エナロイ錠(一般名:エナロデュスタット)は、HIF-PH阻害薬に分類される腎性貧血治療薬です。腎性貧血は慢性腎臓病患者や透析患者に多くみられ、赤血球の産生が低下することが主な原因です。エナロイ錠は低酸素誘導因子(HIF)のプロリン水酸化酵素を阻害することで、エリスロポエチン産生を促進し、鉄の利用効率も高めることで赤血球造血を促します。臨床試験では、ヘモグロビン濃度を目標範囲(10.0g/dL以上12.0g/dL以下)に安定して維持できることが示されています[1][2][3]。
エナロイ錠の副作用発現頻度は13.6%と報告されており、主な副作用は高血圧(3.0%)、血圧上昇(1.5%)、フィブリンDダイマー増加(1.5%)などです。重大な副作用として血栓塞栓症(0.7%)があり、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳幹梗塞などが報告されています。その他、網膜出血(1%未満)、悪心(頻度不明)、湿疹(1%未満)などもみられます。副作用が現れた場合は速やかに投与中止や適切な処置が必要です[1][4][2][3]。
エナロイ錠は、HIF-PH阻害薬としてHIFを安定化させ、エリスロポエチンの内因的産生を増加させると同時に、鉄の利用効率を高める作用も持ちます。これにより、従来の赤血球造血刺激因子製剤と比較して、鉄補充療法の必要性が低減する可能性が指摘されています。また、腎性貧血モデル動物においてもヘモグロビン濃度の用量依存的な上昇が確認されています[2][3]。
エナロイ錠の投与にあたっては、血栓塞栓症のリスク評価が必須です。脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓などの既往歴や合併症の有無を事前に確認し、投与中は患者の状態を十分に観察します。妊婦や過去にエナロイ錠成分で過敏症を示した患者には禁忌です。また、過量投与によりヘモグロビン濃度が過剰に上昇するおそれがあり、減量や休薬などの対応が必要となります[4][5]。
エナロイ錠は、セベラマー炭酸塩やラパチニブなど一部の薬剤と併用する場合、血中濃度が変動することが知られています。特にセベラマー炭酸塩と同時投与するとCmaxやAUCが低下するため、投与タイミングの工夫が必要です。CYP1A2やCYP2C9基質との併用による大きな相互作用は報告されていませんが、臨床現場では患者ごとの併用薬や透析条件を考慮した個別対応が求められます。さらに、PTPシート誤飲による食道損傷や穿孔のリスクもあるため、服薬指導の徹底が重要です[1][4]。
腎性貧血治療薬の基礎知識や副作用リスク管理について詳しくまとめられています(エナロイ錠の添付文書PDF)。
PMDA公式 添付文書(エナロイ錠)