ステロイドを長期継続しても、成人FSGSの約35%は寛解に至らず腎不全へ進行します。

FSGSは大きく「一次性(原発性)」と「二次性(続発性)」に分けられ、治療方針が根本から異なります。 一次性FSGSでは糸球体上皮細胞(ポドサイト)の免疫介在性障害が主因とされるため、ステロイドや免疫抑制薬が治療の主体になります。 一方、二次性FSGSの原因には肥満・HIV感染症・ヘロイン使用・薬剤性などがあり、この場合は原因疾患のコントロールや生活習慣改善が優先されます。
関連)https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/focal_segmental_glomerulosclerosis/
免疫抑制療法を闇雲に投与するのは禁物です。
二次性FSGSに対してステロイドを中心とした免疫抑制を行っても寛解率は低く、有害事象のリスクだけが増加します。 腎生検でFSGSと診断された段階で、一次性・二次性の鑑別を徹底することが、不必要な治療による患者負担を防ぐ第一歩です。 KDIGOガイドラインも「臨床的にネフローゼ症候群を発症した特発性FSGSについてのみ免疫療法を考慮する」と明示しています。 つまり鑑別が条件です。
関連)https://www.shouman.jp/disease/details/02_01_004/
| 分類 | 主な原因 | 治療の主軸 |
|---|---|---|
| 一次性(原発性) | ポドサイト免疫障害 | ステロイド+免疫抑制薬 |
| 二次性(続発性) | 肥満・HIV・薬剤性など | 原因疾患の治療・生活改善 |
腎生検が診断の要です。
関連)https://www.shouman.jp/disease/details/02_01_004/
一次性FSGSに対してステロイド(プレドニゾロン)が最初の選択肢となりますが、その奏効率は決して高くありません。 初期治療では体重1kgあたり0.5〜1.0mgの高用量を1〜3か月投与し、寛解後は数か月〜1年をかけて緩徐に漸減します。 腸管浮腫が顕著な重症例では、メチルプレドニゾロン500〜1,000mgを用いたパルス療法も選択肢になります。
関連)https://oogaki.or.jp/kidney/glomerular-disease/focal-segmental-glomerulosclerosis/
成人発症のFSGSでは約35%がステロイドに反応しません。 これは微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)との大きな相違点で、MCNSがほぼ全例でステロイドに反応するのと対照的です。 反応しない場合、放置すれば末期腎不全へ進行するリスクが高まります。これは深刻ですね。
関連)https://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/sannaika/jinqa14d.html
日本腎臓学会のガイドラインも、ステロイド療法の有効性を推奨グレード2Cとしており、効果が限定的であることを認めた上で提案しています。 効果を期待しすぎないことが原則です。
関連)https://jsn.or.jp/academicinfo/report/evidence-02-Nephrotic-syndrome.pdf
ステロイド抵抗性と判定されたら、速やかにカルシニューリン阻害薬(シクロスポリン・タクロリムス)の追加が検討されます。 シクロスポリンはFSGSの免疫抑制治療の中心的な位置を占め、ポドサイトへの直接的な保護作用も報告されています。 シクロホスファミドやミゾリビンも選択肢に挙がりますが、効果の根拠は限られています。
関連)https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/tv38xou-8a
カルシニューリン阻害薬の腎毒性には特に注意が必要です。長期投与では腎間質の線維化を招くリスクがあり、定期的な腎機能モニタリングが欠かせません。 改善が見込めない場合、血漿交換療法も難治例に対して試みられることがあります。 複数の治療法を組み合わせる「カクテル療法」(抗凝固・抗血小板・ステロイド・免疫抑制薬の併用)も、わが国では実施されることがあります。
関連)https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/genetic-diseases2/steroid-resistant-nephrotic-syndrome/
免疫抑制の選択は、腎機能・年齢・副作用リスクを総合判断して行うのが原則です。
関連)https://oogaki.or.jp/kidney/glomerular-disease/focal-segmental-glomerulosclerosis/
近年、難治性FSGSへのリツキシマブ(抗CD20抗体製剤)の有効性が国内外で相次いで報告されています。 成人原発性FSGSに対してリツキシマブを標準免疫抑制療法に追加した試験では、12か月時点で74%の患者に治療反応が認められました。 別の報告では、成人原発性FSGSに対するリツキシマブ単独での寛解率が78.2%に達したとされています。
関連)https://academia.carenet.com/share/news/5436dbbf-3d3e-40ab-a6dd-03dd838795d4
意外な事実があります。
成人ステロイド抵抗性FSGSへのリツキシマブ投与では、完全寛解に至るのは約22%にとどまり、多くは部分寛解にとどまるという報告もあります。 すべての難治例で劇的な効果が得られるわけではありません。それでも問題ありません。小児のステロイド抵抗性FSGSでは抗B細胞抗体が有効な例が多いとされ、末期腎不全患者を減らす手段として積極的な試みが続いています。
関連)https://www.jpeds.or.jp/uploads/2026-04/20260416_GL139.pdf
参考:大阪大学によるリツキシマブの難治性ネフローゼ症候群への無作為化試験結果
参考:日本腎臓学会誌によるリツキシマブの難治性ネフローゼ症候群への有効性レビュー
日本腎臓学会「リツキシマブの難治性ネフローゼ症候群に対する有効性」(PDF)
FSGSは腎移植後にも再発するという事実は、移植前の十分な説明として欠かせません。 移植後5年で7.3%、10年で9.0%、15年で11%が再発するとされており、再発すると移植腎機能廃絶(グラフトロス)に至るリスクが高まります。 特に小児期発症・急激な進行例・移植前からのステロイド抵抗性は高リスク群です。
関連)https://medipress.jp/doctor_columns/366
移植後再発の病態解明も進んでいます。東邦大学の研究では、非遺伝性FSGS患者14人中11人が移植後再発を示し、抗ネフリン(nephrin)抗体が移植前〜再発時に著しく高値(中央値899 U/mL)であることが確認されました。 この抗ネフリン抗体が液性因子として蛋白尿を惹起すると考えられています。 抗体測定が将来的な再発予測ツールになり得ます。
関連)https://www.toho-u.ac.jp/press/2023_index/20240206-1339.html
移植後の再発は「まれな例外」ではありません。 移植前から患者に十分なインフォームド・コンセントを行い、移植後も定期的な尿蛋白・腎機能モニタリングを継続することが、移植腎長期生着のために不可欠です。ここが最重要ポイントです。
関連)https://medipress.jp/doctor_columns/366
参考:腎移植後FSGS再発の病因と抗ネフリン抗体の役割(東邦大学研究)
東邦大学プレスリリース「FSGSの腎移植後再発の病因における抗ネフリン抗体の関与」(2024年)
参考:腎移植後再発FSGSの治療戦略と再発率データ
MediPress「腎移植後の再発腎炎 4.巣状分節性糸球体硬化症」(2020年)
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