頻度の目安は、非小細胞肺癌100人のうち3〜5人ほどです。少なく見えますが、1外来で年間100例規模の肺癌をみる施設なら、決して無視できない数です。つまり少数派ではあっても、見逃しコストが高いということですね。
参考)ALK転座、転座
ALK異常の代表例として知られるのがEML4-ALKです。2番染色体内での逆位によって融合遺伝子が形成され、ALKキナーゼが恒常的に活性化して発がんドライバーになります。
参考)ALK遺伝子転座陽性肺がん【動画でわかる肺がん治療の最前線】…

ALK転座の検査は、古典的にはIHCとFISHが中心です。2015年時点の手引きでは、組織がある場合はまずIHCを行い、陽性ならFISHで確認する流れが示されていました。
参考)ALK融合遺伝子陽性肺がんと診断された方へ ~薬物療法を始め…
ただし、現場では「最短で治療に乗せたい」のに、検査アルゴリズムがかえって遅延要因になることがあります。実際、JLCの解説ではALK陽性例の確認にIHCとFISHの両方を行う考え方が示される一方、turn around timeを短くしたい症例では同時オーダーの可能性にも触れています。
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この点は意外ですね。IHCを待ってからFISHに進む王道フローは合理的ですが、急速進行例や中枢気道狭窄例では数日の差が重くなります。時間リスクを下げたい場面では、病理と事前に「どの症例で同時発注するか」を一枚メモにしておくと動きやすいです。
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さらに、日本ではコンパニオン診断薬の歴史的事情が実務を複雑にしてきました。過去には、ある薬剤で有効性が見えていても、別薬剤投与時に別法での再検査が必要になる不都合が指摘されています。つまり検査は診断だけでなく、処方実務の入口でもあります。
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ALK融合遺伝子転座が確認されると、治療は一気に分子標的薬中心へ寄ります。日本肺癌学会の関連資料でも、ALK陽性例ではALK阻害薬による治療が推奨されてきた流れがあります。
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歴史を振り返ると、クリゾチニブはALK陽性患者で奏効割合60%、がん制御期間9.7か月という初期データで治療景色を変えました。さらに2015年の総説では、アレクチニブは第II相試験で奏効率93.5%、無増悪生存期間27か月と報告され、耐性後にも奏効率65%が示されています。
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数字でみるとインパクトがあります。100人のALK陽性患者がいれば、初期世代でも60人前後が明らかな腫瘍縮小を得て、後発薬ではさらに高い反応率が期待できた計算です。つまり、見つけたかどうかで治療の質が大きく変わるわけです。
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ここが見逃されやすいです。脳転移を伴うからすぐ局所治療一辺倒、ではありません。全身治療の中枢移行性まで見て薬剤選択を考えると、患者さんのQOLや入院期間の短縮につながる可能性があります。
参考)https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/007020095j.pdf
ALK転座は「若年・非喫煙・肺腺癌」で考える、という教科書的整理は便利です。ですが、それに寄りかかりすぎると微小検体で外しやすくなります。
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つまり、扁平に見えるから外す、は危ないです。特にALK陽性肺癌ではsolid patternのような低分化寄りの像もあり、免疫染色の解釈を含めて単純化しすぎない姿勢が必要です。
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加えて、p63を根拠に除外しないほうがよいと報告されています。ALK融合遺伝子陽性肺癌でp63染色が多いことがあり、適否判断にはp40など別マーカーも意識すべきとされています。これはp63陽性なら扁平だからALKは薄い、という思い込みを否定するポイントです。
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検体が細胞診しかない場面も悩ましいところですね。手引きの文脈では、細胞診単独では難しい一方、セルブロック作製でFISHやIHCが可能になることが多いとされています。検体不足のリスクを下げたいなら、「採れるうちにセルブロック化する」が原則です。
参考)ALK融合遺伝子陽性肺がんと診断された方へ ~薬物療法を始め…
検索上位の記事は、病態と薬剤の説明で終わりがちです。ですが医療従事者向けなら、本当に差がつくのは検査依頼の設計です。
たとえば、検査の遅れは知識不足より連携不足で起こります。病理依頼票に「進行NSCLC疑い、ALK含む迅速評価希望」と定型文を入れるだけでも、検査の抜けや再確認の往復を減らせます。これは使えそうです。
