ヒアルロン酸を打った日のレセプト、外来管理加算も一緒に請求すると査定されます。
関節腔内注射とは、変形性膝関節症や肩関節周囲炎など、関節に痛みを抱える患者に対して、直接関節内に薬剤を注射する手技です。診療報酬点数表では「G010 関節腔内注射」として分類され、1関節1日につき80点が算定できます。
重要なのは「関節ごと・左右それぞれ」に算定できる点です。両膝に注射をした場合は右膝80点+左膝80点=160点、右手首と左肩に注射をした場合は80点×2=160点という形で算定します。これが原則です。
ただし、レセプト上では部位が明確にわかるようにコメントを付けることが求められます。たとえば「右膝関節腔内注射」「左肩関節腔内注射」のように、どの関節に実施したかを記録しておくことが返戻防止の基本になります。コメントなしでの複数算定は疑義照会の対象になりやすいため、注意が必要です。
また、算定する区分は「(33) その他注射」です。ここで多い間違いが、関節腔内注射の手技料を「(31) 皮下・筋肉内注射」や「(40) 処置」に誤って計上してしまうケースです。
| 算定区分 | コード | 点数 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 注射(関節腔内注射) | G010 | 80点 | 関節1か所・1日につき |
| 処置(関節穿刺) | J116 | 120点 | 水腫・血腫などの病名が必要 |
| 検査(関節穿刺) | D405 | 100点 | 検体採取が目的の場合 |
上の3つのうち、同一関節に同日に行った場合はいずれか1項目のみしか算定できません。これが原則です。
なお、どの項目で算定したとしても、使用した薬剤料はすべて別途算定できます。薬剤料を算定し忘れるミスも実務では多く見受けられるため、手技料と薬剤料はセットで確認する習慣をつけましょう。
参考:関節腔内注射の算定ルールを体系的に解説しているページです。G010の通知内容も確認できます。
関節腔内注射でもっとも使用頻度が高い薬剤が、ヒアルロン酸製剤(アルツ・スベニール・サイビクスなど)です。しかし、これらの薬剤は保険適応になる病名が非常に限られており、病名の記載ミスがそのまま査定につながります。
アルツディスポ・スベニールディスポで保険算定できる傷病名は以下の3つのみです。
つまり、股関節や手関節・足関節などへのヒアルロン酸注射は保険適用外です。これは意外と知られていない盲点で、「関節なら保険でいける」と思い込んで算定してしまうと査定対象になります。
さらに細かい話をすると、薬剤によって適応疾患が異なります。サイビクスディスポ(HA製剤)は変形性膝関節症のみが適応で、肩関節周囲炎は適応外です。変形性肩関節症とも違う概念であるため、ここも誤りやすいポイントです。
| 薬剤名 | 適応病名 | 投与ルール |
|---|---|---|
| アルツディスポ・スベニールディスポ | 変形性膝関節症・肩関節周囲炎・関節リウマチにおける膝関節痛 | 週1回×連続5回まで |
| サイビクスディスポ | 変形性膝関節症のみ | 週1回×連続3回、効果6か月持続 |
サイビクスは「6か月間効果が持続する」とされているため、投与後6か月以内に他のヒアルロン酸製剤を使用した場合、査定対象になる可能性があります。これは実務上非常に見落とされがちなルールです。
また、変形性膝関節症や肩関節周囲炎には年齢的な条件も存在します。基本的に35歳未満の患者に対してこれらの病名を付けることは、医学的根拠が問われやすい状況です。若年患者への膝注射は「スポーツによる二次性変形性膝関節症」など、病名を正確に記載することが必要です。
参考:ヒアルロン酸製剤の適応病名と注射回数の制限について整理されたコラムです。
整形外科の診療では、「関節の水を抜いて、その後で薬を注射する」という処置が日常的に行われています。このとき、G010(注射:関節腔内注射80点)とJ116(処置:関節穿刺120点)を同じ関節に同日算定することはできません。主たるもの1項目のみの算定が原則です。
どちらで算定するかを悩む場面は実務でよくあります。単純に点数だけ比べると「処置の関節穿刺120点の方が高い」と思いがちですが、話はそう簡単ではありません。
ここが大事なポイントです。処置(J116)で算定した場合、外来管理加算(52点)は算定できなくなります。外来管理加算は再診料に付加する加算で、52点のプラスが見込めます。
つまり点数で比較すると次のようになります。
他に処置やリハビリテーションを同日に行っていなければ、注射の区分で算定した方が合計点数は高くなるケースがあります。これは使えそうです。
