ファリーダック販売中止の理由と医療現場への影響

再発・難治性多発性骨髄腫治療薬ファリーダック(パノビノスタット)はなぜ2023年に販売中止となったのか?医療従事者が知っておくべき背景と代替治療の選択肢とは?

ファリーダック販売中止の理由と今後の対応

使用中の患者がいても、製薬会社の判断だけで薬は突然なくなります。


ファリーダック販売中止:3つのポイント
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販売中止の時期

ノバルティス ファーマは2023年3月22日付でファリーダックカプセル10mg・15mgの販売中止を公式発表。承認整理は2024年4月をもって完了した。

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販売中止の主な背景

多発性骨髄腫領域に新規治療薬が次々と登場し、ファリーダックの臨床的位置づけが相対的に低下。使用実績の減少と供給継続の困難さが重なった。

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現場への影響と代替薬

日本血液学会は使用中施設との合意のもと承認整理を了承。ダラツムマブ、イキサゾミブ等の代替治療へのスムーズな移行が求められる。

ファリーダックとは:多発性骨髄腫向けHDAC阻害剤の概要



ファリーダック(一般名:パノビノスタット乳酸塩)は、ノバルティス ファーマが製造販売していた抗悪性腫瘍剤です。 適応症は「再発または難治性の多発性骨髄腫」で、ボルテゾミブ(ベルケイド)およびデキサメタゾンとの3剤併用で使用されました。wikipedia+1
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を阻害することで、がん抑制遺伝子の転写を促進し、腫瘍細胞のアポトーシスや細胞周期停止を誘導する作用機序を持ちます。 非選択的HDAC阻害薬(pan-HDAC阻害薬)として、クラス1・2・4のHDACを標的にします。 つまり、エピジェネティクス制御を標的にした分子標的治療薬です。oncolo+1
国内での製造販売承認取得は2015年7月3日で、欧州(EMA)でも同年6月に承認されました。 日本での多発性骨髄腫の推定患者数は申請当時で約1万4,000人とされており、希少疾病領域の薬剤として一定のニーズがありました。jiho+2
参考:ファリーダックの添付文書・薬効分類情報(白鷺病院薬剤部資料)
https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/1791.pdf

ファリーダック販売中止の理由:新規薬剤登場による臨床的位置づけの低下

販売中止の最大の理由は、多発性骨髄腫領域における治療薬の急速な進歩です。 2015年の承認以降、ダラツムマブ(ダラザレックス)、カルフィルゾミブ(カイプロリス)、イサツキシマブ(サークリサ)、シルタカブタゲン オートルユーセル(カービクティ)など次々と新規薬剤が登場しました。 競合薬の増加です。wikipedia+1
これによりファリーダックは相対的に使用頻度が低下し、供給を継続するビジネス上・臨床上の根拠が薄れていきました。 使用実績が少なくなれば、製薬会社が製造・供給インフラを維持するコストに見合わなくなるのは自然な流れです。


参考)https://x.com/kamo_kamos/status/1642611764927029250


加えて、2024年に発表されたPresidentの記事によれば、ファリーダック(パノビノスタット)はFDAが「効果の疑わしい抗がん剤」として見直し対象とした23品目のひとつに含まれており、エビデンスの不確実性も背景にあります。 有効性の再評価が進んだことも、継続断念の一因と考えられます。
参考:米国で見直された抗がん剤と日本での承認状況(President Online)

ファリーダック販売中止の経緯:2023年発表から2024年承認整理まで

具体的な経緯を時系列で確認しておきましょう。


時期 内容
2015年7月 国内製造販売承認取得(ノバルティス ファーマ)
2023年3月22日 ファリーダックカプセル10mg・15mgの販売中止を公式発表
2023年度 日本血液学会が承認整理を審議・了承
2024年4月30日 承認整理(国内供給停止)完了

