嘔吐後にカプセルを吐き出しても、同日再投与すると過剰投与になります。
テモダール(一般名:テモゾロミド)は、悪性神経膠腫および再発または難治性のユーイング肉腫を適応とする経口・静注両用の抗腫瘍薬です。 作用機序はDNAアルキル化であり、腫瘍細胞のDNA複製を阻害することで増殖を抑制します。pins.japic+1
初発の悪性神経膠腫では、まず放射線照射との42日間(6週間)同時併用でテモゾロミド75 mg/m²を投与します。 4週間の休薬後、単独療法として150 mg/m²・5日投与/23日休薬の28日を1クールとして繰り返し、第2クール以降は200 mg/m²まで増量可能です。 これが原則です。shimauma-net+1
再発例では放射線との同時併用期なく、初回から150 mg/m²・5日投与から開始します。 経口カプセルは空腹時に服用し、絶対にカプセルを開封して内容物を取り出してはなりません。shimauma-net+1
| 区分 | 初発(放射線併用期) | 初発(単独療法期) | 再発 |
|---|---|---|---|
| 用量 | 75 mg/m² | 150→200 mg/m² | 150→200 mg/m² |
| 投与日数 | 42日間連日 | 5日間 | 5日間 |
| 休薬期間 | 28日 | 23日(28日1クール) | 23日(28日1クール) |
血液検査の確認は、テモダール療法における最重要チェックポイントです。 各クール開始前に好中球数1,500/mm³以上・血小板数100,000/mm³以上を満たすことが絶対条件で、どちらか一方でも基準未達であれば投与を開始してはなりません。
参考)テモダール点滴静注用100mgの基本情報(副作用・効果効能・…
直前クールで好中球最低値が1,000/mm³未満、血小板最低値が50,000/mm³未満、あるいはGrade 3の非血液学的副作用(脱毛・悪心・嘔吐を除く)が出現した場合は、50 mg/m²の減量が必要です。 100 mg/m²未満への減量が必要となった時点で、投与を中止します。これが条件です。
参考)https://www.carenet.com/drugs/materials/pdf/170050_4219004M1024_1_23.pdf
また、第2クールで増量できなかった場合(最低値不達・副作用基準超過)、それ以降のクールでも増量は原則不可です。 意外ですね。増量は一度の失機が持続的なリスクになります。血液検査の実施タイミングを統一した院内フローとして整備しておくと、見落としを防ぐうえで有効です。
最も頻度が高く重大な副作用は骨髄抑制(白血球・血小板・赤血球の減少)です。 テモゾロミドは腫瘍細胞だけでなく骨髄の造血幹細胞にも作用するため、感染症・出血傾向が生じやすくなります。ohara-ch.co+1
臨床現場で特に注意が必要な点が2つあります。
参考)https://www.ohara-ch.co.jp/appendix/pdf/inc04/temodal-G3.pdf
嘔吐後の再投与禁止は誤りやすいポイントです。 「飲んだかどうかわからないから再度飲む」という患者判断を防ぐよう、投与前の説明が必要です。
また点滴静注用では、血管外漏出による重篤な皮膚症状が稀に発生します。 点滴中に刺痛・灼熱感を訴えた場合は即時中止が原則です。
適正使用ガイドで近年注目されているのが、MGMT(O⁶-メチルグアニン-DNA-メチルトランスフェラーゼ)プロモーターのメチル化状態との関連です。 MGMTはテモゾロミドが引き起こすDNA損傷を修復する酵素であり、このプロモーターがメチル化(不活化)されている患者では、テモゾロミドの効果が相対的に高いとされています。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00003941.pdf
つまり、MGMT検査が陰性(メチル化なし)の患者では、テモダール療法への期待値が下がる可能性があります。 これが条件です。ただし、メチル化がなくても一定の効果例は存在するため、投与を否定するものではありません。
この情報は、特にGrade IV膠芽腫(GBM)の治療計画立案において意思決定支援ツールとして機能します。MGMT検査は確定診断の組織検体から施行され、次世代シーケンサー(NGS)を用いたゲノム解析との組み合わせで精度が高まります。インターネット上の医学文献・ガイドラインも随時更新されているため、最新のJSNO(日本神経腫瘍学会)診療ガイドラインの参照を推奨します。
参考:日本神経腫瘍学会による悪性神経膠腫の最新診療ガイドラインと治療方針
日本神経腫瘍学会(JSNO)公式サイト
実際の外来・病棟現場では、複数のクール管理と患者教育を同時に行う必要があります。 確認漏れを防ぐために、以下の実践チェックリストを活用してください。
投与前チェック(毎クール)
参考)https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2024/03/ppi_temodal_cap_20240401.pdf
服薬指導の必須事項(患者への説明)
参考)http://shimauma-net.jp/tem-guid.pdf
避妊指導は女性6ヵ月・男性3ヵ月が条件です。 この期間差を見落とすと生殖毒性リスクが生じます。男性患者への指導が抜けやすいため、特に注意が必要です。
参考:MSD Connect上のテモダール最新添付文書・患者向医薬品ガイド
テモダールカプセル患者向医薬品ガイド(MSD Connect、2024年4月)