グラゾプレビル販売中止後の代替治療と患者対応の完全ガイド

グラゾプレビル(グラジナ)はなぜ2021年に販売中止となったのか?医療従事者が知るべき代替薬マヴィレットへの切り替え方法や注意点、現行ガイドラインの最新情報を解説します。あなたの患者対応は本当に万全ですか?

グラゾプレビル販売中止の背景と医療従事者が取るべき対応

販売中止になったグラゾプレビルは、実は「治療効果が不十分だから消えた」のではなく、SVR率99%近い薬に置き換えられたために市場から退場した薬です。


グラゾプレビル販売中止:3つのポイント
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販売中止の時期

2021年10月末に販売中止。薬価削除は2022年4月1日で、以降は保険請求不可となりました。

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主な代替薬

マヴィレット配合錠(グレカプレビル/ピブレンタスビル)が現在の第一選択。パンジェノタイプ対応で最短8週治療が可能です。

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ガイドライン改訂

2023年1月のC型肝炎治療ガイドライン第8.2版で、エルバスビル・グラゾプレビル併用療法の記載が正式に削除されました。

グラゾプレビルの特徴と販売中止に至るまでの経緯

グラゾプレビル(商品名:グラジナ錠50mg)は、MSD株式会社が製造・販売していたHCVプロテアーゼ阻害薬(NS3/4A阻害薬)です。 エルバスビル(商品名:エレルサ錠50mg)と組み合わせて使用するDAA(直接作用型抗ウイルス薬)であり、2016年11月に発売されました。pmda.go+1
C型慢性肝炎に対して高い有効性を示し、当初はジェノタイプ1型・2型への治療選択肢として評価されました。しかし2017年に登場したマヴィレット配合錠(グレカプレビル/ピブレンタスビル)がパンジェノタイプ対応・最短8週治療・リバビリンフリーを実現したことで、C型肝炎治療の地図は大きく塗り替えられました。 つまり、グラゾプレビル自体が「効かなかった」のではありません。


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MSD株式会社は2021年5月31日に販売中止を発表し、「C型肝炎治療におけるEBR/GZRへの医療ニーズが大きく変化したことを勘案し、販売を中止することとした」と説明しています。 最終出荷品の使用期限はエレルサが2022年3月末、グラジナが2022年12月末でした。 薬価削除は2022年4月1日であり、それ以降は保険請求が不可となっています。msdconnect+1
これが基本的な流れです。


グラゾプレビル販売中止後のC型肝炎ガイドライン改訂ポイント

2023年1月に日本肝臓学会が「C型肝炎治療ガイドライン第8.2版」を公表しました。 この改訂版では、エルバスビル・グラゾプレビル併用療法が治療推奨から正式に削除されています。 ソホスブビル(ソバルディ)の製造中止に伴う記載削除も同時に行われた改訂です。kanen.jihs.go+1
現行ガイドラインにおける第一選択薬は以下の通りです。


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  • 🟢 マヴィレット配合錠(グレカプレビル/ピブレンタスビル):ジェノタイプ1〜6型のパンジェノタイプ対応、最短8週

  • 🟢 エプクルーサ配合錠(ソホスブビル/ベルパタスビル):同じくパンジェノタイプ対応、12週

  • 🟡 ハーボニー配合錠(レジパスビル/ソホスブビル):主にジェノタイプ1型・2型

特に注目すべき点があります。 マヴィレットは「透析患者を含む腎障害患者にも適応がある」という特徴を持っています。 グラゾプレビルが腎機能低下患者に対して使用可能な選択肢として位置づけられていたことを踏まえると、同じニーズをマヴィレットが引き継いでいることになります。


現在の初回投与例でのウイルス排除率(SVR率)は約99%に達しています。 この高い数字が意味するのは、適切な薬剤を選択して処方した場合、ほぼすべての患者でウイルスを排除できるということです。つまり治療そのものよりも、「確実に患者を治療に結びつけること」が現在の最大の課題といえます。


