ブロムワレリル尿素は、大脳皮質の機能を抑制するとともに、上行性脳幹網様体賦活系を抑制して催眠・鎮静作用を示すモノウレイド系睡眠薬です。本剤は有機臭素化合物であり、体内でBr-を遊離し、神経細胞の興奮性を抑制することにより、鎮静、催眠作用を現します。
効能・効果
用法・用量
不眠症に対しては、ブロモバレリル尿素として通常成人1日1回0.5〜0.8gを就寝前または就寝時に経口投与します。不安緊張状態の鎮静には、1日0.6〜1.0gを3回に分割して経口投与します。年齢、症状により適宜増減が必要ですが、極量は1回2g、1日3gとされています。
本剤の作用発現は迅速で、0.5gの内服で20〜30分後に催眠作用を現し、3〜5時間で完全に消失するという特徴があります。ただし、痛みや咳などがある場合には十分な効果が得られない場合があります。
ブロムワレリル尿素の使用において、医療従事者が最も注意すべき点は禁忌事項の把握です。
絶対的禁忌
使用を避けるべき患者群
重要な基本的注意
本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意することが必要です。少量でも眠気を催しやすく、重大な事故を招くおそれがあるためです。
また、就寝の直前に服用させ、服用して就寝した後、睡眠途中において一時的に起床して仕事等をする可能性があるときは服用させないことが重要です。
ブロムワレリル尿素は重篤な副作用を引き起こす可能性があり、医療従事者による適切な監視が不可欠です。
一般的な副作用
重篤な中毒症状
暴露後、直ちに臭化物イオンに代謝され中枢神経に影響を及ぼします。初期症状として悪心、嘔吐、傾眠、せん妄、錯乱、興奮が生じ、精神疾患と誤診されることがあります。
重篤になると以下の症状が現れます。
診断のヒント
ブロムワレリル尿素は依存性のある成分であり、反復して摂取すると依存を生じるおそれがあります。これは医療従事者が最も警戒すべき副作用の一つです。
依存性の特徴
長期使用時の問題点
ブロムワレリル尿素の大量摂取による急性中毒は、我が国における代表的な薬物中毒の一つとなっています。長期連用により以下の問題が生じる可能性があります。
適切な使用期間
1週間位服用して症状の改善がみられない場合には漫然と服用を継続せず、医療機関を受診することが望ましいとされています。
ブロムワレリル尿素の安全な使用のためには、一般的な副作用監視に加えて、特殊な監視項目と対応策の理解が重要です。
血液学的監視
神経学的監視
頭部MRIでの異常信号について、以下の特徴的な部位での変化を注意深く観察する必要があります。
これらの変化は視床血流の増加と大脳皮質血流の抑制を伴い、血液脳関門破綻による浸透圧の変化が関与していると考えられています。
中毒時の対応策
ブロムワレリル尿素中毒が疑われる場合の治療法。
相互作用の監視
ブロムワレリル尿素は催眠鎮静薬以外の一般用医薬品、医療用医薬品にも配合されていることが多く、これらを含有する医薬品や他の催眠鎮静薬を併用すると、効き目や副作用が増強されるおそれがあります。
患者教育と指導
厚生労働省の医薬品安全対策に関する情報提供
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0531-6b-r_0004.pdf
岐阜大学医学部の市販頭痛薬による脳症に関する専門的解説
https://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/column/medical/20220921.html
ブロムワレリル尿素の適切な使用には、これらの監視項目と対応策の理解が不可欠です。医療従事者は患者の安全を最優先に考え、慎重な観察と適切な指導を行う必要があります。特に依存性のリスクと重篤な中毒症状の可能性を常に念頭に置き、必要に応じて専門医への相談や医療機関間の連携を図ることが重要です。