イルミア薬価と高額療養費の押さえるべき基礎知識

イルミア(チルドラキズマブ)の薬価や投与コスト、他の生物学的製剤との比較、高額療養費制度の活用法まで医療従事者が知っておくべき情報を詳しく解説。適正使用のポイントとは?

イルミアの薬価と適正使用で医療従事者が知るべき全知識

イルミアは1本486,197円だが、適切に制度を使えば患者負担は月44,400円に抑えられる。


この記事のポイント3選
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現行薬価は1筒486,197円

2020年8月の収載時は487,413円だったが、その後の薬価改定を経て現在は486,197円。維持期は年4本の投与で年間薬剤費は約194万円。

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自己注射不可・指定施設のみ使用可能

イルミアは現時点で自己注射が認められておらず、日本皮膚科学会が承認した全国600施設以上の指定施設でのみ投与可能。処方できる施設には明確な要件がある。

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適応は「尋常性乾癬」のみ

同じIL-23p19阻害薬のスキリージ・トレムフィアと異なり、イルミアの適応症は尋常性乾癬に限定。関節症性乾癬・膿疱性乾癬などへの適応拡大は現時点では未達。


イルミアの薬価・収載の経緯と現在の価格

イルミア(一般名:チルドラキズマブ)は、サンファーマ株式会社が製造販売する、IL-23のp19サブユニットを特異的に阻害するヒト化モノクローナル抗体製剤です。2020年6月29日に薬事承認を受け、同年8月26日に薬価収載・発売されました。


収載時の薬価は1筒487,413円(1日薬価:5,803円)で算定されています。その後、定例の薬価改定を経て、現在の薬価は1筒486,197円となっています。算定方式については類似薬効比較方式(I)が採用されており、比較薬として同じIL-23阻害薬であるスキリージ皮下注(リサンキズマブ)が参照されました。


1日薬価を約5,800円と捉えると、年間に換算すると薬剤費だけで約200万円超になる計算です。これは多くの患者にとって、制度を利用しなければとても払えない水準です。意外ですね。しかし実際には、維持期の投与は12週ごと(年4本)であるため、年間の薬剤費は概算で486,197円×4本=約194万円となります。


治療1年目に限っては、初回・4週後・以降12週間隔で年5本を投与するため、初年度の薬剤費の概算は486,197円×5本=約243万円になる点も押さえておく必要があります。これが原則です。


参考:イルミアの薬価・添付文書情報は「しろぼんねっと」で最新情報を確認できます。


しろぼんねっと – イルミア皮下注100mgシリンジの薬価・添付文書


イルミア薬価の算定根拠と他の生物学的製剤との比較

乾癬に使用される生物学的製剤は現在、作用機序別に大きく4つのグループに分類されます。TNFα阻害薬(レミケード・ヒュミラ等)、IL-12/23阻害薬(ステラーラ)、IL-17阻害薬(コセンティクス・トルツ・ルミセフ・ビンゼレックス)、そしてIL-23p19サブユニット阻害薬(スキリージ・トレムフィア・イルミア)です。


同じIL-23p19阻害薬のなかで各製品の薬価と年間コストを比べると、下表のような傾向が見えてきます。
































製品名 一般名 薬価(1筒) 維持期投与間隔 維持期・年間本数目安
スキリージ リサンキズマブ 約475,700円(1回医療費総額) 12週 年4回
トレムフィア グセルクマブ 325,040円/筒 8週 年約6〜7回
イルミア チルドラキズマブ 486,197円/筒 12週 年4回(維持期)


イルミアは1筒の薬価がトレムフィアよりも高いものの、投与間隔が12週と長く、維持期の通院回数が年4回に抑えられるため、患者の通院負担が軽減されるという利点があります。これは使えそうです。


一方で、スキリージも同様に12週毎の投与が可能です。臨床現場での製品選択においては、薬価だけでなく、適応疾患の範囲(後述)・副作用プロファイル・患者の状態を総合的に考慮することが重要です。


参考:乾癬治療に用いられる各生物学的製剤の作用機序・投与間隔の詳細は以下が参考になります。


新薬情報オンライン – イルミア皮下注(チルドラキズマブ)の作用機序【乾癬】


イルミア投与における患者の実質負担額と高額療養費制度の活用

薬価が486,197円と聞くと、患者が実際にこの全額を自己負担すると誤解されることがあります。それは違います。保険診療が前提であり、さらに高額療養費制度を活用することで、患者の実際の窓口負担は大幅に軽減されます。


3割負担の患者がイルミアを1本使用した場合、薬剤費の自己負担は単純計算で約145,800円です。しかしこれだけではありません。高額療養費制度の自己負担限度額の計算によって、実際の窓口負担は所得区分によって以下のように抑えられます。



