術後DVT発症率が「42%」と知ったとき、あなたは適切に予防できていますか?

手術アプローチには後方(posterior)、前方(anterior)、側方(lateral)などの種類があります。つまり術式によって禁忌肢位の内容が異なるということです。後方アプローチでは股関節の屈曲・内転・内旋の組み合わせが脱臼を招きやすく、前方アプローチでは逆に伸展・外旋が危険とされます。 担当する患者がどの術式を受けたかを術後ケアの出発点として必ず確認することが原則です。
関連)https://www.fg-kshp.jp/patients/department/orthopedics/artificial-joint/column20230203-01.html
| アプローチ | 禁忌肢位 | 脱臼方向 |
|---|---|---|
| 後方アプローチ | 屈曲+内転+内旋 | 後方脱臼 |
| 前方アプローチ | 伸展+外旋 | 前方脱臼 |
| 側方アプローチ | 内転・内旋 | 後方脱臼 |
THA術後のDVT(深部静脈血栓症)発症率は驚くほど高い数値が報告されています。国内の研究では、THA術後翌日時点でDVT発症率が39.1%に達するというデータがあります。 これは約2〜3人に1人という割合で、術後ルーティン観察の中でDVTを「まれな合併症」と軽視することは危険です。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.15106/J00764.2013211791
DVTが進行すると肺血栓塞栓症(PE)を引き起こし、生命に関わります。意外ですね。看護師として術後の下肢観察(腫脹・熱感・Homans徴候)を毎シフトで丁寧に行うことは最低限の義務と言えます。 一方、DVT予防に最も効果的な介入は「早期離床」と「ふくらはぎの自動運動」で、THA後は術翌日から起座位・車椅子移乗が可能なケースも多く、積極的な離床促進が看護の核心です。
関連)https://j-depo.com/news/tha.html
抗凝固療法(エノキサパリンやリバーロキサバン等)が術後に処方される場合も多く、投与タイミング・出血徴候の観察が重要です。薬剤の種類ごとに観察ポイントが変わることを念頭に置いておくと実践で役立ちます。DVT予防は「動かすこと」と「薬を確実に入れること」の両輪が条件です。
後方アプローチのTHA術後に最も多く指導される禁忌肢位は、股関節を90度以上屈曲させた状態です。 日常生活の中では「低い椅子に深く腰掛ける」「和式トイレを使う」「靴下を前かがみで履く」などの動作がこれに該当します。患者がイメージしにくい禁忌肢位を、具体的な生活動作に落とし込んで伝えることが看護師の重要な役割です。
関連)https://www.fg-kshp.jp/patients/department/orthopedics/artificial-joint/column20230203-01.html
脱臼した場合の処置は非常に苦痛を伴い、再手術になると脱臼率が最大28%まで跳ね上がります。 これは骨折後のリハビリで転倒した時よりも深刻なリスクです。患者が「大丈夫だろう」と判断して禁忌肢位を取ってしまうケースは退院後に多いため、入院中に繰り返し指導することが大切です。
関連)https://lts-seminar.jp/2021/08/20/ohtsuka-310/
術後3週間を超えると関節周囲の組織が安定し、脱臼リスクは大幅に低下します。 制限が永続するわけではない点を患者に伝えることで、不安を軽減しながら意欲的にリハビリに取り組んでもらえます。「3週間だけ特に気をつければOKです」という形で、期間を明確にした説明が効果的です。
関連)https://www.fg-kshp.jp/patients/department/orthopedics/artificial-joint/column20230203-01.html
THA術後の感染(手術部位感染:SSI)は発生率こそ低いものの、一度起きると人工関節の抜去・再手術を余儀なくされるため、影響が非常に深刻です。 看護師は創部の発赤・腫脹・熱感・滲出液の性状を毎日観察し、バイタルサインとCRP・WBC等の血液データと合わせて総合的に評価します。感染が疑われるサインは「発熱だけでない」ことが基本です。
関連)https://j-depo.com/news/tha.html
バルンカテーテルの管理も感染予防の重要な一環です。尿バックは床につかない位置に固定し、逆流が起きないよう注意します。 指示が出たら速やかな抜去を確認することが、尿路感染(UTI)予防の原則です。
関連)https://j-depo.com/news/tha.html
高齢患者では術後の褥瘡発生リスクも高まります。禁忌肢位に配慮しながら体位変換を行う必要があり、枕を使った除圧ポジショニングが有効です。 シーツや衣類のしわを丁寧に伸ばすなど基本動作の積み重ねが、褥瘡ゼロにつながります。皮膚保護剤の予防的使用も今では広く推奨されており、「できてから対応」から「できる前に防ぐ」視点への転換が大切です。
関連)https://j-depo.com/news/tha.html
以下のケア情報は日本整形外科学会および国内病院の公開クリニカルパスを参照しています。
人工股関節置換術(THA)の看護|合併症や5つの術後看護計画 – J-DEPO
退院後の患者調査では、多くのTHA術後患者が退院3週間以降も日常生活動作(ADL)の制限に戸惑い続けていることが明らかになっています。 特に「入浴」「家事」「外出時の段差」において不安が強く、退院前の指導がどれほど具体的であったかで術後の生活の質が大きく変わります。退院指導は「禁忌肢位を伝える」で終わってはいけません。
関連)https://redcross.repo.nii.ac.jp/record/16462/files/kitami%208%201-5.pdf
独自の視点として重要なのは、患者の「生活環境の棚卸し」です。自宅の浴槽の高さ、トイレの形式、よく使う椅子の座面高さを術前から確認し、退院前に必要なグッズ(高座椅子・シャワーチェア・ソックスエイドなど)を揃えるよう促すことが本来の生活支援型看護です。これは病棟看護師が主体的にできる介入であり、リハビリ職と連携することで実現できます。これこそ真の退院支援です。
THA術後患者の退院後の生活実態に関する詳細なデータは以下の研究に掲載されています。
人工股関節置換術を受けた患者の退院後の生活実態調査 – 北見赤十字病院
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