有害事象共通用語規準v5.0日本語訳JCOG版の運用と評価基準

有害事象共通用語規準v5.0日本語訳JCOG版は臨床試験における有害事象評価の国際標準ですが、実際の運用では見落としやすい落とし穴があります。医療従事者が正確にGradeを判定するためのポイントや、MedDRA対応版の更新情報、基準範囲の適用方法など、実務で役立つ知識を網羅的に解説します。あなたは本当に正しくCTCAEを使えていますか?

有害事象共通用語規準v5.0日本語訳JCOG版とは

処置を実施したからという理由でGrade判定するのはダメ。


この記事の3ポイント要約
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CTCAE v5.0の基本構造

MedDRA v20.1に対応した国際標準の有害事象評価規準で、JCOGが独自の基準範囲を設定

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Grade判定の重要原則

実際に行った処置ではなく、医学的に必要な処置で判定する必要がある

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定期的な更新対応

MedDRA/Jのバージョンアップに合わせて修正・改訂が継続的に行われている


有害事象共通用語規準v5.0日本語訳JCOG版の定義と目的

有害事象共通用語規準v5.0日本語訳JCOG版(略称:CTCAE v5.0 - JCOG)は、がん臨床試験における有害事象の評価と報告を標準化するための国際的な評価基準です。米国国立がん研究所(NCI)が開発したCTCAE v5.0を、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が日本の医療現場に適した形で翻訳・運用しています。 jcog(https://jcog.jp/doctor/tool/ctcaev5/)


この規準の主な目的は3つあります。


まず、がんの新しい治療法や治療手段、補助治療の評価を容易にすることです。すべてのがん治療の臨床試験で共通の評価基準を使用することで、異なる施設や研究間での比較が可能になります。 nihonkai-hos(https://www.nihonkai-hos.jp/hospital/pdf/hokenyakkyoku/ctcae.pdf)


次に、有害事象の重症度を客観的に評価し、標準化された記録を残すことです。これにより、医療従事者間での認識のずれを最小限に抑え、患者の安全性を確保します。 scmc.or(https://www.scmc.or.jp/contents/wp-content/uploads/2025/08/6ac6c8d2e30732ba47b14ab5ce0c81ea.pdf)


最後に、治療関連有害事象に適切に対応するためのツールとして機能することです。Grade分類により、どの段階で医学的介入が必要かを明確に判断できます。 scmc.or(https://www.scmc.or.jp/contents/wp-content/uploads/2025/08/6ac6c8d2e30732ba47b14ab5ce0c81ea.pdf)


つまり臨床試験の質を高める基準です。


有害事象共通用語規準v5.0のMedDRA対応バージョン

CTCAE v5.0 - JCOGは、医薬品規制調和国際会議(ICH)が管理する国際医薬用語集MedDRA(Medical Dictionary for Regulatory Activities)との対応関係を明確にしています。オリジナルのCTCAE v5.0初版はMedDRA v20.1に対応し、日本語訳の初版はMedDRA/J v21.0に対応していました。 jcog(https://jcog.jp/assets/CTCAEv5J_20220901_v25_1.pdf)


その後、MedDRAのバージョンアップに合わせて、CTCAE v5.0 - JCOGも定期的に更新されています。2022年9月1日版ではMedDRA/J v25.1に対応し、2025年9月1日にはさらに新しいバージョンへの対応が予定されています。 jcog(https://jcog.jp/assets/CTCAEv5J_20250901_version.pdf)


このMedDRA対応が重要な理由は、規制当局への報告や国際共同治験での用語統一に直結するためです。


どういうことでしょうか?


MedDRAコードが付与されることで、有害事象名が世界共通のデータベースに登録可能になり、安全性情報の国際的な共有が実現します。また、同じ有害事象でも表現が異なる場合に、MedDRAコードによって同一のものとして集計できるようになります。 jcog(https://jcog.jp/assets/CTCAEv5J_20220901_v25_1.pdf)


医療機関で使用する際は、最新版のMedDRA/J対応版を確認することが必須です。古いバージョンを使い続けると、規制当局への報告時に用語の不一致が生じるリスクがあります。 jcog(https://jcog.jp/assets/CTCAEv5J_20250901_version.pdf)


JCOGの公式サイトには修正・改訂履歴とMedDRAバージョン対応表が掲載されており、どの時期にどのバージョンを使うべきかの参考になります


有害事象共通用語規準v5.0におけるGrade分類の仕組み

CTCAE v5.0のGrade分類は、有害事象の重症度を5段階で評価する体系です。各Gradeの定義は以下の通りです。 hokuto(https://hokuto.app/ctcae/v5/r9bXTihOsTcYK9SwxuYv)


