痛みがないのに、実は約10%の症例では急性の精巣痛が初発症状です。
精巣腫瘍の代表的な症状は「痛みを伴わない精巣の腫れ・しこり(無痛性精巣腫大)」です 。ほとんどの患者が痛みを感じないまま腫瘍が増大するため、「痛くないから大丈夫」という思い込みが受診遅延につながります 。
関連)http://www.kms.ac.jp/~uro/patient/disease/testiculartumor.html
局所症状と全身症状を整理すると次の通りです。
関連)https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/Testicular/001/index.html
関連)https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/Testicular/001/index.html
腫瘍が進行すると、これらの転移症状が先に現れて精巣腫瘍と診断されるケースも珍しくありません 。臨床では「腰痛」を主訴として内科や整形外科を受診した後に、精巣腫瘍の後腹膜転移と判明する例があります。
つまり、主訴が精巣と無関係でも鑑別に加える必要があります。
見落としが起きる主因は「無症状」と「受診遅延」の組み合わせです 。精巣腫瘍の症状は痛みがないために患者自身が「重要でない」と判断し、泌尿器科受診まで数か月〜1年以上かかるケースが報告されています。
関連)http://www.kms.ac.jp/~uro/patient/disease/testiculartumor.html
受診遅延が生じる背景には次の要因があります。
医療従事者としての対応ポイントは2つです。
1. 若い男性の腰痛・腹痛で鑑別に精巣腫瘍を加える:後腹膜リンパ節転移が原因の場合、陰嚢症状なしに腰痛だけで来院することがある。触診・エコーで確認する姿勢が重要。
2. 患者教育として自己検診(セルフチェック)を伝える:入浴後など精巣が緩んだ状態で、左右の大きさ・硬さ・しこりの有無を月1回確認するよう指導する。
これが早期発見の基本です。
💡 参考:自己検診の具体的な手順については日本泌尿器科学会や国立がん研究センターが詳しい情報を提供しています。
国立がん研究センター:精巣がんの原因・症状について(症状と自己検診の解説)
症状から精巣腫瘍を疑った場合、まず実施するのは陰嚢超音波(エコー)検査です 。エコー検査は非侵襲的で感度が高く、腫瘍の有無・血流・内部性状を把握するのに優れています。精巣腫瘍が疑われた場合は速やかに実施が原則です。
関連)https://www.twmu.ac.jp/KC/Urology/disease/cancer/testicle/
腫瘍マーカーも診断に欠かせません。以下の3種が主要マーカーです。
| マーカー | 陽性となる主な組織型 | 特記事項 |
|---|---|---|
| AFP(α-フェトプロテイン) | 卵黄嚢腫瘍・胎児性がん | セミノーマでは上昇しない |
| β-hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン) | 絨毛がん・混合型 | 女性化乳房の原因となる |
| LDH(乳酸脱水素酵素) | 進行例全般 | 腫瘍量・予後と相関 |
AFP が上昇している場合、セミノーマの診断は実質除外されます。意外ですね。
腫瘍マーカー単独での確定診断は行わず、エコー・CT・高位精巣摘除術の病理診断と組み合わせて判断します 。CT検査は後腹膜・縦隔・肺転移の評価に必須です。
関連)https://oogaki.or.jp/gan/classification/organ-classification/urogenital-cancer/testicular-cancer/
💡 参考:腫瘍マーカーと組織型の関係については以下が詳しいです。
東京女子医科大学 泌尿器科:精巣腫瘍について(マーカー・診断の解説)
精巣腫瘍は組織型によって治療戦略が大きく分かれます。大別するとセミノーマ(精上皮腫)と非セミノーマの2種類です 。
関連)https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/urology/urinary/testicular-tumor/
| 項目 | セミノーマ | 非セミノーマ |
|---|---|---|
| 主な腫瘍マーカー | β-hCG(低値)、LDH | AFP、β-hCG、LDH |
| 放射線感受性 | 高い(放射線療法が有効) | 低い |
| 主要治療法(限局期) | 高位精巣摘除術+経過観察 or 放射線 | 高位精巣摘除術+化学療法 or RPLND |
| 化学療法レジメン | BEP療法など | BEP療法(ブレオマイシン・エトポシド・シスプラチン) |
| 予後 | 比較的良好 | 進行例では多様 |
まず高位精巣摘除術が行われ、その後の病期・組織型に応じて補助療法を追加します。BEP療法はシスプラチンベースのレジメンで、転移例でも高い治療成績が得られます 。
関連)https://oogaki.or.jp/gan/classification/organ-classification/urogenital-cancer/testicular-cancer/
これが精巣腫瘍治療の柱です。
ステージⅠでは高い治癒率が期待でき、ステージⅢの転移例でも積極的な化学療法により根治が目指せます。妊孕性温存を希望する場合は、治療開始前に精子凍結保存を検討することが推奨されています 。
関連)https://oogaki.or.jp/gan/classification/organ-classification/urogenital-cancer/testicular-cancer/
医療従事者が特に意識すべき非典型例が存在します。「精巣にしこりがある=精巣腫瘍」と直結する症例だけを疑っていると見落とすリスクがあります。
非典型パターンを以下に整理します。
関連)https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/urology/urinary/testicular-tumor/
急性炎症と鑑別できるかが勝負です。
臨床で「20〜40代男性」「腰痛や腹部腫瘤」「腫瘍マーカー異常」の3条件が揃ったら、精巣の触診・エコーを必ず追加するフローを確立しておくことが、見落とし防止につながります。精巣腫瘍は発見から治療までのスピードが予後を左右するため、迷ったら早めの泌尿器科コンサルトが原則です 。
💡 参考:愛媛大学泌尿器科が詳細な臨床情報を掲載しています。
愛媛大学医学部 泌尿器科学:精巣腫瘍(臨床像と治療方針の詳細)