剤です 。
除菌判定については、除菌終了後4週間以上経過してから実施し、感染診断と同様の検査法から1項目のみ算定可能です。陰性結果に対する再検査も1回限り認められており、摘要欄への除菌終了年月日の記載が必須となります 。
診療報酬請求における査定を回避するためには、病名設定と記載内容の整合性を確保することが最も重要です 。
参考)【重要】ヘリコバクター・ピロリ感染症検査の保険請求について …
病名設定の注意点として、ヘリコバクターピロリ感染症の傷病名のみでは、対象疾患に該当しない場合は原則として認められません。必ず胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎等の確定病名と併記する必要があります 。
内視鏡所見の記載では、単純に病名を記載するだけでなく、具体的な内視鏡所見や検査結果を摘要欄に簡潔に記載することが求められています。「慢性胃炎の所見あり」「胃体部に萎縮性変化を認める」といった具体的な記述が望ましいとされています 。
参考)【社保情報】ヘリコバクター・ピロリ除菌治療の保険診療における…
継続管理における配慮として、他院での除菌歴がある場合や、前回の除菌判定が実施されていない場合等、特殊な状況では摘要欄にその経緯を記載することで査定リスクを軽減できます 。
参考)ヘリコバクターピロリ菌検査について
医療機関においては、ヘリコバクターピロリ関連診療の算定ルールを正確に理解し、診療報酬明細書への適切な記載を行うことで、患者への適切な医療提供と適正な保険請求の両立を図ることが重要です 。