古典的ホジキンリンパ腫の治療と最新の標準レジメン選択

古典的ホジキンリンパ腫の治療は病期・リスク分類によって大きく異なります。ABVD療法からBV-AVD、免疫チェックポイント阻害薬まで、最新ガイドラインに基づく治療戦略と中間PET活用法を解説。あなたの臨床判断に直結する情報とは?

古典的ホジキンリンパ腫の治療と最新のレジメン選択

治療が成功した後こそ、患者が最も死に近づく時間が始まる。


この記事の3ポイント
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病期・リスク別に治療レジメンが明確に異なる

限局期予後良好群にはABVD×2コース+ISRT 20Gy、進行期にはBV-AVD×6コースが現行の標準治療。ガイドライン(2024年版)に沿ったリスク分類の正確な理解が治療成績を左右します。

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中間PET-CTで治療強度を適応的に変更できる

RATHL試験の結果、ABVD 2コース後にPET陰性であればブレオマイシンを省いたAVD療法への変更が可能。肺毒性を回避しながら有効性を維持する戦略が普及しています。

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治癒後の晩期毒性が長期死亡リスクの主因になる

治療終了から10〜15年後に二次がん・心血管疾患によるリスクがピークに達します。ホジキンリンパ腫治療後40年で二次がんの累積発症割合は約48.5%という報告があり、長期フォローアップ体制の構築が不可欠です。


古典的ホジキンリンパ腫の病期分類と治療前リスク評価の基本


古典的ホジキンリンパ腫(classical Hodgkin lymphoma:cHL)は、悪性リンパ腫全体の中で日本では約5%を占める比較的まれな疾患です。しかし、適切な治療を行えば高い治癒率が期待できる疾患群であり、治療前のリスク評価が予後に直結します。


cHLの病期分類には、現在もAnn Arbor分類(Ⅰ〜Ⅳ期)が用いられています。加えて、限局期(Ⅰ・Ⅱ期)ではGHSG、EORTC、NCCNなど複数の研究グループが独自の予後因子を設定しており、「予後良好群」と「予後不良群」に層別化したうえで治療強度を決定します。つまり同じⅡ期でも、使う予後因子の枠組みによってグループ分けが変わる点は注意が必要です。


代表的なリスク因子としては、縦隔病変(胸郭横径比≧1/3)、節外病変、血沈亢進(A群≧50、B群≧30)、3カ所以上のリンパ節領域への関与などが挙げられます。これらのリスク因子をいくつ持つかで、初回治療の化学療法コース数と照射線量が決まってきます。リスク因子なしが基本です。


進行期(Ⅲ・Ⅳ期)では、国際予後スコア(IPS:International Prognostic Score)が使用されます。Hasencleverらが4,695例の大規模解析から抽出した7因子(アルブミン<4g/dL、ヘモグロビン<10.5g/dL、男性、年齢≥45歳、病期Ⅳ、白血球≥15,000/mm³、リンパ球数<600/mm³または総白血球の8%未満)で構成され、因子数が増えるほど5年無増悪期間が低下します。IPSスコア0の5年無増悪率84%に対し、5以上では42%と大きな差があります。


なお、cHL全体の初発年齢分布は二峰性を示し、20歳代と50〜60歳代にピークがあります。若年者への治療選択では晩期毒性の最小化も重要課題となります。これは後のセクションで詳しく説明します。


日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)- ホジキンリンパ腫の病期分類・予後因子・治療アルゴリズムの詳細


古典的ホジキンリンパ腫の限局期治療:ABVD療法とISRTの最適な組み合わせ

限局期cHLの標準治療は、化学療法と放射線療法の併用(Combined Modality Therapy:CMT)です。現在推奨される放射線照射法は、照射野をより腫瘍部位に絞ったISRT(Involved Site Radiation Therapy)であり、かつて行われた拡大照射野(EFRT、マントル照射など)は単独・併用ともに推奨されません。


