脱水だけを警戒していると、腎機能が正常な患者でも乳酸アシドーシスを見落とすリスクがあります。
参考)「メトグルコ投与患者における乳酸アシドーシス発現状況の分析」…

乳酸アシドーシスとは、血中に乳酸が異常蓄積し血液が酸性に傾いた状態です。 メトグルコ(メトホルミン)は肝臓における糖新生を抑制する作用を持ちますが、この機序そのものが「乳酸→グルコース」の変換経路を遮断するため、血中乳酸が増加しやすくなります。 つまり乳酸アシドーシスは偶発的な副作用ではなく、薬理作用に起因した副作用です。
参考)https://healthcare-sumitomo-pharma.jp/product/metgluco/info/
通常、乳酸が増加すると肝臓での代謝も亢進してバランスが保たれます。 しかし肝機能低下・低酸素状態・腎機能障害といった条件が重なると代謝が追いつかなくなり、発症リスクが高まります。これが重要なポイントです。
参考)第26回 メトホルミンによる乳酸アシドーシスはなぜ起こるの?…
発症頻度はおよそ3〜10人/10万人・年とまれではありますが、致死率が高いことが最大の問題です。 まれだからこそ「まず起きない」と油断しがちですが、発症した場合の転帰の重大さを忘れてはなりません。
参考)https://healthcare-sumitomo-pharma.jp/product/metgluco/info/
乳酸アシドーシスの初期症状は、吐き気・嘔吐・腹痛・下痢・倦怠感・筋肉痛です。 これらはメトグルコ服用開始直後によく起こる消化器系の一般的な副作用と区別が非常に難しい状態です。つまり初期に見逃されやすいということです。
参考)第26回 メトホルミンによる乳酸アシドーシスはなぜ起こるの?…
区別のポイントは「症状の強さ」と「持続性」です。 一般的な消化器副作用は軽度で一過性であり、減量・休薬で改善します。一方、乳酸アシドーシスによる症状はより強く、持続する傾向があります。また複数の症状が同時期に出現する場合は特に要注意です。
参考)https://healthcare-sumitomo-pharma.jp/product/metgluco/info/
症状が進行すると、過呼吸・脱水・低血圧・低体温・昏睡へと移行します。 ここまで進むと救命は困難になるケースもあります。「おかしいな」と感じた早い段階での対処が生死を分けます。
参考)第26回 メトホルミンによる乳酸アシドーシスはなぜ起こるの?…
| 段階 | 主な症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 初期 | 吐き気・嘔吐・腹痛・下痢・筋肉痛・倦怠感 | 即休薬・受診指示 |
| 中期 | 過呼吸・脱水症状・全身倦怠 | 入院加療検討 |
| 重篤期 | 低血圧・低体温・意識障害・昏睡 | 集中治療・透析 |
国内の調査研究(153症例分析)によると、乳酸アシドーシスのリスク因子として最多は脱水で全体の64%を占めます。 シックデイや下痢・嘔吐・発熱による脱水が最も多いリスクということです。SGLT2阻害薬や利尿剤との併用患者も同様に脱水リスクが高まります。
参考)「メトグルコ投与患者における乳酸アシドーシス発現状況の分析」…
腎機能障害も重大なリスクです。 メトホルミンは腎排泄型薬剤であり、腎機能低下時には血中濃度が上昇して乳酸アシドーシスを起こしやすくなります。透析患者・中等度以上の腎機能障害(eGFR 45未満)への投与は禁忌です。高齢者は潜在的な腎機能低下があることを念頭に置く必要があります。
参考)メトグルコ – Welcome to 佐野内科ハ…
それ以外のリスク因子も見逃せません。
複数のリスク因子が重なるほど発症確率が高まります。患者背景を常に複合的に評価することが原則です。
ヨード造影剤を用いるCT・X線検査の際は、メトグルコの適切な休薬管理が不可欠です。 造影剤は腎機能を一時的に低下させる場合があり、これによりメトホルミンの排泄が遅れて血中濃度が急上昇するリスクがあります。
参考)メトグルコ – Welcome to 佐野内科ハ…
休薬ルールは決まっています。造影剤投与前にメトグルコを中止し、投与後48時間は再開しないことが必須です。 これが原則です。腎機能が正常であっても、造影後48時間は守るべきルールです。
参考)第26回 メトホルミンによる乳酸アシドーシスはなぜ起こるの?…
実臨床では検査後の再開確認が抜けやすい点に注意が必要です。入院患者の場合はカルテでの指示確認が容易ですが、外来患者では「検査後に自己判断で再開した」というケースも報告されています。 患者への事前説明と確認の徹底が、医療従事者の重要な役割です。
参考)メトグルコ錠による乳酸アシドーシスの初期症状を発見か?|リク…
参考:メトホルミンによる乳酸アシドーシスはなぜ起こるの?(株式会社グッドサイクルシステム) — 薬理作用に基づく発現機序と脱水・腎機能低下時の注意点を解説
乳酸アシドーシスは、適切な管理によって大部分を予防できます。 予防が可能だということです。そのためには、リスク因子の定期的な評価と患者教育の両輪が必要です。
腎機能チェックは定期的に行います。 eGFR 45未満では減量または中止を検討し、透析患者・中等度以上の腎機能障害には投与しません。高齢患者(75歳以上)は特に腎機能の変動に注意が必要です。UKPDS研究でメトホルミンは心血管イベント抑制効果も示されていることから、安易に中止せず適切な条件下で継続することも重要です。
参考)メトグルコ – Welcome to 佐野内科ハ…
患者へのシックデイ教育も欠かせません。 発熱・下痢・嘔吐・食欲不振で食事が十分に取れない日は「休薬する」ことを事前に具体的に説明しておきます。
初期症状が出た際の対応フローを患者・医療スタッフ双方が共有しておくことが、重大事例の発生を防ぐ最後の砦です。 吐き気・筋肉痛・倦怠感が重なって現れたら「すぐに休薬し、医師または薬剤師に連絡する」という行動を、患者が迷わず取れるよう指導しておきましょう。
参考)メトグルコ錠による乳酸アシドーシスの初期症状を発見か?|リク…
参考:メトグルコ錠を服用されている方へ(住友ファーマ 健康情報サイト) — 乳酸アシドーシスの予防方法・初期症状・シックデイ対応の詳細説明
参考:メトホルミンの適正使用に関するRecommendation(日本糖尿病協会) — 医療従事者向けのメトホルミン使用ガイドライン
【指定第2類医薬品】ブテナロックVαクリーム 18g