アポクリン腺除去手術における最も深刻なデメリットの一つが、永続的な傷跡形成です。剪除法では腋窩部に3~5cm程度の切開を要するため、必然的に瘢痕が残存します。
参考)https://doctors-interview.jp/treatment/8165
手術部位の傷跡形成には以下の特徴があります。
参考)https://biyou-kousei.jp/menu/wakiga/apocrine-sweat-glands/
参考)https://ayabe-clinic.jp/blog/col-22/
特に女性患者では、「ワキの開いたウェディングドレスが着用できない」「ノースリーブの衣服を避けるようになった」といった深刻な美容上の問題を抱える症例が多数報告されています。これらの傷跡は単なる美容的問題にとどまらず、患者のQOL低下につながる重要な医学的課題として認識する必要があります。
アポクリン腺除去手術の技術的限界により、完全な治癒は困難とされています。剪除法においても80~90%の除去率にとどまり、100%の完全除去は実質的に不可能です。
参考)https://biyou-kousei.jp/menu/wakiga/surgery-failure/
再発のメカニズムには以下の要因が関与します。
参考)https://wakiga.osaka-keisei.jp/armpit-removal-method/
アポクリン腺が100個存在する場合、90個を除去しても残存する10個により症状が持続し、患者満足度の低下につながります。この生理学的特性は、術前説明において患者に十分理解していただく必要があります。
アポクリン腺除去手術には、生命に関わる重篤な合併症のリスクが存在します。特に積極的な除去を行った場合、以下の合併症発生率が増加します:
血管系合併症
感染性合併症
皮膚合併症
これらの合併症は、患者の社会復帰を著しく困難にし、追加的な治療を要する場合があります。
アポクリン腺除去手術後のダウンタイムは、患者の日常生活に重大な影響を与えます。術後管理には以下の制約が必要です:
固定期間の制約
疼痛管理
社会的影響
これらの制約により、患者は手術を受けたことを深く後悔するケースが多数報告されています。
アポクリン腺除去手術は、身体的デメリットに加えて独特の心理的影響を患者に与えることが臨床観察から明らかになっています。
期待値との乖離
患者の多くは「手術により完全に臭いがなくなる」と期待していますが、実際には残存汗腺による症状継続により深い失望感を抱きます。この期待値と現実の乖離は、術後うつ状態を引き起こす重要な要因となっています。
身体イメージの変化
腋窩部の瘢痕形成により、患者の身体イメージが大きく変化します。特に若年女性では、「自分の体が傷つけられた」という認識から自尊心の低下や対人関係への影響が生じる場合があります。
社会復帰への不安
長期間のダウンタイムにより、職場や学校での立場に対する不安が増大します。「手術のことを周囲に知られたくない」という思いから、適切な休養を取れず治癒が遅延する症例も存在します。
医療不信の形成
手術結果に満足できない場合、医療従事者全般への不信感が形成される可能性があります。これは将来的な医療受療行動にも影響を与える重要な問題です。
医療従事者として、これらの心理的影響を十分に理解し、術前の十分な説明と術後の継続的な心理的サポートが不可欠であることを認識する必要があります。
日本皮膚科学会の腋臭症診療ガイドラインでも、手術療法のリスクと限界について詳細な説明が求められています。
日本皮膚科学会腋臭症診療ガイドライン
アメリカ形成外科学会による汗腺除去手術の合併症に関する包括的研究報告
American Society of Plastic Surgeons Surgery Statistics