  • 🔶 区分ア(年収約1,160万円以上):月252,600円+(医療費−842,000円)×1%

  • 🔶 区分イ(年収約770〜1,160万円):月167,400円+(医療費−558,000円)×1%

  • 🔶 区分ウ(年収約370〜770万円):月80,100円+(医療費−267,000円)×1%

  • 🔶 区分エ(年収約370万円以下):月57,600円

  • 🔶 住民税非課税(区分オ):月35,400円


さらに、過去12か月以内に高額療養費の適用が3回以上ある場合は「多数回該当」となり、4回目から自己負担限度額が下がります。区分ウの場合は多数回該当後の上限が44,400円となります。これが条件です。


つまり年収370〜770万円の患者が多数回該当になると、月の薬剤負担が44,400円まで抑えられる可能性があります。月4万円台というのは、日本人の平均的なサラリーマン像で言えば、ランチ代を毎日節約すれば捻出できなくはない水準です。それでも決して安くはありませんが、制度を知らずに486,197円全額を想定するのとは大きな差があります。


医療従事者として患者へのインフォームドコンセントの際には、事前に「限度額適用認定証」の取得を促すことが非常に重要です。受診前に加入医療保険へ申請すれば、窓口での支払い自体が最初から限度額内に収まるため、後日の払い戻し手続きも不要になります。マイナ保険証を利用している患者は認定証の申請が不要な点も、説明の際に補足しておくとよいでしょう。


参考:乾癬ネット(高額療養費制度について)
乾癬ネット – 高額療養費制度について(2024年12月時点の医療制度に基づく解説)


イルミアの適応・投与要件と他製剤との差異化ポイント

イルミアが承認されている効能・効果は、「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬」のみです。これは同じIL-23p19阻害薬であるスキリージやトレムフィアと比較したときの最も大きな制約です。


スキリージ(リサンキズマブ)は、尋常性乾癬に加えて乾癬性関節炎・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症にも適応があります。トレムフィア(グセルクマブ)は尋常性乾癬・乾癬性関節炎・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症・掌蹠膿疱症に適応が広がっており、さらに近年は潰瘍性大腸炎クローン病への適応追加も進んでいます。意外ですね。


イルミアを投与できる患者の要件は添付文書にも明示されており、①光線療法を含む既存の全身療法(生物製剤を除く)で十分な効果が得られず皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者、または②難治性の皮疹を有する患者のいずれかを満たすことが条件です。


また、イルミアは現時点で自己注射が認められていません。つまり患者は毎回医療機関への通院が必要となります。スキリージなど自己注射が可能な製剤と患者の生活スタイルを照らし合わせて選択することも、臨床上のポイントとなります。


投与できる施設については、日本皮膚科学会が承認した指定施設に限られており、全国600施設以上が登録されています。施設要件としては、皮膚科専門医が常勤していること、生物学的製剤の投与経験があることまたは日本皮膚科学会主催の安全対策講習会を受講していることなどが求められます。これは必須です。


参考:日本皮膚科学会 乾癬における生物学的製剤等使用施設の要件(2024年8月改定版)
日本皮膚科学会 – 医師および医療施設の条件(2024年8月21日版)PDF


イルミアの副作用・使用上の注意と薬価管理上の独自視点

イルミアの副作用で医療従事者が特に注意すべき点は、免疫抑制に伴う感染症リスクです。重篤な感染症の発現率は0.2%と報告されており、添付文書の「警告」欄にも明記されています。厳しいところですね。


その他の副作用として、1〜5%未満に上気道感染(上咽頭炎・喉頭蓋炎を含む)とALT増加が報告されています。治療開始前には結核のスクリーニング(胸部X線検査+IGRAまたはツベルクリン反応検査)が必須であり、治療中も定期的なモニタリングが求められます。これが基本です。


また見逃されがちな点として、「本剤の臨床試験において悪性腫瘍の発現が報告されている(因果関係は不明確)」という記載があります。1,083例・52週または64週のデータでは、悪性腫瘍の発現率は100人年あたり1.70と報告されており、プラセボ群(0.91)より高い傾向が見られました。もちろん因果関係は明確ではありませんが、長期的なフォローアップの観点から患者説明に含めることが望ましい情報です。


さらに、臨床試験では400例のうち6.5%(26例)に抗薬物抗体(ADA)が検出されています。ADA陽性例では血中濃度が低下する傾向がある一方で、有効性への影響は現時点では不明確です。治療効果が減弱してきた場合にはADAの関与も念頭に置いた評価が必要になります。


薬価管理の観点では、イルミアが「特定生物学的製剤」として区分されている点も重要です。冷蔵保管(2〜8℃)が必要であり、投与30分前に冷蔵庫から取り出し室温に戻す手順が添付文書に定められています。保管・管理コストも含めた運用設計は、採用を検討する施設にとって欠かせない視点です。これは使えそうです。


適正使用の確保と患者QOLの向上を両立させるために、薬価・制度・副作用管理・投与要件の4軸を医療チームで共有しておくことが、イルミア治療の質を高める近道です。


参考:サンファーマ イルミア適正使用ガイド(PDF)
サンファーマ – イルミア®皮下注 適正使用ガイド(乾癬治療における感染症管理・投与要件など)