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コスト感も無視できません。2015年の総説では、iAEPでのIHCとFISHの保険点数が9220点と記載され、患者負担や医療経済上の観点にも触れています。だからこそ、全例に漫然と重ねるのではなく、施設内で「IHC先行」「同時発注」「外注基準」を決めると無駄が減ります。
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急いで治療が必要な症例では、IHC結果を踏まえてALK阻害薬投与を検討しつつ、並行してvalidationされた検査を走らせるという考え方にも言及があります。もちろん保険実務や査定への配慮は必要ですが、救命優先で現場判断が求められる場面はあります。つまり、教科書どおり一択ではないです。
参考)ALK融合遺伝子陽性肺がんと診断された方へ ~薬物療法を始め…
副作用マネジメントまで含めた運用設計も大切です。クリゾチニブでは視覚障害69.5%、下痢65.6%、嘔気64.8%、嘔吐56.3%、味覚障害50%などが示され、アレクチニブではビリルビン上昇36.2%、AST上昇32.8%、CPK上昇20.7%など特徴が異なります。薬剤選択後に困らないよう、初回説明テンプレートを1枚用意しておくと外来が安定します。
参考)ALK融合遺伝子陽性肺がんと診断された方へ ~薬物療法を始め…
検査手引きの参照先です。検査の位置づけや最新版への導線確認に便利です。
参考)肺癌診療ガイドライン2024年版
日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2024年版
ALK診療の実務課題をまとめた総説です。対象症例、IHC・FISH・RT-PCRの使い分け、TAT、検体不足時のセルブロック、副作用マネジメントの確認に向いています。
参考)ALK融合遺伝子陽性肺がんと診断された方へ ~薬物療法を始め…
あなたがIHCだけで進めると治療機会を逃します。
ROS1融合遺伝子は、非小細胞肺がんの約1〜2%にみられる希少なドライバー異常です。
参考)https://www.bmshealthcare.jp/assets/buildeasy/apac-commercial/bms-healthcare-jp/ja/documents/patient/augtyro/AUGTYRO_parient_ROS1_support.pdf
つまり希少でも見逃せないということですね。
重要なのは、頻度が低いから後回しにしてよい遺伝子ではない点です。
参考)https://www.bmshealthcare.jp/assets/buildeasy/apac-commercial/bms-healthcare-jp/ja/documents/patient/augtyro/AUGTYRO_parient_ROS1_support.pdf
ROS1陽性ならクリゾチニブ、エヌトレクチニブ、レポトレクチニブ、タレトレクチニブといった治療選択肢があり、治療戦略が一気に変わります。
国立がん研究センター中央病院の解説でも、クリゾチニブでは腫瘍縮小が10人中7人、効果持続は半数で1年半以上とされています。
参考)https://www.bmshealthcare.jp/assets/buildeasy/apac-commercial/bms-healthcare-jp/ja/documents/patient/augtyro/AUGTYRO_parient_ROS1_support.pdf
「まずは化学療法で様子を見る」という流れを続けるほど、分子標的薬に最短でつなぐ機会を失いやすくなります。
参考)https://www.bmshealthcare.jp/assets/buildeasy/apac-commercial/bms-healthcare-jp/ja/documents/patient/augtyro/AUGTYRO_parient_ROS1_support.pdf
初回からの設計が基本です。
医療従事者が誤解しやすいのは、ROS1は「どのNGSでも同じように拾える」と思いがちな点です。
NCCNの日本語版では、ROS1融合はNGSで検出可能としつつ、DNAベースNGSは検出感度が低い可能性があると明記されています。
意外ですね。
さらに、広範なパネル検査でドライバーが見つからない非喫煙者では、融合イベントの検出可能性を最大限に高めるため、未施行ならRNAベースNGSを考慮するとされています。
非喫煙・腺がん・若年寄りの症例で陰性結果をそのまま確定扱いすると、実際には拾えるはずのROS1融合を落とす恐れがあります。
RNA発想が条件です。
もう一つ大事なのがIHCの扱いです。
NCCNでは、ROS1 IHCは陽性判定の特異度が低く、追加確認なしにTKI選択へ使うべきではないとされています。
IHC単独はダメですね。
検体不足や再生検困難の場面では、最初から「どの検査で、何を、どこまで確認するか」を呼吸器内科、病理、検査部で共有しておくと無駄が減ります。
参考)https://www.bmshealthcare.jp/assets/buildeasy/apac-commercial/bms-healthcare-jp/ja/documents/patient/augtyro/AUGTYRO_parient_ROS1_support.pdf
