脳梗塞は発症から時間との勝負となる疾患です。症状の早期発見が患者の予後を大きく左右するため、典型的な症状を理解しておくことが重要です。脳梗塞の症状は、障害された脳の部位によって異なりますが、主に以下のようなものがあります。
【主な症状】
特に重要なのは「FAST」と呼ばれる脳梗塞の早期発見法です。これは以下の症状を確認するものです。
F(Face) | 顔の片側が下がる、ゆがみがある |
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A(Arm) | 片腕に力が入らない |
S(Speech) | 言葉が出てこない、ろれつが回らない |
T(Time) | 発症時刻を確認し、すぐに119番通報 |
また、一過性脳虚血発作(TIA)も見逃せません。これは数分〜数時間で症状が消失するもので、本格的な脳梗塞の前触れとされています。TIAと思われる症状があった場合も、すぐに医療機関を受診するよう指導することが重要です。
脳梗塞は発症メカニズムや原因によって大きく3つのタイプに分類されます。それぞれのタイプによって治療方針や予後が異なるため、正確な分類が重要です。
1. アテローム血栓性脳梗塞(約34%)
比較的大きな脳動脈のアテローム硬化による狭窄や閉塞で生じます。動脈硬化のリスク因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙など)を持つ患者に多く見られます。
発症メカニズム:
2. 心原性脳塞栓症(約27%)
心臓内で形成された血栓や心臓を経由する塞栓子が脳動脈に流れて閉塞を起こします。
主な原因:
3. ラクナ梗塞(約32%)
脳の深部にある細い穿通枝の閉塞によって生じる小梗塞です。
特徴:
脳梗塞の治療において、超急性期の対応は予後を大きく左右します。「Time is Brain(時間は脳である)」という言葉が示すように、1分1秒を争う治療が求められます。
【超急性期(発症4.5時間以内)の主な治療法】
1. 血栓溶解療法(rt-PA静注療法)
発症から4.5時間以内の脳梗塞患者に対して、遺伝子組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rt-PA)を静脈内投与し、血栓を溶解させる治療法です。
2. 血管内治療(血栓回収療法)
主に脳主幹動脈閉塞による重症脳梗塞に対して行われます。
【血管内治療のメリット】
脳梗塞の治療は、超急性期を過ぎた後も継続的なケアが必要です。急性期から慢性期にかけての適切な治療により、合併症予防や機能回復、再発防止が可能となります。
【急性期の治療】
1. 抗血栓療法
脳梗塞のタイプに応じた抗血栓療法を選択します。
2. 脳保護療法
フリーラジカルスカベンジャーであるエダラボンを投与し、虚血による二次的な脳損傷を軽減します。
3. 全身管理
【回復期の治療】
1. リハビリテーション
脳の可塑性を利用した集中的なリハビリテーションを行います。
【慢性期の治療】
1. 二次予防
再発予防が最重要課題となります。
近年、脳梗塞治療は大きく進化しています。特に2015年以降、複数の大規模臨床試験により血管内治療の有効性が確立され、治療の選択肢が広がりました。医療従事者として知っておくべき最新の治療アプローチについて解説します。
【新しい血管内治療のアプローチ】
【医療連携の重要性】
脳梗塞治療の成功には、スピーディーな対応が不可欠です。そのためには、医療機関同士の連携が重要となります。
【AI技術の導入】
人工知能(AI)技術の発展により、脳梗塞診療にも革新がもたらされています。
【チーム医療の実践】
脳梗塞患者の治療とケアには、多職種によるチームアプローチが不可欠です。
定期的なカンファレンスを通じて情報共有を行い、患者中心の一貫したケアを提供することが重要です。
脳梗塞の治療は、「時間との戦い」という側面があります。医療従事者は常に最新の知識と技術を習得し、チームとして連携しながら、一人ひとりの患者に最適な治療を提供することが求められています。