ジェネリックに切り替えれば必ず安くなる、は思い込みです。イグザレルトの場合、先発品を希望した患者は2024年10月以降、追加の自己負担が発生するようになりました。
イグザレルト(リバーロキサバン)の後発品は、2024年12月6日に薬価基準へ追補収載され、7社18品目が一斉に市場へ参入しました。薬価算定のルールとして、先発品に新薬創出等加算が適用されていたため、単純な先発品薬価の0.5掛けではなく、加算分を差し引いた上での0.5掛けという計算になっています。
結果として、イグザレルト15mg錠(先発品437.2円)に対し、後発品は226.7円となり、対先発比は約47.6%です。15mgOD錠は先発品442.3円に対して後発品226.7円で、対先発比は約47.0%となりました。先発品の半額以下というのが、ひとつの目安です。
以下に主要な薬価をまとめます。
| 販売名 | 規格 | 薬価 | 区分 |
|---|---|---|---|
| イグザレルト錠 | 10mg | 331.6円/錠 | 先発品 |
| イグザレルト錠 | 15mg | 437.2円/錠 | 先発品 |
| イグザレルトOD錠 | 10mg | 331.6円/錠 | 先発品 |
| イグザレルトOD錠 | 15mg | 442.3円/錠 | 先発品 |
| リバーロキサバン錠「サワイ」他 | 10mg | 161.3円/錠 | 後発品(GE) |
| リバーロキサバン錠「サワイ」他 | 15mg | 226.7円/錠 | 後発品(GE) |
| リバーロキサバンOD錠「バイエル」 | 10mg | 161.3円/錠 | AG(後発品) |
| リバーロキサバンOD錠「バイエル」 | 15mg | 226.7円/錠 | AG(後発品) |
薬価はAGと通常GEで差がない点が原則です。患者の1日薬剤費で試算すると、15mgを毎日服用する場合、先発品では1日437.2円(月約1万3000円)ですが、後発品では1日226.7円(月約6800円)となり、月あたり約6200円の差が生じます。これが年間に積み上がると約7万4000円の差になる計算で、長期服用が前提となる抗凝固療法ではインパクトの大きな数字です。
参考リンク(イグザレルト系後発品の薬価を含む全品目一覧)。
KEGG MEDICUS リバーロキサバン商品一覧(バイエル先発品・各社後発品の薬価比較)
イグザレルト後発品の最大の注意点は、適応症が製品ごとに異なる"虫食い効能"の問題です。これが、処方・調剤現場で最も見落とされやすいリスクです。
先発品のイグザレルトは、小児の適応2つを含む5つの適応を持っています。一方、発売当初のAG(リバーロキサバン「バイエル」)は①非弁膜症性心房細動における虚血性脳卒中・全身性塞栓症の発症抑制、②静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制——の2つの成人適応のみでした。通常のGEについては発売当初、①の非弁膜症性心房細動の適応のみで承認されていたため、VTE治療目的には使用できませんでした。
つまり同じリバーロキサバンという成分でも、どのメーカーの後発品を選ぶかによって、使える適応が変わってくるのです。
その後、2025年12月に複数のGEメーカーが追加承認を取得し、2026年1月から2月にかけて、日医工やその他後発各社でも成人・小児の静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制の適応が追加されています。日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会(JGA)が公開する「効能効果・用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」は、2026年2月18日更新版においても、リバーロキサバン後発品の適応整備状況をリストアップしており、最新情報の確認が求められます。
現場での対応としては、処方された患者の疾患名(心房細動なのかVTEなのか)と、採用している後発品の添付文書上の効能・効果が一致しているかを毎回確認することが重要です。VTE治療目的で後発品を調剤する際は、当該製品が当該適応を取得済みかどうかを添付文書で確認する——これが基本です。
参考リンク(後発品の効能・用法等の違いリスト最新版)。
JGA 効能効果・用法用量等に違いのある後発医薬品リスト(2026年2月18日更新版)
参考リンク(ミクスOnlineによるイグザレルト後発品の適応・薬価解説)。
ミクスOnline:2024年12月追補収載でイグザレルトに7社18品目・適応の違いを詳解
2024年10月から始まった長期収載品の選定療養制度の下、イグザレルトは2026年4月の改定で新たに選定療養の対象品目に追加されました。この制度は重要です。
制度の仕組みを整理すると、後発品が存在する先発品(長期収載品)を患者が希望した場合、医療上の必要性がなければ「先発品と最も高い後発品との薬価差額の1/4」を患者が追加で自己負担します。通常の保険適用分(1〜3割)の上乗せとなるため、患者の実質負担はさらに増えます。
