医療者のあなた、朝コルチゾール正常でも見逃します。

cushing症候群の診断基準を整理するとき、まず「クッシング病」と「クッシング症候群」を同じものとして扱わないことが大切です。日本の公開資料では、下垂体ACTH産生腺腫によるクッシング病には専用の診断の手引きがあり、副腎性顕性クッシング症候群や潜在性クッシング症候群にも別の診断基準が用意されています。
関連)https://square.umin.ac.jp/kasuitai/doctor/guidance/cushing.pdf
ここが出発点です。
クッシング病の手引きでは、特異的症候と非特異的症候をそれぞれ1つ以上認め、血中ACTHとコルチゾールの同時測定を必須所見として、その後に0.5mgデキサメサゾン抑制試験、深夜コルチゾール、DDAVP、深夜唾液コルチゾールなどへ進みます。
関連)https://www.hosp.jihs.go.jp/eatc/100/cushing.html
一方で潜在性、いわゆるサブクリニカルでは、典型的なクッシング徴候を欠くこと自体が前提です。しかも高血圧、全身性肥満、耐糖能異常は「特徴的所見とは見なさない」とされており、日常診療でつい症候を強く読みすぎる医療者ほど、判断を外しやすい構造になっています。
関連)https://www.matsunami-hsp.or.jp/wp-content/uploads/2015/10/criterion.pdf
下垂体性クッシング病の公開手引きでまず押さえたい数字は、少量デキサメサゾン0.5mg、翌朝血中コルチゾール5µg/dL以上です。以前は1〜2mgが使われていましたが、一部症例で抑制されてしまうため、感度を上げる目的で0.5mgが採用されています。
関連)https://www.hosp.jihs.go.jp/eatc/100/cushing.html
数字が重要です。
さらに複数日の深夜睡眠時血中コルチゾール5µg/dL以上、DDAVP 4µg静注後ACTH 1.5倍以上、深夜唾液コルチゾールが施設平均の1.5倍以上のいずれかを満たすと、ACTH依存性クッシング症候群を考えて確定診断検査へ進みます。
関連)https://square.umin.ac.jp/kasuitai/doctor/guidance/cushing.pdf
確定診断では、CRH 100µg後のACTH頂値1.5倍以上、大量デキサメサゾン8mg後にコルチゾールが前値の半分以下、MRIで下垂体腫瘍を証明、静脈洞サンプリングで中枢/末梢比が基礎値2以上、CRH刺激後3以上が重要です。つまり「ホルモン動態」「抑制試験」「画像」「静脈サンプリング」を1本ずつ積み上げる設計ですね。
関連)https://www.hosp.jihs.go.jp/eatc/100/cushing.html
診断の手引きの詳細を確認したい場面では、下垂体性クッシング病の数値基準がまとまっています。
クッシング病の診断の手引き(平成21年度改訂)
医療従事者が見落としやすいのは、朝の基礎コルチゾールが正常でも否定できない点です。日本内分泌学会の一般向け解説でも、コルチゾール値が正常でも、深夜高値やデキサメサゾン負荷後高値が確認されれば確定診断につながると説明されています。
関連)https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=31
つまり正常値でも油断できません。
もう一つの盲点は、24時間尿中遊離コルチゾールが「必ず高い」と思い込むことです。クッシング病の手引きでは、血中ACTHとコルチゾール同時測定が必須で、尿中遊離コルチゾールは高値〜正常でもよい整理になっており、正常だから即除外とは書かれていません。
関連)https://www.hosp.jihs.go.jp/eatc/100/cushing.html
画像にも注意です。
下垂体MRIの陽性率は1.5テスラで60〜80%程度とされ、見えないから否定ではなく、3テスラ推奨や静脈洞サンプリングに進む発想が必要です。ただし3テスラでは小さな偶発腫を拾う可能性もあり、「見えたから責任病巣」と短絡すると局在診断で時間を失います。
関連)https://www.hosp.jihs.go.jp/eatc/100/cushing.html
ここは顕性と逆です。
公開されている基準では、1mgデキサメサゾン抑制試験で3µg/dL以上なら可能性を考え、続く8mg抑制試験で1µg/dL以上なら本疾患を考えるとされています。またACTH基礎値が10pg/mL未満などの抑制所見、日内リズム消失、DHEA-S低値などを組み合わせます。
関連)https://www.matsunami-hsp.or.jp/wp-content/uploads/2015/10/criterion.pdf
新しい流れも知っておきたいところです。
研究班の資料では、サブクリニカルクッシング症候群の広義スクリーニングとしてDex 1mg負荷後1.8µg/dLという新カットオフが提唱されており、従来の3µg/dLだけで覚えていると拾い上げが鈍る可能性があります。結論は病型と年代で基準を照合することです。
関連)https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2017/172051/201711097A_upload/201711097A0017.pdf
潜在性クッシング症候群の位置づけを確認したい場面では、日本内分泌学会の課題一覧が役立ちます。
日本内分泌学会 臨床重要課題
検索上位の記事は「検査の種類」を並べるものが多いですが、実臨床では「どの病型を疑って、どの順番で詰めるか」の方が外しません。たとえば副腎偶発腫が先に見つかった症例に、下垂体性クッシング病の流れをそのまま当てると、検査の意味づけがぶれて説明にも時間がかかります。
関連)https://square.umin.ac.jp/kasuitai/doctor/guidance/cushing.pdf
順番が大事です。
おすすめの整理は、①典型徴候の有無、②ACTH依存性か非依存性か、③抑制試験のカットオフ、④局在診断、の4段階です。紙のメモでも電子カルテの定型文でもよいので、この4項目を先に並べるだけで、カンファレンス時の認識ずれをかなり減らせます。
関連)https://www.matsunami-hsp.or.jp/wp-content/uploads/2015/10/criterion.pdf
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