3年以上継続投与しても非定型骨折リスクがゼロになる患者はいません。
リセドロン酸ナトリウムの副作用で最も頻繁に問題になるのが消化器系の症状です。週1回17.5mg投与群では、副作用全体の発現頻度が24.9%に達するというデータがあります。
参考)リセドロン酸ナトリウム水和物(アクトネル、ベネット) - 神…
胃不快感の発現頻度は6.0%と最も高く、続いて悪心2.2%、上腹部痛1.6%、下痢1.5%と報告されています。 投与量の違いによる症状の出方にも注意が必要です。
参考)リセドロン酸Na錠17.5mg「JG」の効能・副作用|ケアネ…
| 副作用 | 発現頻度 | 特徴 |
|---|---|---|
| 胃不快感 | 6.0%(5%以上) | 最頻出、持続的な不快感 |
| 便秘・上腹部痛 | 1〜5%未満 | 食後に増悪しやすい |
| 悪心・下痢 | 1%未満 | 一過性が多い |
| 食道潰瘍・食道穿孔 | 頻度不明(重大) | 服用方法不徹底で発現リスク増 |
上部消化管障害は重大な副作用に分類されており、食道穿孔・食道狭窄・食道潰瘍・食道炎などが「頻度不明」ながらも報告されています。 胃潰瘍は0.1%未満の発現とされていますが、患者の服薬姿勢・服用後の行動が症状発現に直結するため、服薬指導が特に重要です。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00061465.pdf
服薬後は少なくとも30分間は横にならず、コップ一杯(約180mL以上)の水で服用させることが原則です。 上部消化管障害の既往がある患者では特に慎重な経過観察が求められます。
消化器症状が出た場合は速やかに処方医へ連絡するよう、患者への事前説明が基本です。
参考)リセドロン酸Na (リセドロン酸ナトリウム水和物) 東和 […
顎骨壊死(MRONJ)はビスホスホネート系薬剤全体に共通するリスクですが、特に歯科処置との組み合わせで発現頻度が大きく変わります。 リセドロン酸ナトリウムを含む経口ビスホスホネート製剤の場合、抜歯を受けた患者での発生頻度は0.09〜0.34%とされており、投与中に抜歯などの侵襲的処置を受ける際のリスクが顕著に上がります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1l01.pdf
服用開始から顎骨壊死が発症するまでの期間は、おおむね1〜2年が最も多いとされています。 侵襲的な歯科処置がある場合には、服用開始7ヵ月程度での発症報告もあります。 意外に早い段階で起こり得るということですね。
顎骨壊死のリスク因子は、薬剤の種類・投与期間だけでなく、口腔衛生状態・全身性疾患(糖尿病・悪性腫瘍など)・コルチコステロイド併用の有無なども関与します。 医師単独ではなく、歯科医師との連携なしには予防が困難です。
参考)https://www.jsoms.or.jp/medical/pdf/work/guideline_202307.pdf
リセドロン酸ナトリウム投与開始前に、う蝕・歯周病・残存歯根などの口腔内処置を済ませておく歯科受診勧奨が重要です。 これが条件です。投与中に緊急の抜歯が必要になった場合の対応を、あらかじめ歯科医師と相談しておく体制を整えることも、医療従事者に求められる実践的な管理です。
歯科と連携した患者管理フローの整備は、顎骨壊死という回避可能なリスクを大幅に下げる手段になります。
リセドロン酸ナトリウムを長期使用する際に軽視できないのが、非定型骨折のリスクです。3年以上の継続使用で非定型骨折のリスクが2.5倍に上昇するとの報告があります。 「骨折を防ぐ薬で骨折する」という逆説的な状況が起こり得るわけです。
非定型骨折は主に大腿骨転子下・近位大腿骨骨幹部・近位尺骨骨幹部などに発現します。 これらの骨折が起こる数週間から数ヵ月前に、大腿部・鼠径部・前腕部等での前駆痛(鈍い痛み)が報告されています。 前駆痛を見落とさないことが早期発見の鍵です。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00061396.pdf
投与開始前から定期的なX線・DXA検査でのモニタリングが推奨されており、長期投与においては投与継続の利益とリスクを比較衡量した上での判断が必要です。
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000241844.pdf
骨粗鬆症治療の目標は骨折予防であり、薬の継続が目的化してしまうことには注意が必要です。 5年前後での投与中断(ドラッグホリデー)の検討も、適切な管理方法の一つとして知られています。
参考)https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/clinical_practice_of_geriatrics_50_2_144.pdf
厚生労働省が発表している非定型骨折に関するリスク情報も確認しておくと、患者説明の根拠として有用です。
ビスホスホネート系薬剤の副作用として、顎骨壊死よりも認知度が低いのが外耳道骨壊死です。リセドロン酸ナトリウムを含むビスホスホネート製剤投与例において、外耳道真珠腫の発生頻度は非投与例の約3.7倍(0.026% vs 0.007%)に上昇するとの報告があります。 数字としては小さく見えますが、非投与群の約4倍近いリスクです。
外耳道骨壊死の症状は、耳痛・耳漏・外耳炎症状として現れることが多く、耳鼻咽喉科で初めて診断されるケースも少なくありません。 患者から「耳が痛い」「耳から液が出る」という訴えがあった場合、服用中のビスホスホネート製剤についての情報共有が耳鼻咽喉科医との連携に役立ちます。
消化器系・顎骨・大腿骨に意識が向きがちな現場で、外耳道への影響は見落とされやすい副作用の一つです。 これは要注意です。添付文書にも「外耳道骨壊死」が記載されており、定期診察時に耳症状の問診を加えることが、早期発見につながります。
参考)https://www.nichiiko.co.jp/medicine/file/18230/patient_guide/18230_patient_guide.pdf
患者への説明時には「耳の痛みや耳だれが続く場合は早めに申し出てほしい」と一言添えるだけで、見落とすリスクが大幅に下がります。
ビスホスホネート製剤投与中に外耳道骨壊死を発症した症例報告(日本耳鼻咽喉科学会誌掲載)も、現場教育の資料として有用です。
薬の説明を「副作用一覧を読む」だけで終わらせると、患者の服薬継続率は低下します。消化器症状や顎骨壊死リスクを正確に伝えながらも、患者の不安を必要以上に煽らないバランスが医療従事者に求められる実践的スキルです。
服薬指導で特に意識すべき内容を整理すると、以下のようになります。
副作用の発現頻度だけを伝えるのではなく、患者が実際に気をつけられる行動レベルの説明に落とし込むことが大切です。 これが服薬指導の質を高める基本です。
骨粗鬆症治療においては、薬の中止が骨折リスクの急上昇につながるケースもあることから、副作用への不安で勝手に服薬をやめないよう患者教育することも重要です。
顎骨壊死リスクに関する情報を患者向けにまとめた愛媛大学医学部附属病院の資料は、口腔ケアの指導に活用できます。