オンジェンティス(オピカポン)の薬価は、後発品なしでも年間薬剤費が1日1錠で約20万円を超えることがある。
オンジェンティス(一般名:オピカポン)は、大塚製薬が製造販売するパーキンソン病治療薬で、COMT(カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ)阻害薬に分類されます。2020年6月に日本で承認され、同年9月に薬価収載されました。
薬価収載時の算定方式は「類似薬効比較方式(Ⅰ)」が採用されています。比較薬として選定されたのは同じCOMT阻害薬であるコムタン錠(エンタカポン)です。オピカポンはエンタカポンに比べて1日1回投与という利便性が高い点が評価され、有用性加算(Ⅱ)として5%が上乗せされました。
現行の薬価はオンジェンティスカプセル25mgが1カプセルあたり約334.30円、50mgが約556.00円です。1日1回50mgを服用した場合、月額薬剤費(30日分)はおよそ16,680円になります。年換算すると約20万円を超える計算です。
これは患者が3割負担であれば月約5,000円の自己負担に相当します。
高額療養費制度の対象にはなりにくい水準ですが、多剤併用のパーキンソン病患者では他剤との合算で限度額に近づくケースもあります。処方時には患者の総薬剤費を把握しておくことが重要です。
参考:医薬品医療機器総合機構(PMDA)オンジェンティス審査報告書
https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20200624001/index.html
薬価は毎年4月に改定されます。オンジェンティスは後発品(ジェネリック)が存在しないため、現時点では薬価引き下げ圧力が比較的小さい状況です。
収載後の推移を見ると、市場実勢価格に基づく乖離率調整により、50mgは収載当初から数円単位の引き下げが続いています。引き下げ幅は年間1〜2%程度と、後発品収載後の先発品と比べると緩やかです。
意外なポイントがあります。
後発品のない先発品でも、「基礎的医薬品」の指定を受ければ薬価維持が可能ですが、オンジェンティスは新薬であるため、この対象外です。一方で「最低薬価」の仕組みにより、一定以下には下がらない保護も受けられます。
2024年度改定では、収載後5年以内の新薬への特例的な扱いは縮小される傾向にあります。医療従事者としては、薬価改定のたびに処方箋の金額計算が変わることを念頭に置き、電子カルテや薬局システムの薬価マスタ更新を毎年4月に必ず確認する習慣が大切です。
薬価マスタの更新漏れは算定ミスに直結します。
参考:厚生労働省 薬価基準収載品目一覧
https://www.mhlw.go.jp/topics/2023/04/tp20230401-01.html
COMT阻害薬として国内で使用できるのは、現在オピカポン(オンジェンティス)とエンタカポン(コムタン)の2剤です。薬価の比較は以下のとおりです。
| 薬剤名 | 規格 | 1錠薬価 | 1日用量 | 月薬剤費(目安) |
|---|---|---|---|---|
| オンジェンティス(オピカポン) | 50mg | 約556円 | 1回 | 約16,680円 |
| コムタン(エンタカポン) | 100mg | 約106円 | レボドパ服用ごと(最大10回) | 約28,000〜32,000円 |
1錠あたりの薬価はコムタンが大幅に低い一方、コムタンはレボドパ服用のたびに服用が必要なため、服用回数が多い患者では総額がオンジェンティスを上回ることがあります。
つまり、服用回数が多い患者にはオンジェンティスの方が経済的です。
アドヒアランスの観点からも1日1回のオピカポンは優位です。服薬管理が煩雑になりがちな高齢パーキンソン病患者では、服薬回数の削減が転倒や誤薬リスクの低減につながる可能性があります。
費用対効果だけで薬剤を選択するのは限界がありますが、患者の生活背景や他剤との併用状況を加味した上で、薬剤経済学的な視点を持つことは処方の質を高めます。
オンジェンティスはレボドパ含有製剤との「併用」が承認条件です。単剤処方は保険適用外となるため、処方箋を発行する際には必ずレボドパ製剤(メネシット、ネオドパゾールなど)が処方されていることを確認します。
これが原則です。
レセプト請求では「パーキンソン病」の病名が必須です。病名登録が「振戦麻痺」「パーキンソン症候群」のみになっていると、審査支払機関での査定対象になるケースがあります。電子カルテの傷病名マスタに「パーキンソン病(G20)」が正確に登録されているか確認しましょう。
また、用量についても注意が必要です。承認用量はオピカポンとして50mgを1日1回であり、25mgは用量漸増等のための設定です。長期に25mgのまま継続している場合、審査上で疑義が生じる可能性があります。
保険請求でよくあるミスは病名不備です。
加えて、薬剤師との連携も重要です。オンジェンティスは就寝前服用(レボドパ服用の1時間以上後)が推奨されており、服薬指導の内容が処方意図と一致しているかをチームで共有しておくことが、患者の治療効果を最大化します。
ここは独自視点のセクションです。薬価の表面的な数字だけでなく、「患者の実質負担」に影響する制度的な落とし穴を整理します。
まず、障害者総合支援法による「自立支援医療(精神通院)」はパーキンソン病には原則適用されません。精神疾患を主とした制度であるため、しばしば誤解されます。患者が「障害があるから1割負担になる」と思い込んでいるケースが臨床現場では散見されます。
意外ですね。
次に、「難病医療費助成制度」の活用です。パーキンソン病は指定難病(告示番号6)に該当するため、申請が承認されれば月の自己負担額に上限が設定されます。所得に応じた上限額は月額2,500〜30,000円で、薬剤費が高額な患者では大幅な負担軽減につながります。
しかし、申請手続きを患者が知らないまま高額な薬剤費を全額払い続けているケースが少なくありません。処方時に「難病の受給者証はお持ちですか?」と一言確認するだけで、患者の年間負担が数万円単位で変わることがあります。
これは知ってると得する情報です。
また、後期高齢者医療制度の被保険者では、2022年10月から一定所得以上の方の自己負担が2割に引き上げられました。それまで1割だった患者が2割になると、月の薬剤費負担がオンジェンティス単剤だけで約3,300円増加します。薬剤変更や減薬を検討する際の判断材料として、制度変更の影響も把握しておくべきです。
患者への説明責任も医療従事者にあります。
参考:難病情報センター パーキンソン病(指定難病6)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/314