グラゾプレビルと現行薬マヴィレットの違いを医療従事者が押さえるべき理由

グラゾプレビル(エレルサ/グラジナ)とマヴィレットはどちらもプロテアーゼ阻害薬を含む組み合わせですが、作用範囲や治療期間に明確な違いがあります。 以下に主な違いを表にまとめます。










項目 エレルサ/グラジナ(グラゾプレビル) マヴィレット(グレカプレビル/ピブレンタスビル)
対応ジェノタイプ 主にGT1型・4型 GT1〜6型(パンジェノタイプ)
治療期間(未治療例) 12週 最短8週
腎障害患者への適応 あり(透析患者含む) あり(透析患者含む)
リバビリン併用 原則不要 不要
現在の保険適用 ❌ 2022年4月以降不可 ✅ 適用あり
販売状況 販売中止(2021年10月) 販売継続中

医療従事者にとって重要なのは、患者の紹介状や診療録にエレルサ/グラジナが記載されていた場合の解釈です。 それが「DAA治療歴あり」として引き継がれるため、次の治療選択時に影響します。 DAA既治療患者へのマヴィレット再投与については、ガイドラインの確認が必須です。


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グラゾプレビル販売中止後に知っておくべき患者切り替え時の注意点

現時点で経過観察中の患者に「以前グラゾプレビルで治療した」という履歴がある場合、その治療がSVRを達成しているかどうかの確認が最優先です。 SVR達成済みなら、原則として追加の抗ウイルス治療は不要です。


問題になるのは、SVRを達成できなかったDAA既治療患者への対応です。 マヴィレットはDAA既治療例にも使用できますが、過去の治療歴・耐性変異の有無を踏まえた選択が求められます。 グラゾプレビル(NS3/4A阻害薬)で治療歴がある患者には、同じプロテアーゼ阻害薬を含むマヴィレットを使用する際、耐性変異(特に168位のアミノ酸変異)が懸念されます。pmda.go+2
以下の点が患者対応時の確認リストになります。



  • 📋 過去のDAA治療歴と使用薬剤名の確認(エレルサ/グラジナの処方記録)

  • 🧬 SVR達成の有無(治療終了後12週目のHCV RNA陰性化)

  • 💊 耐性変異検査の実施(SVR未達成例、特にNS3領域)

  • 🏥 専門医(肝臓専門医)への紹介の検討

  • 📅 フォローアップ計画の再設定

耐性変異が確認された場合の治療方針は、エプクルーサ+リバビリン24週投与が選択肢となるケースもあります。 この場合はリバビリンの副作用管理も含めた患者説明が必要になります。 準備が大切ですね。


グラゾプレビル販売中止が示すC型肝炎撲滅に向けた残された課題

グラゾプレビルを含む複数のDAA薬が相次いで販売中止となっている背景には、C型肝炎治療が「治せる病気」として確立されたという医療の進歩があります。 SVR率が99%に達した現在、問題の本質は「治療薬の有効性」ではなく「治療が必要な患者が治療を受けていない」という点に移っています。


実臨床において、陽性患者の治療への移行割合が伸び悩んでいることが課題として指摘されています。 つまり、薬は存在するのに患者が受診・治療に至っていないケースが残っているわけです。 医療従事者にとって、この「見えない未治療患者の発掘」こそが次の役割といえます。


日本肝臓学会のC型肝炎治療ガイドラインは定期的に改訂されており、最新版を参照することが臨床実践の基本です。


参考)C型肝炎治療ガイドライン|日本肝臓学会ガイドライン|ガイドラ…


C型肝炎治療の最新ガイドラインについては、日本肝臓学会の公式ページから最新版を確認できます。
日本肝臓学会 C型肝炎治療ガイドライン(最新版)
販売中止の公式通知(MSD株式会社)。
エレルサ・グラジナ販売中止に関するお知らせ(MSD株式会社)
グラゾプレビルの承認・薬事情報の詳細はPMDA(医薬品医療機器総合機構)で確認できます。
グラジナ錠50mg 審議結果報告書(PMDA)