この場面の対策として、検体提出時にRNAベース解析の可否を病理依頼票へ一言メモするだけでも、再オーダーの時間損失を減らしやすいです。
これは使えそうです。
検査全体像を確認する参考です。
国立がん研究センター中央病院 肺がん診療ページ
検査法の注意点、とくにROS1でIHC単独を避ける点の参考です。
NCCN非小細胞肺癌ガイドライン日本語版
ROS1陽性肺癌では、いま使える薬剤名を頭に入れておくだけで説明と紹介の質が上がります。
参考)https://www.bmshealthcare.jp/assets/buildeasy/apac-commercial/bms-healthcare-jp/ja/documents/patient/augtyro/AUGTYRO_parient_ROS1_support.pdf
国立がん研究センター中央病院では、現在使用可能な薬剤としてクリゾチニブ、エヌトレクチニブ、レポトレクチニブ、タレトレクチニブが挙げられています。
クリゾチニブは2017年にROS1陽性肺がんへ使えるようになり、エヌトレクチニブは2020年から保険承認、レポトレクチニブは2024年、タレトレクチニブは2025年に本邦で使用可能となりました。
参考)https://www.bmshealthcare.jp/assets/buildeasy/apac-commercial/bms-healthcare-jp/ja/documents/patient/augtyro/AUGTYRO_parient_ROS1_support.pdf
この更新速度を知らないままだと、古い「クリゾチニブかエヌトレクチニブまで」という認識で止まり、紹介先や患者説明に時間差が生じます。
特に再治療や耐性後を意識するなら、レポトレクチニブやタレトレクチニブの位置づけは押さえておきたいところです。
参考)ROS1/TRK阻害薬repotrectinibがROS1融…
レポトレクチニブはTRIDENT-1試験ベースで、TKI未治療患者71人の奏効率79%、奏効期間中央値34.1カ月、PFS中央値35.7カ月、測定可能頭蓋内病変を持つ9人の頭蓋内奏効率89%と報告されています。
参考)ROS1/TRK阻害薬repotrectinibがROS1融…
数字で覚えると強いです。
一方で、既治療後は効き方が落ちることも重要です。
参考)ROS1/TRK阻害薬repotrectinibがROS1融…
同じ報告では、1種類のTKI治療歴あり・化学療法未治療の56人で奏効率38%、PFS中央値9.0カ月、頭蓋内奏効率38%でした。
参考)ROS1/TRK阻害薬repotrectinibがROS1融…
早い段階の最適化が大切です。
ここは重要です。
頭蓋内効果が条件です。
国立がん研究センター中央病院のページでも、他のドライバー遺伝子の文脈ですが、脳転移に効く薬を早く選ぶ意義が繰り返し示されています。
参考)https://www.bmshealthcare.jp/assets/buildeasy/apac-commercial/bms-healthcare-jp/ja/documents/patient/augtyro/AUGTYRO_parient_ROS1_support.pdf
ROS1でも同じく、初回評価の時点で脳MRIをどこまで丁寧に回すか、症状が乏しくても画像で拾うかが、その後の説明と薬剤選択を変えます。
参考)https://www.bmshealthcare.jp/assets/buildeasy/apac-commercial/bms-healthcare-jp/ja/documents/patient/augtyro/AUGTYRO_parient_ROS1_support.pdf
先に脳を見ておくのが基本です。
この場面の対策は、転移検索の狙いを明確にして検査を遅らせないことです。
参考)https://www.bmshealthcare.jp/assets/buildeasy/apac-commercial/bms-healthcare-jp/ja/documents/patient/augtyro/AUGTYRO_parient_ROS1_support.pdf
診断から治療開始まで国立がん研究センター中央病院では2週間〜1カ月程度を要することが多いとされており、この間に脳評価が後ろへずれるほど初回薬物治療の意思決定も遅れます。
検索上位の記事で抜けやすいのが、ROS1陽性肺癌と血栓塞栓症の距離の近さです。
参考)ROS1陽性肺がんの血栓塞栓イベント/Lung Cancer…
「肺癌だから血栓はあり得る」で済ませると、ROS1陽性例に特有のリスク上昇を見落として、初期症状の読み取りが鈍くなります。
参考)CareNet Academia
ここは盲点です。
Carenet紹介のデータでは、ROS1再構成を持つ進行肺腺がん患者は、周診断期に血栓塞栓症の累積発生率17.5%±0.2%とされました。
参考)CareNet Academia
さらに別報では、治療戦略に関係なく診断期間を超えて血栓リスクが持続し、一次血栓予防の検討が推奨されるとされています。
参考)ROS1陽性肺がんの血栓塞栓イベント/Lung Cancer…
血栓評価が基本です。
症状の整理が大切ですね。
「若年・非喫煙・腺癌・血栓イベントあり」の並びを見たら、ROS1を候補に置く、これだけ覚えておけばOKです。