Grade分類の基本定義


- Grade 1(軽症):症状がない、または軽度の症状がある;臨床所見または検査所見のみ;治療を要さない byoin.city.fuji.shizuoka(https://byoin.city.fuji.shizuoka.jp/bumon/regimen/documents/ctcae-ver5_s.pdf)
- Grade 2(中等症):最小限/局所的/非侵襲的治療を要する;年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限 byoin.city.fuji.shizuoka(https://byoin.city.fuji.shizuoka.jp/bumon/regimen/documents/ctcae-ver5_s.pdf)
- Grade 3(重症):重症または医学的に重大であるが、ただちに生命を脅かすものではない;入院または入院期間の延長を要する;身の回りの日常生活動作の制限 byoin.city.fuji.shizuoka(https://byoin.city.fuji.shizuoka.jp/bumon/regimen/documents/ctcae-ver5_s.pdf)
- Grade 4(生命を脅かす):生命を脅かす;緊急処置を要する byoin.city.fuji.shizuoka(https://byoin.city.fuji.shizuoka.jp/bumon/regimen/documents/ctcae-ver5_s.pdf)
- Grade 5(死亡):有害事象による死亡 towayakuhin.co(https://www.towayakuhin.co.jp/oncology/regimen/s1_ctcae.php)


重要な運用ルールがあります。


まず、CTCAE v5.0にはGrade 0は存在しません。有害事象がない場合はそもそも記録対象外となります。 scmc.or(https://www.scmc.or.jp/contents/wp-content/uploads/2025/08/6ac6c8d2e30732ba47b14ab5ce0c81ea.pdf)


次に、項目によってはGrade 5が定義されていないものがあります。例えば好中球数減少症などの検査値異常では、その検査値異常自体が直接死因にならないため、Grade 5は設定されていません。 hokuto(https://hokuto.app/ctcae/v5/r9bXTihOsTcYK9SwxuYv)


評価期間内で最悪の有害事象Gradeを記録するというルールも厳格です。一時的に改善してもその期間中の最も重度の状態で判定します。 scmc.or(https://www.scmc.or.jp/contents/wp-content/uploads/2025/08/6ac6c8d2e30732ba47b14ab5ce0c81ea.pdf)


有害事象共通用語規準v5.0のJCOG共用基準範囲の適用

JCOGでは、全国の臨床試験実施施設間でのデータ比較を可能にするため、「JCOG共用基準範囲」という独自の基準値を設定しています。これは各施設が持つ検査基準値のばらつきを吸収し、統一された評価を実現するための仕組みです。 jcog(https://jcog.jp/assets/CTCAE_v50_unyou_20250301.pdf)


具体的には、臨床検査値に関連する有害事象項目(貧血、肝機能障害、電解質異常など)で、施設基準値の代わりにJCOG共用基準範囲を使用します。 jcog(https://jcog.jp/assets/ChgJCOG_kyouyoukijunchi-CTCAE_50_20190905.pdf)


例を挙げます。


AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)増加の評価では、JCOG共用基準範囲として男女共通で30 U/Lが設定されています。ベースラインが≦30 U/Lの場合、>30-90 U/LでGrade 1と判定されます。 jcog(https://jcog.jp/assets/CTCAE_v50_unyou_20250301.pdf)


この共用基準範囲を使用することで、A施設の基準値上限が40 U/L、B施設が35 U/Lという違いがあっても、同じ30 U/Lを基準に判定できるため、施設間でのGrade判定のばらつきが解消されます。 jcog(https://jcog.jp/assets/ChgJCOG_kyouyoukijunchi-CTCAE_50_20190905.pdf)


CTCAE v5.0で基準範囲を用いなくなった有害事象項目も存在します。INR増加、高血糖、低リン酸血症などは、v4.0までは基準範囲を使用していましたが、v5.0では絶対値による判定に変更されました。 jcog(https://jcog.jp/assets/CTCAE_v50_unyou_20210901.pdf)


基準範囲が原則です。


有害事象共通用語規準v5.0における医学的判断の重要性

CTCAE v5.0でGrade判定を行う際、最も誤解されやすいのが「実際に何が行われたか」ではなく「何がなされるべきか」という医学的判断に基づいて評価する原則です。 jcog(https://jcog.jp/assets/CTCAEv3J_070308.pdf)


どういうことなのか具体例で説明します。


食欲不振の項目で「Grade 3:輸液を要する」と定義されている場合を考えます。患者の状態としては輸液が必要な脱水状態にあったが、たまたま週末で外来が休診だったため輸液を行わなかったとします。この場合でも、医学的に輸液が必要な状態であればGrade 3と判定します。 jcog(https://jcog.jp/assets/CTCAEv3J_070308.pdf)


逆に、本来は経口摂取で十分な軽度の食欲不振(Grade 1相当)であるにもかかわらず、患者や家族の希望で予防的に輸液を行ってしまった場合、「輸液を行ったからGrade 3」とするのは誤用です。 jcog(https://jcog.jp/assets/CTCAEv3J_070308.pdf)


これは医療従事者による有害事象の過小評価を防ぐための重要なルールです。実際の処置ベースで判定すると、医療リソースの制約や患者の受診タイミングによってGradeが左右されてしまい、真の重症度が反映されません。 scmc.or(https://www.scmc.or.jp/contents/wp-content/uploads/2025/08/6ac6c8d2e30732ba47b14ab5ce0c81ea.pdf)


医学的判断が基本です。


この原則を正しく理解していないと、臨床試験のデータの質が低下し、安全性評価に重大な影響を及ぼす可能性があります。各施設のCRC(臨床研究コーディネーター)や医師は、この「what should be done」の原則を常に意識する必要があります。 ctpf.or(https://www.ctpf.or.jp/crc12/data/prc/s1.pdf)


JCOGが公開しているCTCAE v3.0の運用ガイドには、この医学的判断の原則について詳細な説明があり、v5.0でも同じ考え方が適用されています