ただし、水を抜く行為(処置:関節穿刺)を実際に行っていた場合は、それを算定しなくても「処置を行った」という事実があるため、外来管理加算は算定できません。この点が非常に重要なルールです。
実際に関節穿刺(処置)を行っていたら、外来管理加算は算定不可が原則です。算定を0にしたからといって外来管理加算に切り替えることはできないため、注意が必要です。
また、水腫や血腫を処置として抜いた場合(J116)には、傷病名として「水腫」「血腫」「関節水腫」などの病名が必要になります。この病名がない状態で関節穿刺処置を算定すると査定の原因になります。関節穿刺処置が査定された場合の原因の多くが、この病名不備によるものです。
参考:関節穿刺と関節腔内注射の算定判断、外来管理加算との関係について丁寧に解説されています。
Q&Aより「関節腔内注射時の麻酔は算定できない?」|佐々木経営グループ
関節腔内注射や関節穿刺を行う際に、キシロカイン(リドカイン)などの局所麻酔剤を前処置として使用することがあります。この場合、「局所麻酔の手技料(麻酔区分)を別に算定できるか?」という疑問が現場でよく生じます。
結論から言うと、局所麻酔の手技料は算定できません。
診療報酬点数表の麻酔通則および通知には、次のように記されています。
「検査、画像診断、処置又は手術に当たって、麻酔が前処置と局所麻酔のみによって行われる場合には、麻酔の手技料は検査料、画像診断料、処置料又は手術料に含まれ、算定できない。ただし、薬剤を使用した場合は、薬剤料の規定に基づき算定できる。」
つまり、関節腔内注射や関節穿刺の前に局所麻酔を行っても、麻酔手技料はその処置・注射料に「含まれている」という解釈になります。薬剤料は算定できます。
これが原則です。実務では「局所麻酔+関節穿刺+関節腔内注射の3項目すべてを算定した」という誤請求がたびたび見受けられます。このケースは支払基金の審査において査定対象となりやすく、実際に「局所麻酔と関節穿刺が査定された」という事例も報告されています。
正しい算定の例を示すと次のようになります。
薬剤料だけは算定できますが、手技料を別途立てることはできません。これだけ覚えておけばOKです。
なお、使用するキシロカインの量は「使用したmL量×薬価」で計算します。アンプル製剤(A)は全量使用しなくても1Aで算定できますが、バイアル製剤(V)は使用した量のみの算定になります。薬剤の形態によって算定単位が異なるため、ここも見落とせないポイントです。
関節腔内注射に関連するレセプトで、病名の付け方そのものが問題になるケースが少なくありません。審査側から「いわゆるレセプト病名」と見なされると、クリニックの印象が悪化するだけでなく、返還金請求や個別指導のリスクにも直結します。ここでは実務でよく問題になる3パターンを整理します。
① 病名の開始日が注射実施日と同じ
たとえば、11月1日にレントゲンを撮って半月板損傷の病名をつけ、同月10日にアルツを注射したので変形性膝関節症を11月10日付で追加した場合を考えます。レントゲン撮影の時点で変形の有無はすでに確認できているはずです。注射をするタイミングに合わせて病名を後付けしたと見られると、保険のための病名(いわゆる「レセプト病名」)として審査機関の印象が悪化します。変形が確認できた日に病名を遡って付ける対応が適切です。
② 若年患者への変形性膝関節症
変形性膝関節症や肩関節周囲炎は、基本的に35歳以上の患者を対象とした疾患概念です。若い患者さんに「とりあえず注射をしたので」と変形性膝関節症をつけると、年齢と病名の不整合として査定・返戻の対象になります。スポーツ障害や外傷などが原因の場合は「二次性変形性膝関節症」と記載することが求められます。
③ 病名はあるが部位の記載が曖昧
「変形性関節症」という病名のみで、どの関節かが不明なまま複数箇所の関節腔内注射を算定するケースがあります。審査機関は「どの関節への注射か」を病名や摘要欄のコメントで判断します。部位を明示しない記載は疑義照会の原因になりやすく、両膝など複数の関節を算定する場合は特に部位のコメント記載が重要です。
以上の3点は日々のレセプト点検で意識するだけで、査定リスクを大きく減らすことができます。厳しいところですが、日々の病名管理がレセプトの品質を左右します。
定期的にレセプト点検を行い、病名日付・年齢・部位記載の3点をチェックする習慣をつけることが、中長期的な医療機関の信頼性と収益保護につながります。専用のレセプト点検システムやコンサルタントによる定期チェックを導入することで、見落としを体系的に防ぐ仕組みを作るのが効果的です。
参考:いわゆるレセプト病名の問題点と、返還金・個別指導につながるリスクについて詳しく解説されています。
査定・返戻の対策しよう!【レセプト病名編】|ひのでクリニック