透析膜の種類一覧と選択の基本を知る

透析膜にはセルロース系と合成高分子系の2大分類があり、PS・PES・PMMA・AN69・CTA・ATAなど多数の素材が存在します。各膜の特徴と臨床での使い分け、あなたの施設で正しく選べていますか?

透析膜の種類一覧と素材別の特徴

AN69膜を使っている患者にACE阻害薬を投与すると、アナフィラキシーで血圧が急落します。


参考)AN69膜の真実を暴く!透析膜の種類と特徴を知らないと損する…


透析膜の種類と選択ガイド
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セルロース系(CTA・ATA)

植物繊維由来。高い抗血栓性、PVPフリー・BPAフリー。小分子除去に強いが中分子除去はやや劣る。

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合成高分子系(PS・PES・PMMA・AN69等)

化学合成膜。中分子・低分子タンパク除去に優れ、現在の国内透析の80%以上で使用。

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AN69膜の注意点

陰性荷電によりブラジキニン産生促進。ACE阻害薬併用患者には禁忌。アナフィラキシー症状に直結。


透析膜の2大分類:セルロース系と合成高分子系



透析膜は素材の違いから、大きくセルロース系と合成高分子系の2種類に分類されます。 セルロース系は植物繊維を原料とし、1990年代まで主流でしたが、現在では国内流通しているのはCTA(セルローストリアセテート)とATA(アシンメトリックトリアセテート)のみです。


参考)透析膜のセルローストリアセテート(CTA)について解説


合成高分子系は化学的に合成された膜で、生体適合性と中分子除去能に優れています。つまり、現在の透析の主役はこちらです。 国内で使用されている合成高分子系の主な種類は、PS(ポリスルホン)・PES(ポリエーテルスルホン)・PMMA(ポリメチルメタクリレート)・PEPA(ポリエステル系ポリマーアロイ)・AN69(ポリアクリルニトリル共重合体)です。


参考)透析の目的がわかる!透析膜の選択について


2020年現在、国内で流通しているのはCTA・PS・PES・PMMA・PAN(AN69)・PAES・PEPAで、EVALは国内では流通していません。 合成高分子系膜は現在、日本の透析患者の80%以上で使用されています。


参考)透析膜のセルローストリアセテート(CTA)について解説


透析膜の種類一覧:合成高分子系の各素材の特徴

合成高分子系の透析膜は種類が多く、それぞれ特性が異なります。これが選択を難しくする原因です。


素材名 略称 主な特徴
ポリスルホン PS 国内最多使用。小分子〜β₂-MG除去に優れシャープな分離特性。アルブミン漏出が少ない have-fun-earning(https://have-fun-earning.com/dialysis/types-of-membrane/)
ポリエーテルスルホン PES PSと類似構造。除去性能が高く、広く普及 note(https://note.com/modern_duck464/n/n35f981df32e0)
ポリメチルメタクリレート PMMA サイトカイン吸着能を持つ。炎症性サイトカインの除去に有用 note(https://note.com/modern_duck464/n/n35f981df32e0)
ポリエステル系ポリマーアロイ PEPA 大分子量物質の除去に優れる。α-1など tsuchiya-hp(https://www.tsuchiya-hp.jp/pdf/ckd-202009-2.pdf)
ポリアクリルニトリル共重合体 AN69 世界初の合成高分子膜。親水性ハイドロゲル構造。陰性荷電が特徴 dialysisroom(https://dialysisroom.com/dialysismembrane-an69/)


PS膜は旭化成のAPSシリーズ・VPS、フレゼニウス、東レなどから広く販売されており、HD用ダイアライザーだけでなくオンラインHDFのヘモダイアフィルタにも広く使われています。 PS膜が好まれる理由の一つは、孔径・親水性・透水性を設計しやすく、さまざまなフラックス特性のダイアライザーを作りやすい点にあります。


参考)【透析の教科書 #2】透析膜素材で何が変わる?PS・PMMA…


PMMA膜の特徴は、他の素材には少ないサイトカイン吸着能です。 炎症を伴う症例や敗血症合併透析患者への使用が検討される場面で、選択肢になり得ます。


参考)【透析の教科書 #2】透析膜素材で何が変わる?PS・PMMA…


セルロース系透析膜の種類一覧:CTA・ATAの違い

セルロース系膜は現在、国内ではCTAとATAの2種類のみが実用されています。 再生セルロース(RC)はかつて使われていましたが、生体適合性の問題から現在は販売されていません。


