インスリン導入を早めるほど、膵臓のβ細胞機能が回復しやすくなります。
インスリン製剤は、作用発現時間・ピーク・持続時間の3つの特性で分類されます。 日本糖尿病学会のガイドラインでは、超速効型・速効型・中間型・持効型溶解・混合型・配合溶解の6種類に整理されています。 jds.or(https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/06.pdf)
それぞれの特性を正確に把握しておくことが、患者への適切な指導の第一歩です。
| 種類 | 作用発現 | ピーク | 持続時間 | 注射タイミング |
|---|---|---|---|---|
| 超速効型 | 10〜20分 | 30分〜1時間半 | 3〜5時間 | 食直前 |
| 速効型 | 30分前後 | 1〜3時間 | 5〜8時間 | 食前30分 |
| 中間型 | 1〜3時間 | 4〜12時間 | 18〜24時間 | 朝食前など |
| 持効型溶解 | 1〜2時間 | ほぼなし | 24時間以上 | 毎日決まった時間 |
| 混合型 | 10〜30分 | — | 18〜24時間 | 食前 |
| 配合溶解 | 10〜20分 | — | 24時間以上 | 食前 |
つまり、製剤ごとに注射タイミングの意味がまったく異なります。 kaigo.homes.co(https://kaigo.homes.co.jp/manual/healthcare/sick/diabetes/Insulin/)
速効型は食前30分という縛りが厳しく、患者が「打ち忘れた」「食事が遅れた」といった状況に弱い製剤です。 一方、超速効型は食直前でよいため外来管理での利便性が高く、現在の自己注射の主流は超速効型に移行しています。 参考リンク(超速効型・速効型の作用時間比較): kobe-kishida-clinic(https://kobe-kishida-clinic.com/about-diabetes-internal-medicine/insulin-therapy/insulin-types/insulin-types-comparison-guide/)
【インスリン製剤の種類一覧】超速効型から持効型まで作用時間と使い分けを解説(神戸・岸田クリニック)
インスリンの投与方法は、製剤の選択と並んで重要な判断です。
これは手軽さが特徴です。
一方、強化インスリン療法(MDI:Multiple Daily Injection)は、持効型を1日1〜2回+超速効型を毎食前に投与する方法で、1日合計4回の注射が基本となります。 血糖の基礎分泌と追加分泌の両方を外部から再現するため、1型糖尿病や膵島機能が著しく低下した2型糖尿病に適しています。 asklepios-clinic(https://asklepios-clinic.jp/blog/2019/11/29/bot-therapy/)
入院患者には原則MDIが選択され、HbA1cをおよそ7%前後まで達成できる実績が示されています。 yodosha.co(https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758116459/111.html)
参考リンク(BOTと強化インスリン療法の比較・臨床データ)。
「どの患者にインスリンを始めるか」は、医療従事者が日常的に直面する問いです。
インスリン療法の絶対的適応は、インスリン依存状態(主に1型糖尿病)、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)・高浸透圧高血糖状態(HHS)などの高血糖性昏睡、重症肝障害・腎障害の合併、重症感染症・中等度以上の外科手術(全身麻酔施行例など)、および糖尿病合併妊婦です。 dm-town(https://www.dm-town.com/injection/insulin1/insulin1_005/)
絶対適応では迷わず導入が原則です。
相対的適応としては、空腹時血糖250mg/dL以上・随時血糖350mg/dL以上の著明な高血糖、または経口血糖降下薬のみでは血糖コントロールが得られない場合が挙げられます。 jyonai-hp.sankenkai.or(https://jyonai-hp.sankenkai.or.jp/general-medicine/diabetes-treatment-insulin-therapy/)
インスリン療法の絶対的・相対的適応について詳しくまとまった参考リンク。
インスリン療法を早く始めるほど膵臓にとって有利になる、という視点が近年強調されています。
高血糖が慢性的に続く状態(糖毒性)は、膵β細胞をさらに疲弊させます。 この「糖毒性」を解除するためにインスリンを早期に導入することで、枯渇していた内因性インスリン分泌が回復し、インスリン作用も改善することが確認されています。 jams.med.or(https://jams.med.or.jp/event/doc/116051.pdf)
これは意外に重要なポイントです。
実際、インスリン療法を一時的に行うことで膵β細胞の負荷が軽減し、その後インスリンを離脱(卒業)できるケースも存在します。 「インスリン=一生続ける治療」ではなく、血糖コントロール回復後に内服管理に戻れる可能性があることを患者に伝えると、心理的な障壁を下げる効果があります。 hosp.u-fukui.ac(https://www.hosp.u-fukui.ac.jp/kango/wp-content/uploads/kpamp07_insulin2.pdf)
2型糖尿病でのインスリン早期開始の根拠に関する参考リンク。
インスリン療法は早期に開始してこそ効果あり(糖尿病ネットワーク)
高齢の2型糖尿病患者へのインスリン療法では、若年患者とは異なる注意点があります。
2008〜2018年の当院データでは、インスリン療法を受ける2型糖尿病患者のうち2018年時点で65歳以上が約7割、75歳以上が4割弱を占めていました。 高齢者比率が急速に上昇しているにもかかわらず、低血糖の発生「回数」は横ばいのまま推移していた点は見逃せない事実です。 shinryo-to-shinyaku(https://www.shinryo-to-shinyaku.com/db/pdf/sin_0056_12_0881.pdf)
低血糖発生患者の数は年次とともに減少傾向であっても、発症した患者が繰り返している構造が残っています。 shinryo-to-shinyaku(https://www.shinryo-to-shinyaku.com/db/pdf/sin_0056_12_0881.pdf)
低血糖は高齢者では認知機能低下・転倒骨折・心血管イベントのリスクを高めます。これが深刻です。
高齢者にインスリンを導入する場面では、以下の点を確認しておくと事故防止につながります。
高齢2型糖尿病へのインスリン療法に関する日本老年医学会の解説。
高齢2型糖尿病へのインスリン療法(日本老年医学会雑誌・PDF)
【中古】 糖尿病インスリン療法のてびき / 糖尿病治療研究会 / 医歯薬出版 [単行本]【メール便送料無料】【最短翌日配達対応】