日本血液学会の審議では「使用中の施設と十分な合意を得ていること、現実的に供給継続は難しい」との判断が示されました。 これが条件です。


参考)https://www.jshem.or.jp/uploads/files/gaiyo/2023jigyo_houkoku.pdf


既に使用していた施設では、2023年以降は在庫限りでのオーダー対応となり、順次中止となっています。 患者さんへの影響を最小化するため、代替治療への移行計画を各施設で立てる必要がありました。


参考)https://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yakuzai/kakoHP/de0069.pdf


参考:日本血液学会2023年度事業報告(ファリーダック承認整理に関する記載あり)
https://www.jshem.or.jp/uploads/files/gaiyo/2023jigyo_houkoku.pdf

ファリーダック販売中止後の代替治療と多発性骨髄腫の現在の標準療法

ファリーダックが担っていた「再発・難治性多発性骨髄腫」への対応は、現在どの薬剤で補われているのでしょうか?
現在の標準的な選択肢として、以下が挙げられます。gan.med.kyushu-u.ac+1

  • 💊 プロテアソーム阻害薬:ボルテゾミブ(ベルケイド)、カルフィルゾミブ(カイプロリス)、イキサゾミブ(ニンラーロ)
  • 💊 免疫調節薬(IMiDs)レナリドミド(レブラミド)、ポマリドミド(ポマリスト)
  • 💊 抗CD38抗体:ダラツムマブ(ダラザレックス)、イサツキシマブ(サークリサ)
  • 💊 CAR-T療法・二重特異性抗体:BCMAを標的とした新世代治療薬

HDAC阻害薬という薬効クラス自体は引き続き研究が続いていますが、現時点で国内で承認されているHDAC阻害薬の多発性骨髄腫適応はファリーダックのみであり、その販売中止によって実質的にこのクラスの選択肢はなくなっています。意外ですね。


多発性骨髄腫は現在10剤以上の治療薬が国内で使用可能であり、治療選択肢の豊富さという点では他血液がんと比べても恵まれた分野です。 だからこそ、ファリーダックの抜けた穴は他の薬剤で補いやすい状況でもあります。


参考)https://nsmc.hosp.go.jp/Journal/2021-11/SMCJ2021-11_review01.pdf


参考:九州大学病院がんセンター・多発性骨髄腫薬物治療の概要
https://www.gan.med.kyushu-u.ac.jp/result/hematological_malignancies/index5

ファリーダック販売中止から学ぶ:医療従事者が知っておくべき供給停止リスクへの備え

これはファリーダックだけの問題ではありません。 希少疾病領域の薬剤は、使用患者数が少なく採算が見込めなくなると、製薬会社が撤退を決断するリスクを常に抱えています。


医療現場で知っておくべきポイントをまとめると以下の通りです。


  • 📋 使用中薬剤の製品情報ページを定期確認:ノバルティスを含む各社の「販売中止・移管製品情報」ページは定期的にチェックする習慣が重要です
  • 📋 代替薬の事前検討:販売中止公表から実際の供給停止まで約1年の猶予があった。この間に代替薬への切り替えシミュレーションを行うことが患者保護につながります
  • 📋 学会との連携:日本血液学会のように、専門学会が承認整理のプロセスに関与するケースでは、学会からの情報発信を早めにキャッチすることが重要です
  • 📋 薬事委員会への情報共有:院内薬事委員会でも販売中止情報を早期に取り上げ、採用薬品の見直しを行う体制が不可欠です

ノバルティス ファーマの公式ページでは、年度別に販売中止・移管製品情報が公開されており、医療従事者は定期的に参照することが推奨されます。 確認は無料です。


参考)販売中止・移管製品情報 2023|製品情報|医療関係者向け|…


薬剤の供給が突然止まることによる患者への影響を最小化するには、施設内での情報共有と代替薬への移行計画の策定が何より大切です。これが原則です。


参考:ノバルティス ファーマ 販売中止・移管製品情報(公式)
https://www.pro.novartis.com/jp-ja/products/discontinued_list






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