参考)透析治療で使われるセルロース膜の種類と特徴を徹底解説


CTA(セルローストリアセテート)は、再生セルロースの生体適合性を改善した素材です。 ニプロのFBシリーズが代表的で、高い抗血栓性を持ち、PVPフリー・BPAフリーという安全性の高さが特徴です。 小分子の除去には強いですが、中分子タンパクの除去能は合成高分子系に比べるとやや劣ります。


参考)透析膜の種類PS・PES・PEPA・EVAL・PMMA・AN…


ATA(アシンメトリックトリアセテート)は、CTAをさらに改良した非対称構造を持つ膜です。 CTA膜よりも中分子除去能が高く、サイトカイン吸着能もあるとされています。 ニプロのFIX(ファインフラックス®)が唯一のATA膜として知られており、膜表面を平滑化することで血液適合性をさらに高めています。 ATA膜を使用する際もプライミング時にグリセリンを十分に洗浄する必要があります。


参考)https://med.nipro.co.jp/med/products/a0a5g00000IhC42AAF/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9fix


透析膜のセルローストリアセテート(CTA)の詳細解説(臨床工学技士向け)


ハイフラックス膜とローフラックス膜の違いと選択基準

透析膜の素材分類とは別に、フラックス(透水性)による分類も臨床では重要です。 ハイフラックス膜は大型の溶質除去能が高く、ローフラックス膜に比べて臨床アウトカムの改善が期待できることが、3,820名を含む33件の試験結果から示されています。


参考)https://www.cochrane.org/ja/CD005016/RENAL_xie-ye-tou-xi-mo-nozhong-lei-gashen-ji-huan-huan-zhe-noautokamuniying-xiang-suruka


現在の分類では、β₂-MGクリアランスが70 mL/min以上のスーパーハイフラックス膜(S型膜)が、より良好な生命予後に寄与することが報告されています。 S型に分類されているのはEVAL膜とPMMA膜です。 意外ですね。


参考)CareNet Academia


フラックス選択の実際の基準としては、患者の体格・Kt/V・アルブミン値が参考になります。 アルブミン値が低い患者にハイフラックス膜を選ぶと、アルブミンがさらに漏出するリスクがあるため注意が必要です。 アルブミン漏出が少ないシャープな特性を持つPS膜は、こうした場面で特に重宝されます。


参考)ダイアライザーの膜素材5種を比較|体格・症状別の選択基準を現…


ダイアライザー膜素材5種の体格・症状別選択基準(現役臨床工学技士による解説)


AN69膜とACE阻害薬の禁忌:見落としやすい臨床リスク

透析膜の種類の中で特に注意が必要なのがAN69膜(PAN膜)です。 AN69膜の表面は陰性に強く荷電しており、血液が接触するとブラジキニン産生が促進されます。


参考)http://www.kosei.jp/wp_koseihp/wp-content/uploads/2015/05/273cddcf291f45170c09dc732cbe3401.pdf


ACE阻害薬はブラジキニンの分解を阻害するため、AN69膜との組み合わせでブラジキニンが血中に蓄積します。 その結果、顔面浮腫・咽頭浮腫・嘔吐・腹部けいれん・気管支けいれん・血圧低下・チアノーゼといったアナフィラキシー症状が発現します。 これは命に関わるリスクです。


参考)http://www.med.oita-u.ac.jp/yakub/di/qa/202110/2105ACE.pdf


具体的な薬剤名としては、エースコール・コバシル・タナトリル・レニベース・ロンゲスなどが該当します。 他施設から転院してきた患者の透析膜変更時は、服用薬剤の確認が必須です。 AN69膜を使用する際は必ず処方薬を確認するのが原則です。


参考)透析の目的がわかる!透析膜の選択について


この組み合わせ禁忌はAN69膜特有のリスクであり、PS膜やPMMA膜では同様の機序による禁忌はありません。 転院患者の透析膜選択時に最も確認すべき点の一つです。


参考)AN69膜の真実を暴く!透析膜の種類と特徴を知らないと損する…


AN69膜の特徴とACE阻害薬との禁忌についての詳細解説

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