スパズムを「クセ」と見過ごした親が、動画1本で確定診断に至った事例が今も後を絶たない。

ウエスト症候群(点頭てんかん)の発作、すなわち「てんかん性スパズム」は、1回あたり数秒で終わる非常に短い発作です。 しかし、その短さが問題を生みます。診察室ではほぼ確実に発作は起こらず、医師がリアルタイムで発作を目にすることはまずありません。
関連)https://www.alfresa-pharma.co.jp/general/tenkan/infantile_spasms/index.html
そのため、発作を動画で記録することが診断において極めて重要とされています。 スマートフォンやデジタルカメラで発作を撮影し、専門医に見せることで診断に役立つと、日本の主要な医療機関や指定難病情報サービスが明記しています。
関連)https://harichildrenclinic.com/treatment/westsydrome/
意外なのは、「ネットに掲載されている発作動画と同じ見え方でなくても、ウエスト症候群の可能性がある」という点です。 スパズムの表れ方には個人差があり、典型的な「点頭(こくん)動作」だけでなく、バンザイ・ビックリ様・しゃっくりのような動きも含まれます。 これを知らずに「うちの子の動きは動画と違うから違う病気だろう」と受診を躊躇するケースが後を絶ちません。
関連)https://xn--gcke5c2c707uui9bbpo.jp/west_syndrome.html
撮影タイミングが診断の精度を決めます。スパズムは寝起きや眠る前に最も多く出現するため、この時間帯を特に意識した記録が推奨されます。 「何度も繰り返す」「シリーズを形成する(10〜20回連続で起きる)」という特徴も撮影で確認できる重要な点です。
関連)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_19115
以下は動画撮影で押さえるべきポイントです。
撮影した動画は受診時に必ず持参します。 小児科・小児神経科への初診時に動画を持参することで、専門医による評価の精度が高まり、脳波検査や24時間ビデオ脳波などの適切な検査へのスムーズな移行が期待できます。
関連)https://kakehashi-mc.jp/west-syndrome/
重要なのはここです。「クセ」と思って様子を見る家族は多いですが、発症から治療開始までの時間が長くなるほど神経発達への影響が大きくなります。 医療従事者として保護者に正確な情報を伝えることが、予後を左右する第一歩です。これは必須の知識です。
関連)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_19115
ウエスト症候群の診断確定には、脳波検査が不可欠です。特に「ヒプスアリスミア」と呼ばれる混沌とした特徴的な脳波所見の確認が診断の根拠になります。 ただし、ヒプスアリスミアはすべての患者・すべての時間帯に認められるわけではないという点は見落とされがちです。
関連)https://www.nanbyou.or.jp/entry/4414
だからこそ、24時間ビデオ脳波が「最も良い検査」と位置づけられています。 これは脳波と映像を同時記録するもので、発作中の脳波変化と体動の対応関係を確認できます。自宅で撮影した動画は、専門医がビデオ脳波検査の優先度や緊急性を判断する際の参考資料としても活用されます。
関連)https://xn--gcke5c2c707uui9bbpo.jp/sp/related_link.html
発作時の脳波は特徴的なパターンを示します。「速波に続いて高振幅の全般性鋭波または徐波がみられ、それに低振幅波が続くか重畳する」形態が典型です。 この発作中脳波の確認には、発作そのものを記録・再現する必要があり、自宅動画がその「最初の鍵」となります。
関連)https://www.orpha.net/pdfs/data/patho/Pro/other/Infantile_spasms_syndrome_JP_ja_ORPHA3451.pdf
また、MRI検査も脳形成異常や結節性硬化症などの基礎疾患(症候性原因)を特定するために必須とされています。 診断に向けた検査のフローは「動画→専門医受診→脳波(24時間ビデオ脳波)→MRI→確定診断」という流れが標準的です。
関連)https://www.orpha.net/pdfs/data/patho/Pro/other/Infantile_spasms_syndrome_JP_ja_ORPHA3451.pdf
ウエスト症候群の治療で最も重要なのは、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)療法です。 複数の研究・ガイドラインでACTH療法が最も有効な治療法として推奨されており、発症後1カ月以内の開始が望ましいとされています。
関連)https://rockynote.com/west_syndrome/
数字が示す有効性は明確です。あるRCTでは、ACTH投与群の86.6%(15例中13例)が臨床発作および脳波の両方で改善したのに対し、プレドニゾン群では28.6%(14例中4例)にとどまりました。 比較対照が示す差は歴然で、これがACTHを第一選択とする根拠です。
関連)https://rockynote.com/west_syndrome/
ただし、ACTH療法は副作用も考慮しなければなりません。 治療前に基礎疾患の精査が必要であり、結節性硬化症に伴う心臓腫瘍がある場合は使用を控えるべきとされています。副作用を監視しながらの慎重な投与が求められます。
関連)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_19115
ACTHに抵抗性を示すケースでは、ビガバトリンや他の抗てんかん薬、ケトン食療法、てんかん外科治療、迷走神経刺激療法なども選択肢として存在します。 治療が難航するケースも多い疾患であることを踏まえると、「診断を早める」ための動画活用が、治療開始の時間的余裕を生み出す意義は非常に大きいと言えます。
関連)https://www.nanbyou.or.jp/entry/4416
保護者がYouTubeなどの動画共有サービスで「ウエスト症候群 発作動画」を検索するケースが増えています。 実際に4.2万回以上再生された発作動画も存在し、保護者が自ら動画比較を行い、専門医への受診を決める流れが生まれています。
関連)https://www.youtube.com/hashtag/%E3%82%A6%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4
これは医療従事者にとって「両刃の剣」です。動画との比較が受診を後押しすることは有益ですが、「自分の子の動きと動画が違う」という理由で受診を諦めるリスクも同時に存在します。 外来での初期対応において、「ネットの動画と同じでなくても発症している可能性があります」と伝えることは、重要な医療コミュニケーションのひとつです。
関連)https://harichildrenclinic.com/treatment/westsydrome/
あわせて把握しておきたいのが、モロー反射との鑑別問題です。 新生児・乳児期の生理的なモロー反射は、スパズムと見た目が非常に似ています。異なるのは「シリーズ形成の有無」「起こる文脈(外部刺激vs自発)」「発達への影響」などです。モロー反射かスパズムか迷う保護者の動画を評価する際には、この鑑別視点が必要です。
関連)https://www.annyo.jp/magazine/moro-reflex-epilepsy-difference/
医療従事者として覚えておけばOKです:「動画を持ってきた保護者は、それだけで一定以上の観察眼を持っている」という認識です。動画を持参した段階で、保護者はすでに「何かおかしい」という確かな違和感を持っています。その感覚を尊重した対応が、早期診断率の向上につながります。
難病情報センター「ウエスト症候群(指定難病145)」:診断基準・症状・治療に関する公式情報。保護者への説明資料としても活用できる。
日本医事新報社「ウエスト症候群(点頭てんかん)私の治療」:ACTH療法の適応・副作用・薬物療法の順序に関する専門的解説(2022年)。
ハリーこどもクリニック「ウエスト症候群の症状・診断・治療」:動画撮影のコツを含む、保護者向けの丁寧な解説ページ。
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