ベリチーム酵素における禁忌疾患は、医療用医薬品版と市販薬版で共通の重要な注意事項です。医療用ベリチーム配合顆粒では、以下の患者への投与が禁忌とされています。
この禁忌設定の背景には、ベリチーム酵素の主要成分である濃厚パンクレアチンがブタの膵臓から精製されていることがあります。パンクレアチンは動物由来の消化酵素であるため、動物蛋白質に対するアレルギー反応のリスクが存在します。
市販薬版のベリチーム酵素では、「してはいけないこと」の項目が設けられていないことが特徴的です。これは第3類医薬品として、比較的安全性が高い設計になっているためですが、医療従事者としては患者の既往歴を十分に確認することが重要です。
過敏症状としては、くしゃみ、流涙、皮膚発赤などのアレルギー症状が報告されており、これらの症状が現れた場合は直ちに服用を中止し、医療機関への受診を勧める必要があります。
ベリチーム酵素の市販薬版は、他のOTC胃腸薬と比較して禁忌事項が少ないことが大きな特徴です。一般的な胃腸薬では透析療法を受けている患者や授乳中の患者に対する禁忌が設定されることが多いですが、ベリチーム酵素ではこれらの制限がありません。
市販薬版の安全性の高さは、以下の要因によるものです。
ただし、医師の治療を受けている患者や薬物アレルギーの既往がある患者については、服用前の相談が推奨されています。特に、消化器疾患で治療中の患者では、症状の変化を適切に評価するため、医師への相談が重要です。
妊娠中・授乳中の使用については、市販薬版では特別な制限は設けられていませんが、念のため産婦人科医への相談が推奨されています。これは胎児や乳児への影響を慎重に評価するためです。
ベリチーム酵素の独特な作用機序は、胃溶性顆粒と腸溶性顆粒の2層構造にあります。この設計により、消化管内のpHに応じて適切な場所で酵素が放出されます。
胃溶性顆粒に含まれる酵素。
腸溶性顆粒に含まれる酵素。
この2層構造により、胃内で速やかに作用する酵素と、腸内で作用する酵素が適切に分離されています。特に、パンクレアチンは腸内のアルカリ性環境で最適な活性を示すため、腸溶性コーティングが施されています。
興味深いことに、ベリチーム酵素に含まれる濃厚パンクレアチンは、局方パンクレアチンの4倍の濃度を持つ高活性製剤です。これにより、少量でも効果的な消化促進作用が期待できます。
ベリチーム酵素の副作用は主にアレルギー反応に関連しており、頻度は「頻度不明」とされています。医療従事者が注意すべき副作用症状は以下の通りです。
皮膚症状。
呼吸器・眼症状。
これらの症状は、主に濃厚パンクレアチンによるものとされており、動物蛋白質に対する過敏反応として現れます。症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、症状の程度に応じて適切な処置を行う必要があります。
市販薬版では、2週間程度服用しても症状が改善しない場合は服用を中止し、医療機関への受診を勧めることが重要です。これは、underlying diseaseの存在や他の治療が必要な可能性を考慮したものです。
副作用の発現頻度は低いものの、初回服用時は特に注意深く観察し、患者には副作用症状について十分に説明しておくことが重要です。
ベリチーム酵素の臨床的価値は、単なる消化促進にとどまらず、現代人の食生活の変化に対応した設計にあります。高脂肪食や食物繊維の摂取増加に対応するため、リパーゼとセルラーゼが配合されている点は他の消化酵素製剤との大きな違いです。
患者指導において重要なポイント。
服用タイミング。
年齢別用量調整。
保存方法。
特に注目すべきは、ベリチーム酵素が「症状がある時の服用」を基本とし、予防的な長期服用は推奨されていない点です。これは消化酵素の本来の役割を考慮した適切な使用方法といえます。
医療従事者として、患者の食生活や症状の背景を十分に聴取し、適切な使用方法を指導することで、ベリチーム酵素の効果を最大限に引き出すことができます。また、症状が持続する場合は、underlying diseaseの可能性も考慮し、適切な医療機関への紹介を行うことが重要です。
シオノギヘルスケアの公式サイトでは、ベリチーム酵素の詳細な製品情報と使用方法が掲載されています。
https://www.shionogi-hc.co.jp/berizym-kouso.html
医療用医薬品版の詳細な添付文書情報については、KEGGデータベースで確認できます。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00057202