予後良好群(リスク因子なし)では、GHSGのHD10試験に基づき、ABVD療法2コース+ISRT 20Gyが標準治療として確立されています。HD10試験では2×2デザインで化学療法コース数(2コース vs 4コース)と照射線量(20Gy vs 30Gy)を比較し、ABVD 2コース+ISRT 20Gyが4コース+30Gyと同等の治療成績を示し、かつ急性毒性が最も少ないことが証明されました。これは使えそうです。


予後不良群に対しては、ABVD療法4コース+ISRT 30Gyが推奨されます。


重要な点として、中間PET-CTの活用があります。EORTC/LYSA/FILによるH10試験やGHSGのHD16試験では、ABVD 2コース後の中間PET陰性例でも放射線療法を省略すると5年PFSが有意に低下することが示されました。つまり、中間PET陰性でもISRTは省略できないというのが現在のエビデンスです。


一方で、放射線療法に関連する晩期毒性も無視できません。心血管イベントや二次がんは治療終了後10〜40年にわたり経時的に増加することが知られています。オランダで1965〜2000年に治療を受けたcHL 3,905例の観察研究では、治療後40年における二次がんの累積発症割合は48.5%に達しました。晩期毒性リスクは原則として認識しておく必要があります。


Bulky病変を認めない場合は、放射線療法を省略したABVD療法6コース単独も選択肢の一つです。RATHL試験のデータを踏まえると、ABVD 2コース後のPET陰性例では3〜6コース目をAVD療法(ブレオマイシン省略)に変更することも可能です。


ケアネット:ホジキンリンパ腫、中間PET-CT結果による治療変更の有効性(RATHL試験解説)


古典的ホジキンリンパ腫の進行期治療:BV-AVD療法とABVDの使い分け

進行期cHL(Ⅲ・Ⅳ期)の初回治療は、この10年で大きく変化しました。長らくABVD療法(ドキソルビシン・ブレオマイシン・ビンブラスチン・ダカルバジン)6〜8コースが標準でしたが、現在はCD30を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるブレンツキシマブ ベドチン(BV)を併用したBV-AVD療法(6コース)が新たな標準治療として確立されています。


BV-AVD対ABVDの比較第3相試験(ECHELON-1試験)では、BV-AVD群がABVD群に対して修正無増悪生存期間において統計学的に有意な改善を示しました。この結果を受け、2024年版の日本血液学会ガイドラインでも進行期cHLに対するBV-AVD×6コースが推奨レジメンとして明記されています。進行期ではBV-AVD×6コースが標準治療というのが原則です。


ただし、高齢者cHLでは末梢神経障害などのBVに関連する有害事象の懸念から、忍容性を考慮してABVD×6コースも依然として選択肢となります。60歳以上のcHLに対するABVD療法の後方視的解析では、約8割でCRを確認できた一方、死亡例を含むGrade 3以上の肺毒性を約2割に認めており、特にブレオマイシン(BLM)の使用には十分な注意が必要です。厳しいところですね。


中間PET-CTを用いた層別化治療(response-adapted therapy)は進行期でも有望な戦略です。RATHL試験では、ABVD 2コース後のPET陰性例においてBLMを省いたAVD療法への変更が非劣性を示し、PET陰性例での肺毒性発生率は有意に低下しました。実臨床においても同試験と同等の治療成績が報告されており(2025年6月公表データ)、PET-CTを活用した治療最適化が進んでいます。


化学療法終了時の評価としては、PET-CTでのCMR(complete metabolic response)達成が経過観察継続の条件となります。CTでCR・PRでもPET-CTでCMRが得られない場合はISRTの追加が考慮されるため、化学療法終了時の評価にはPET-CTが必須です。


ケアネット アカデミア:古典的ホジキンリンパ腫のPET適応治療、実臨床でもRATHL試験と同等の成績(2025年)


古典的ホジキンリンパ腫の再発・難治例への治療:免疫チェックポイント阻害薬と自家移植

初回治療で奏効が得られなかった、または再発した再発・難治性cHL(R/R cHL)に対しては、救援化学療法が行われます。代表的な救援レジメンとしてICE療法、GDP療法、DHAP療法、ESHAP療法、CHASE療法などが用いられますが、その目標は自家造血幹細胞移植(自家ASCT)への橋渡しにあります。65歳以下で臓器機能が保たれており、救援療法が奏効した場合は自家ASCTが推奨されます。


