システマティック レビューとは、明確に作られたクエスチョンに対し、系統的で明示的な方法を用いて、適切な研究を同定、選択、評価を行うことで作成するレビューのことです。この手法は従来の文献総説とは根本的に異なり、主観的な偏りを最小限に抑えて客観的で再現性の高い結論を得ることが可能です。
参考)https://jeaweb.jp/glossary/glossary010.html
システマティック レビューの最も重要な特徴は、その透明性と再現性にあります。研究者は事前に詳細なプロトコルを作成し、論文の検索戦略、選択基準、評価方法を明確に定めることで、他の研究者が同じ手順を踏んだ場合に同様の結果が得られるよう配慮されています。
参考)https://www.editage.jp/insights/a-young-researchers-guide-to-a-systematic-review
システマティック レビューの実施には8つの基本ステップがあります。第一にリサーチクエスチョンの明確化から始まり、最終的なレビューのアップデートまで体系的に進められます。
研究課題の設定では、PICO形式(Patient/Population:患者・対象者、Intervention:介入、Comparison:比較対照、Outcome:アウトカム)またはPECO形式(Exposure:曝露要因)を用いることが一般的です。例えば、「無歯顎患者(P)において、インプラントオーバーデンチャーによる補綴治療(I)は、全部床義歯(C)と比べて、咀嚼能力(O)が高いか?」のように明確に定式化されます。
参考)https://compass.readable.jp/2024/09/26/post-349/
プロトコル作成は、レビューの道筋を示す地図的役割を果たし、研究の目的、方法、そして最も関心を寄せた点に関する結果を示すものです。このプロトコルには以下の要素が含まれます:
システマティック レビューは大きく3つの種類に分類されます。質的(Qualitative)システマティック レビューでは、関連研究の結果を要約するものの統計的な統合は行いません。一方、量的(Quantitative)システマティック レビューでは統計的手法を利用して複数の研究結果を統合します。
**メタ解析(Meta-analysis)**は、統計的手法を用いて互いに独立していながらも類似している関連研究の結果の評価を統合し、要約する手法です。メタ解析は過去に行われた複数の臨床試験の結果を統計学の手法を用いて統合し、全体としてどのような傾向が見られるかを解析する研究方法として定義されています。
システマティック レビューとメタ解析は、一般的に医学研究における根拠レベルの最高位とされており、根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine)の実践と診療ガイドライン作成の基盤として重要な役割を果たしています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%9E%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC
統計的統合を行う際は、以下の点に留意する必要があります。
システマティック レビュー論文では、原著論文と同じ構成を用います。通常、題名(タイトル)、抄録(アブストラクト)、序論、方法、結果、考察、参考文献が含まれます。
題名は、レビューのテーマを正確に反映したものでなければならず、「システマティック レビュー」という言葉をタイトルに含めて研究論文の性質を明確に表します。方法セクションでは、プロトコルの詳細、検索戦略、選択基準、データ抽出方法、統計解析計画を明記します。
結果セクションでは、検索結果のフローチャート(PRISMA図)を含め、選択された研究の特性、質評価の結果、統合された効果量を提示します。国際的なガイドラインであるPRISMA声明(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)に従った報告が推奨されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10764628/
効果的な報告のポイント。
医療従事者にとってシステマティック レビューは、単なる研究手法を超えた実践的な価値を持ちます。特に日本の医療現場では、限られた時間の中で最新のエビデンスを効率的に把握する必要があり、システマティック レビューはエビデンス収集の時短ツールとして機能します。
従来の個別論文の読み込みでは数週間かかる文献調査が、質の高いシステマティック レビューを活用することで数時間に短縮できる場合があります。例えば、新しい治療法の導入を検討する際、関連する数十の研究を個別に評価する代わりに、信頼性の高いシステマティック レビュー1本を精読することで、より確実な臨床判断が可能になります。
医療現場での独自活用例。
さらに、システマティック レビューの手法を理解することで、日常業務における情報収集スキルが向上し、批判的思考能力の向上にも寄与します。特に若手医療従事者にとっては、科学的根拠に基づいた意思決定の基礎を身につける重要な学習機会となります。
また、患者中心の医療を実践する上で、システマティック レビューは患者への情報提供の質を向上させる貴重なツールとなります。複数の研究結果を統合した客観的なデータは、患者が治療選択を行う際の重要な判断材料として活用できるのです。
厚生労働省のがん情報サービスでは、診療ガイドライン作成における系統的レビューの重要性が強調されており、医療の標準化と質向上において不可欠な手法として位置づけられています。
参考)https://ganjoho.jp/med_pro/cancer_control/medical_treatment/guideline.html