具体的な試算を見てみましょう。イグザレルト15mg錠(先発品437.2円)と後発品(226.7円)の差額は210.5円です。この1/4の約52.6円が1錠あたりの追加自己負担となります。1日1錠・30日分の処方であれば、追加負担は月約1578円です。3割負担の患者の場合、元の自己負担は月3931円(先発品薬価ベース)ですが、選定療養費が加わると月5509円程度になります。これは無視できない金額ですね。
医師・薬剤師としては、患者に後発品への切り替えを提案するとともに、「先発品のままでは追加費用が発生する」という説明が義務として求められるようになっています。特に長期処方・リフィル処方が増えている現状では、患者1人ひとりへの丁寧な説明が欠かせません。
なお、イグザレルトの選定療養対象への追加は、後発品が市場に安定供給されるようになったことを受けた措置です。後発品が出回っていない段階では選定療養の対象になりませんが、2024年12月収載から1年以上が経過し、供給体制が整ったと判断されたことが背景にあります。この経緯が条件です。
参考リンク(厚生労働省:長期収載品の選定療養に関する公式情報)。
厚生労働省:後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について
2024年12月にジェネリックが登場するまで、なぜイグザレルトには後発品がなかったのか。この経緯を把握しておくと、今後の類似事例への応用が利きます。
イグザレルト錠10mg・15mgが「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」を効能として最初に承認されたのは2011年1月(薬価収載は2012年4月)です。成人向けの再審査期間は2020年1月に終了しました。通常であれば、再審査期間終了後に後発品が参入できます。
しかしここで問題が生じました。バイエルは特許期間の延長登録を行い、「特許は切れていない」と主張し、2020年12月・2021年6月と2回にわたって謹告を発出しました。さらに2021年1月に小児への適応が追加承認され、その再審査期間が2025年1月まで続いたため、成分全体としての後発品発売の障壁となっていました。
こうした法的・制度的な状況を受けて、バイエルの子会社であるバイエルライフサイエンスが先行してAG(オーソライズド・ジェネリック)の承認申請を行い、最終的に2024年12月の薬価収載・発売に至りました。意外ですね。
先発品メーカーが自社のAGを発売する意図は、他社GEにシェアを奪われるくらいなら、自社グループのAGで受け皿を作ろうというものです。そのため、今回のAGは第一三共エスファが情報提供活動と販売を担う形で、第一三共の流通網を活用するという異例の形態が採られています。AG・GEのどちらを採用するかは医療機関・薬局の方針によりますが、AGは先発品と同一の添加物・製法を使うとされており、安定性・溶出性の面での差異が少ない点が特徴です。なお今後、2025〜2026年の薬価改定の流れの中で、後発品の薬価はさらに引き下げられる可能性があります。価格変動には引き続き注意が必要です。
ここまでの情報を踏まえて、実際の処方切り替えや調剤の場面でどう動くかを整理します。確認すべきステップは明確です。
まず確認すべきは、処方患者の疾患名と適応の一致です。前述のとおり、後発品ごとに取得している適応症が異なります。2026年3月時点では多くの後発品で適応が揃ってきていますが、採用銘柄の添付文書は必ず最新版で確認してください。特に「小児の静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制」については、AGは2025年12月に取得済みですが、通常GEは2026年1〜2月に順次取得しており、施設ごとの採用品の状況把握が必要です。
次に、患者への説明と同意の確認です。先発品を希望する患者には選定療養費が発生することを伝えるとともに、後発品の安全性・有効性が先発品と同等であることを説明します。特に長期服用の抗凝固薬であることを考慮すると、「飲み替えが怖い」という患者の不安に対して丁寧に向き合うことが信頼構築につながります。これは使えそうです。
さらに、剤形の選択という視点も重要です。イグザレルトにはOD錠(口腔内崩壊錠)と通常錠があり、後発品も両剤形が揃っています。嚥下機能に問題のある患者や、水なしで服用したい患者にはOD錠の選択が有効です。OD錠と通常錠で薬価は同じ(10mg 161.3円、15mg 226.7円)のため、患者背景に応じた選択ができます。
最後に、今後の薬価変動の把握です。後発品が発売されると、通常は翌々年の薬価改定でさらなる引き下げが行われます。薬局・病院の採用品目リストや薬価の更新情報を定期的にチェックし、患者負担額の再計算を行うことが、適切な医療費管理につながります。後発品普及率の目標達成と、患者1人ひとりの負担軽減——この2つを意識した対応が、現場で求められる専門性です。
参考リンク(日経メディカル処方薬事典:リバーロキサバン錠の薬一覧・価格比較)。
日経メディカル処方薬事典:リバーロキサバン錠の薬一覧(先発品・後発品の薬価を一括確認)