近年、R/R cHLに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の高い有効性が注目されています。抗PD-1抗体ニボルマブとペムブロリズマブはいずれも保険適用を有しており、特にcHLではPD-L1が高発現しているためICIへの反応性が高いことが知られています。ニボルマブの臨床試験では再発・難治性cHL患者において87%という高い奏効率が報告されています。


ペムブロリズマブのKEYNOTE-087試験の5年追跡データでは、治療関連有害事象はすべてのグレードで72.9%に発現したものの、グレード3または4の重篤な有害事象は12.9%にとどまり、治療関連死亡は発生しませんでした。免疫療法が選択肢として確立されたということですね。


また、ペムブロリズマブとGVD(ゲムシタビン、ビノレルビン、ドキソルビシン)の併用療法(P-GVD)に関するデータでは、P-GVD後の完全奏効率は95%、客観的奏効率は100%という高い成績が報告され、95%の患者が高用量化学療法・自家造血細胞移植へと進むことができました。これは使えそうです。


自家ASCT後に再発した症例に対しては、BV単剤療法や、ICIをはじめとする新規薬剤の高い有効性が報告されています。同種造血幹細胞移植も治療選択肢となり得ますが、その適応には移植関連毒性などを慎重に判断する必要があります。


難病情報:KEYNOTE-087試験5年追跡調査 - 再発・難治性古典的ホジキンリンパ腫へのペムブロリズマブ長期成績


古典的ホジキンリンパ腫の治療後に見落とされがちな晩期毒性と長期フォローアップ戦略

ここが、多くの医療従事者が見落としがちな盲点です。cHLは治癒率が高い疾患である一方、治療そのものがもたらす晩期毒性が長期死亡リスクの主因となります。治療後最初の10年間はcHL自体が主な死因ですが、10〜15年でそのリスクはピークを超え、二次悪性腫瘍と心血管疾患によるリスクが主役に代わります。


具体的には、放射線療法に関連した晩期毒性として、乳がん・肺がんなどの二次がんと、心筋梗塞や弁膜症などの心血管疾患が問題になります。二次がんの罹患割合は一般人口の約4〜6倍に達するとされており、特に縦隔照射を受けた若年女性では乳がんリスクが高まることが知られています。これは見逃せません。


また、ABVD療法のブレオマイシン成分は肺毒性(間質性肺炎・肺線維症)を引き起こす可能性があります。高齢者や喫煙者ではリスクが特に高く、Grade 3以上の肺毒性が約2割に認められるとのデータもあります。抗がん剤の晩期毒性にも注意が必要です。


さらに、甲状腺機能低下症(頸部照射後)、不妊(特に男性、アルキル化剤使用後)、感染症リスクの増大も頻度の高い晩期合併症として報告されています。


長期フォローアップにおいては、主治医が変わった後でも継続的な定期検査(心エコー、マンモグラフィ、甲状腺機能検査など)と、患者への晩期毒性に関する十分な説明が求められます。治療後40年で二次がん累積発症割合が48.5%という数字は、患者のQOLを守るためのフォローアップ計画を立てる際に常に念頭に置くべき情報です。つまり、治癒後の管理も治療の一部です。


晩期毒性の軽減という観点からも、近年の治療最適化(中間PET陰性例でのBLM省略、照射野の縮小)は臨床的に大きな意義があります。治療の有効性を維持しながら毒性を下げる戦略が問われています。


ケアネット アカデミア:ホジキンリンパ腫治療後の死因分析 - 二次がん・心血管疾患が10〜15年でピーク(2025年)






日本臨牀 月刊誌2021年3月号 「リンパ腫の診療 update」日本臨床 / 医学書 / 悪性リンパ腫 T細胞リンパ腫 古典的ホジキンリンパ腫 濾胞性リンパ腫