コレラは毒素産生性のコレラ菌(Vibrio cholerae O1およびO139)によって引き起こされる急性細菌性腸感染症です。日本では感染症法で3類感染症に分類されており、コレラ菌に汚染された水や食物の経口摂取により感染します。
コレラの潜伏期間は数時間から5日間で、感染後に無症状期間を経て症状が出現します。重要な点として、大半の感染者では症状がまったく現れないことが多いですが、症状が発現する場合の特徴は以下の通りです。
特筆すべき点として、コレラでは通常、発熱はみられません。また、重症例では「コレラ顔貌」と呼ばれる特徴的な顔貌や、「洗濯婦の手(washwoman's hand)」、「スキン・テンティング(skin tenting)」といった特徴的な所見が認められます。
脱水症状を放置すると、水分と塩分の喪失によって腎不全やショック状態、昏睡が生じ、死に至ることもあります。しかし、適切な治療を受けた患者では、症状は通常3~6日で治まります。
コレラの確定診断には、患者便からコレラ毒素を産生するO1またはO139血清型のコレラ菌を検出することが必要です。診断の流れと初期対応について詳細に説明します。
検査による診断:
臨床診断:
コレラの典型的な臨床像は、突然始まる無痛性の水様性下痢と嘔吐です。特に「米のとぎ汁様」と表現される特徴的な白色ないし灰白色の水様便が認められる場合は、コレラを強く疑います。
初期対応の重要ポイント:
初期対応の原則は「失われた水分と塩分を速やかに補う」ことで、これが命を救うことにつながります。治療開始のタイミングが予後を左右する重要な因子となります。
コレラ治療の最も重要な柱は、失われた水分と電解質の迅速な補充です。患者の脱水状態の重症度に応じて、経口補水療法または静脈内輸液療法、あるいはその併用が選択されます。
1. 経口補水療法(ORT):
軽度から中等度の脱水症例では、経口補水液(Oral Rehydration Solution: ORS)が第一選択となります。WHOが推奨するORSの組成は以下の通りです。
これらを1リットルの水に溶かして使用します。
経口補水療法の利点は、特に開発途上国の現場では以下の点が挙げられます。
2. 静脈内輸液療法:
以下の場合には静脈内輸液が必要です。
静脈内輸液の選択肢
輸液管理のポイント:
重度の脱水状態にある患者に対する輸液スケジュールは、迅速な初期補充と継続的な維持補充が重要です。一般的なアプローチとして。
患者の状態を頻回に評価し、輸液速度を調整することが重要です。評価ポイントには以下が含まれます。
3. 電解質異常の管理:
コレラでは特に低カリウム血症が問題となり、筋力低下や不整脈などの症状を引き起こ